スペシャル対談

2011年3月号 テラ・ルネッサンス 創設者 鬼丸昌也さん、理事長 小川真吾さん

「地雷・小型武器・子ども兵」の分野で、独自の国際支援活動を行っている「NPO法人テラ・ルネッサンス」。特に、子ども兵の問題を日本に初めて認知させた功績は大きく、若者が立ち上げて成功を収めているNPOとして、注目を浴びています。そんなテラルネの創設者である鬼丸さん(31)と、理事長に就任した小川さん(35)は、「僕らは高木さんの影響がとても大きい」と口を揃えます。さて3人のお話は…?

 

■『地球村』のMMが僕らの出発点

高木:今日はようこそ。まずは私たちの出会いから話しましょうか。

鬼丸:僕が最初に高木さんのことを知ったのは15歳のときです。船井幸雄さんの本を読んで、そこに高木さんのことが書いてあったんです。初めて講演を聴いたのは、高校2年のとき。大分県で友人と一緒に聴きに行って、前から2列目の真ん中で聴いたんです。

高木:前で聴くと、エネルギーが伝わるから・・・。

鬼丸:そうなんです。真正面でストレートにお話を聴いてしまって、ガガーンとショックを覚えました。その後、京都の立命館大学に進学することになって、大学時代は『地球村』事務局でMM(メンバーズ・ミーティング)に参加させていただいたり、講演会のお手伝いをしたりしました。

小川:僕は22歳の大学生のとき、事務局におじゃましてMMに参加するようになりました。そこで仕事のお手伝いをしたり、講演会に通ったりするようになって、そのときに聴いた「チプコのおじいさん」のメッセージに衝撃を受けて、インドに会いに行きました。

高木:インドへは一人で?

小川:途中までは友人と一緒でしたが、チプコへは一人で行きました。命を投げ打ってでも森を守るという、それが僕にはあまりにも衝撃的で…。授業や教科書の学びとは全く違う衝撃でした。

高木:私は、チプコのバフグナさんとは、92年のリオのサミットで出会って、94年「神戸国際会議」のゲストに招きました。そのとき「自分の命なんて森に比べたら安いもんさ」と話されて、私も衝撃を受けたよ。君が『地球村』のスタッフだったのは何年だっけ。

小川:青年海外協力隊を経て、カナダに1年行った後で、2001年の9・11テロのちょっと前に『地球村』事務局に就職し、約4年間、主としてアフガン派遣スタッフとしてお世話になりました。

■実績を添えて伝えていこう

高木:鬼丸さんがテラルネを作ったのはいつ頃?

鬼丸:2001年10月、大学4年の在学中です。大学3年のときに、神戸元気村という震災ボランティアに関わって、2001年2月初めてカンボジアにスタッフとして行かせてもらいました。そこで地雷のことを知り、衝撃を受けて、世界のさまざまな問題やその原因を伝えていきたいと思いました。

3月に帰国して、旧地域『地球村』のMMで初めて講演をさせていただきました。その後、事務局のMMで2回目の講演をさせていただいて、そこにたまたま宮崎の旧地域『地球村』の方がいらしていて、九州で10回くらい連続講演をさせていただきました。

そういう体験を積ませていただいて、伝えていくことに自信が持てたんです。そこで、テラルネを立ち上げることになりました。

高木:人には向き不向きがあるけれど、あなたには講演で伝えていくことが合っていたんだね。

鬼丸:僕らは、それがメリットでもデメリットでもあるのですが、まだ若いんです。若さで肯定してくださる人もいれば、否定されることもある。そんなときに何が必要かといえば、それは実績だと思うんです。物事を伝えるときに、支援している実績や現地での体験が強みになります。

そして、僕らが伝えることで支援者が増え、その人たちは支援をすることによって問題に関心を持つようになります。問題には本質的な原因があって、その仕組みの中で僕らも生きているんだということがわかってもらえれば、社会はきっと変わる。

そのためにやっているんだという理念があるから、やり続けることができたのだと思います。そう考えられるのも、高木さんのお話をたくさん聴いてきた、その体験があるからだと思います。

高木:ありがとう。うれしいよ。私も、私の話を聴いた人たちが、そのことに気付き、変化と行動を始めてほしいと思っているんだ。

100万人が100万のプロジェクトを始めてほしい。大地に根を下ろして動き出してほしい。そうしないともう間に合わない。100万の『地球村』ができることで地球は救える。そのための壮大なプロジェクトが、『地球村』の活動だと思っているんだ。

■一人ひとりに未来をつくる力がある

高木:テラの10年間を振り返ってどうですか。

鬼丸:テラは、2001年にカンボジアの地雷の問題から始まって、地雷除去や被害者の支援を続ける中で、新しい問題として子ども兵に出会いました。カンボジアの地雷被害者の中に、ポルポト時代の元子ども兵がたくさんいたんです。

高木:ポルポト時代は、15〜17歳の少年たちが主力だったからね。

鬼丸:そうなんです。しかもその子ども兵を、秘密保持のためにたくさん殺しているんです。この問題に取り組んでいる団体が日本にはありませんでしたから、知ったからには僕らがやろうと思って調べていくうちに、アフリカのウガンダには子ども兵がさらにたくさんいることがわかりました。そのときに小川くんを『地球村』から派遣していただいて、一緒にウガンダの調査に行きました。

そこから5年間、子ども兵の問題に精いっぱい取り組んできました。10年間を振り返って一番の成果といえるのは、この子ども兵の問題と、その問題から見えてくる資源紛争の問題を、日本にある程度お伝えすることができたという点だと思います。

高木:本当だね。小川さんも、アフガンからウガンダへと大変だったね。

小川:僕も『地球村』で、アフガン支援の現状を講演させていただく機会の中で「支援することが本当の解決ではなく、そこを入り口として根本的な原因に気付いて、一人ひとりが関心を持ってアクションを起こしていくことが大事です」と伝えてきました。

でも人に伝えるときに一番大切なのはその人の生き方だと思います。僕は支援の現場にいて、途上国の人たちと向き合いながら日々生活をして、その積み重ねの中で積んだ経験が、5年後、10年後に、自分の生き方となって伝わるようになる、そう考えたんです。そこで、ウガンダに行くことを決めました。

高木:なるほど。では3月21日の『地球村』20周年記念講演会での小川さんのお話を、私も楽しみに聴かせてもらいます。それにしても、『地球村』とテラルネは、親子や親戚のような関係だね。これからも一緒に親戚をたくさん増やしていこうね。

鬼丸:こちらこそよろしくお願いします。そして、ぜひテラルネのホームページを見てほしいんです。2013年3月末までに達成すべき「3つの公約、30の行動目標」を設定しています。この僕らのマニフェストを、僕らだけじゃなくて、多くの方々と一緒に達成したいと思っているんです。どうかご協力ください。

高木:わかりました。今日は本当にありがとう。

■NPO法人 テラ・ルネッサンス
 http://www.terra-r.jp/