巻頭言

【巻頭言】巨大地震と原発事故の経緯

2011年3月11日午後2時46分に太平洋三陸沖を震源としてマグニチュード9.0の地震が発生し、大津波、大火災、原発事故、多数の行方不明者など刻々と深刻な事態が生じ、東北地方を中心に日本に甚大な被害をもたらした。


●地震の規模
地震の規模(M9.0)は、関東大震災(M7.9)や阪神・淡路大震災(M7.3)をはるかに上回る国内観測史上最大。世界的にも、過去50年ではスマトラ島沖地震(M9.1)に次いで2番目の巨大地震だった。



●地震による被害
地震による家屋倒壊や火事による被害もあったが、大津波による被害の方がはるかに大きかった。三陸海岸一帯に10メートル前後の大津波が襲い、気仙沼、石巻、南三陸町、大槻町、高田町など多くの街が壊滅。
被害の全容はまだわからないが、死者行方不明は3万人近いと思われる。



●原発事故の経過
福島第一原発(6基中、4~6号機は定期点検のため休止中)
・運転中だった1~3号機は、地震と共に緊急停止
・緊急電源(ディーゼル発電機)が動作せず、冷却装置が停止
・1号機の炉心溶融、水素爆発(3月12日)
・半径10キロ圏の屋内退避
・3号機の炉心溶融、水素爆発(3月14日)
・半径10キロ圏の避難、20キロ圏の屋内退避
・2号機の炉心溶融、水素爆発(3月15日)
・半径20キロ圏の避難、30キロ圏の屋内退避
・1~6号機の使用済核燃料貯蔵プールの冷却ができていないことが判明
・4号機の貯蔵プールの核燃料が発熱、炉心溶融、水素爆発(3月16日)
・5号機と6号機とも貯蔵プールの水位が低下中、爆発の危険
・半径30キロ圏の避難
・自衛隊、警察によるヘリコプターによる水投下、放水車による放水
・5~6号機の使用済燃料の冷却機能が回復



●原発事故の被害状況
1~3号機は、炉心溶融を避けるために圧力容器のガス抜き(ベント)を行った時点で放射性物質の飛散が始まった。その後、水素爆発で建屋が破壊され、格納容器がむき出しの状態になり放射性物質の飛散が続いている。2号機は、より危険な格納容器損傷の可能性がある。
1~6号機において、冷却用プールに貯蔵されていた使用済燃料が、冷却水の水位低下、蒸発により発熱、炉心溶融、高濃度の放射性物質が飛散する可能性が高かった。その後、5~6号機の使用済燃料の冷却はできるようになったが、それ以外は十分にできていない。3月22日の時点では、今後何が起こるかわからない状況である。
チェルノブイリ事故のような大規模な爆発による大量(地球規模)の放射性物質の飛散はないが、すでにアメリカのスリーマイル事故以上の事故であることは間違いない。


●事故の原因、問題点

①    非常用電源がすべて故障したこと、電源の手配ができなかったこと
②    その他、非常用冷却装置などすべて機能しなかったこと
③    ガス抜き(ベント)によって大量の放射性物質が放出されたこと
④    廃棄燃料用プールの管理(水量、水温の監視)ができていなかったこと
⑤    海水の注入、放水による冷却など、すべてが後手、手遅れになったこと
⑥    電源復旧が遅れたこと
 

●事故の規模
原発事故は、国際原子力機関(IAEA)が決めた8段階のレベルで深刻さが示される。炉心の暴走、炉心溶融、大爆発を起こし史上最悪の事故になったチェルノブイリ事故はレベル7、スリーマイル島の事故はレベル5。日本政府は当初、今回の事故をレベル4と発表したが、その後、レベル5に引き上げた。フランスはレベル5~6、アメリカは「レベル6に近く、レベル7に到達する恐れがある」と発表した。今後どうなるか予断を許さない状況である。
 

●危険範囲
今回の屋内退避、避難は10キロ圏、20キロ圏と発表されましたが、放射性廃棄物が風によって流される範囲は100~500キロです。狭い日本に50基以上の原発があるということは、日本には安全圏はないのです。(出典:瀬尾健『原発事故 その時あなたは!』) 
 

 

今回の事故で明らかになったのは、  

                  
・原発には安全の保証はないということ
・原発事故はあまりに危険であること     
・これほどの危険な原発に依存したくないということ



日本の発電量の3割が原発ですが、その分を節電すれば脱原発が可能なのです。
政府が本気で脱原発を決めれば、脱原発は十分可能です。
それには、私たち国民が本気で「原発のない社会」を願い、意志表示することです。