【巻頭言】原発の真相
多くの方から、「原発のこと、放射線について不安。政府、東電、保安院の発表の内容がばらばら。事態が良くならない、先が見えない」「テレビに出演する学者の意見も信用できない」との意見が多い。
私は信頼できると思うのは、小出裕章さん(京都大学原子力研究所)です。
パソコンを持ちの方は、検索すれば、この方の見解を知ることができます。
●現状
★炉心は危険な状態
運転中の1~3号機は急停止したが、停電により冷却が停止、水位が下がり空焚き状態になり、圧力容器の温度と圧力が上がった。最悪の事態(圧力容器の爆発)を避けるためにベント(ガス抜き)を行なったが、水素爆発で建屋が破壊、大量の放射性物質が飛散した。建屋には本来、放射性物質は無かったので、この時点で格納容器が損傷していたことになる。つまり危険な状態が続いている。
★使用済燃料も危険な状態
1~6号機の建屋内には使用済燃料の保管冷却のプールがあるが、停電で冷却が停止、1週間放置した間に水が蒸発、使用済燃料が露出、空焚き状態になり、4号機が水素爆発を起こした。現在1~6号機の使用済燃料について、冷却を再開しているが、1~4号機については十分ではない。
★高濃度汚染水の流出
圧力容器内に大量の水を注入して炉心を冷却しているが、その結果、高濃度汚染水が大量に溢れ、海に流出している。汚染水を貯蔵するタンク(復水器)の汚染水を大量に海に投棄し、高濃度汚染水を復水器に回収する方針。
高濃度汚染水は基準の750万倍の汚染で現在6万6千トンだが、冷却のための放水で確実に増え続けている。
★圧力容器も格納容器も損傷
高濃度放射性物質は増え続け、高濃度汚染水も増え続けているということは、圧力容器も格納容器も損傷していることは明らか。また圧力容器の水素爆発を防ぐために窒素を注入しているが、圧力が上がらないことで、「機密性が保たれていない」と発表があった。全く先が見えない。
●「レベル7」
今回の原発事故について、政府は当初「レベル4」と発表。
外国からの「日本は事故を軽く見せようとしている」との批判を受け、
「レベル5」に変更したが、4月12日、最悪の「レベル7」に修正した。
原子力安全委員会
「63京ベクレルの放射性物質が放出された(京=兆の1万倍)。
国際基準(INES)では10京ベクレル以上はレベル7(最悪)に当たる。チェルノブイリ事故と同じ分類だが、チェルノブイリ事故では炉心が爆発して520京ベクレルの放射性物質が放出され、被爆による死亡者が出たが、今回の事故は、放出量は十分の一、死亡者が出ていない点が違う」
東電
「事故の様相が違うとはいえ、放射性物質の放出量はチェルノブイリに
匹敵、または超えるかもしれない。ご迷惑をおかけして大変申し訳ない。
引き続き収束に向け全力をあげて取り組む」と陳謝した。
データによると、3月15日の2号炉の爆発以来、大量の放射能が放出されていた。その事実を1ヶ月隠したまま、政府は「直ちに危険とは言えない」「自主的な避難を勧告する」と繰り返したのはなぜだったのだろう。
政府、保安院はなぜ、こういう姿勢を続けるのだろう。
彼らが守ろうとしたのは国民だったのか、原発政策だったのか。
★今後の最善のシナリオ
①冷却が順調に進み、冷温停止、爆発の危険がなくなる
②高濃度汚染水(10万トン)を回収して安全に保管
③圧力容器、格納容器を修復、放射線の放出が止まる
④海洋汚染、大気汚染、土壌汚染は限定的であることが実証される
⑤順調に復興が始まる(復興に3年から5年)
★今後の最悪のシナリオ
①冷却がうまくいかず、放射性物質の放出が止まらない
②大気汚染、海洋汚染、土壌汚染、食品汚染が進む
③避難区域が拡大
④国際的な信頼が低下、外国人が帰国、外国資本が流出
⑤日本経済、市民生活にも重大な影響(経済が右下がり)