巻頭言

【巻頭言】人の方がすごい

お正月にNHK教育テレビの「大科学実験」を見ていて、面白かったのでご紹介します。



メリーゴーランドは電力で動いていますが、どれくらいの電力(何ワット)が必要だと思いますか?

番組で使用したのは3キロワットで動く、比較的小さなメリーゴーランドでした。そのメリーゴーランドを「人力で発電して動かせるか」という実験。

用意された自転車型発電機を一人が全力でこいでみました。

結果は・・・びくともしませんでした。


次に、自転車型人力発電機30台をおとな30人が全力でこぎました。

結果は・・・電飾が点灯しましたが、メリーゴーランドは動きませんでした。
 

次に、自転車のプロ選手30人が全力でこぎました。

なんとメリーゴーランドが動き出したのです!さすがプロ!

しかし・・・数分で疲れてきて、メリーゴーランドが遅くなり止まってしまいました。10分と続きませんでした。


30人で3キロワット、つまり1人で100ワットの発電がやっとなのです。

1キロワットのエアコン、1キロワットの掃除機、1キロワットのヘアドライヤーは、10人が全力で発電しなければ使えないのです。

エレベータやエスカレータは約10キロワットですから、100人が全力で発電しないと動かないのです。それでも数分しか動きませんが。

電気製品は便利ですが、100ワットなら1人、1キロワットなら10人、10キロワットなら100人が全力で発電する必要があるのです。


★発電時の二酸化炭素

人間の呼気は1時間に二酸化炭素を34グラム出します。

実際の電力は、日本では1キロワット当たり420グラムのCO2が出ます。100ワットにつき42グラムですから、この点からも人間は実際100ワットの発電とほぼ同等です。

つまり100ワットの電力は1人分の二酸化炭素を出し、1キロワットの電力は10人分の二酸化炭素を出し、10キロワットの電力は100人分の二酸化炭素を出しているのです。
 

★電力は、人力よりはるかに効率が悪い

メリーゴーランド(3キロワット)を電力(人力発電)で動かすには30人必要ですが、人力そのもので動かすには3人で回せるでしょう。電力ではなく人力で動かすなら10分の1の人数でいいのです。

エレベータ(10キロワット)を電力(人力発電)で動かすには100人必要ですが、人間が人間を担ぐなら、1人で1人を担ぐことができます。仮に10人を担ぐなら10人で担げますから、電力ではなく人力ならやはり10分の1でいいのです。つまり、電力は人間よりもはるかに効率が悪いのです。
 

★ピラミッドを作るには

ピラミッドは、重さ4トンの石を100万個以上切り出し、運び、積み上げています。もしそれを現代の技術でやろうとすると、ダンプカー、ブルドーザー、クレーンがどれだけいるでしょう。おそらく延べ何万台。

どれだけのガソリンがいるでしょう。おそらく何百万トン。

どれだけのCO2を出すでしょう。おそらく何百万トン。

しかし、古代のエジプトでは電気も自動車も使わず、すべて人力です。

出したCO2は呼吸だけですから現代技術の100分の1でしょう。

そのCO2は、人々が生きていることで出しているのですから、わざわざピラミッド作りのために出した訳ではないのです。
 

★ローテクは素晴らしい

ピラミッドなど古代の建造物はすべてローテクで作られたのです。

ローテクとはハイテクの反対。

「てこ」「ころ」「滑車」「つるべ」の4つでした。

「てこ」は人力を10倍にも100倍にも拡大できる魔法のような技術です。

「ころ」は摩擦や抵抗を限りなく小さくする魔法のような技術です。

「滑車」も「つるべ」も力の方向を変える魔法のような技術です。

昔の人は、このように自然の仕組みを使って巨大な建造物を作ったのです。

石油や石炭の力を借りず、CO2を出さずに、人間の力を10倍にも100倍にも拡大する方法を知っていたのです。

5000年前の人々のことを考える時、私たちは一体なにをやっているのでしょう。私たちが日常「便利快適」と思っていること、電気や自動車などは、そのために10倍も100倍もロスをしているのです。それを進歩と呼べるでしょうか。
 

以上、現代技術の真相が見えてきたのではないでしょうか。
 

私は毎日トレーニングをしますが、トレーニングマシンにはカロリー消費や仕事量(ワット)が表示されます。私の1回のトレーニングはカロリー消費1000Kcalです。100ワット時=86Kcalですから、約1.2キロワットの発電に相当する運動をしていることになります。トレーニング中、「これを実際に発電に使えないものかなあ」と思いながら走っています。(^_^;)