スペシャル対談

2011年6月号 菊水酒造㈱社長 高澤大介さん

在新潟県新発田市にある日本酒メーカー「菊水」の五代目社長高澤さんは、青年会議所時代に高木さんの講演会を主催したことがきっかけで、『地球村』の企業会員になりました。

「より良い酒を追求し豊かなくらしを創造する」を経営理念に、「菊水日本酒文化研究所」の創設、Reボトル(空き瓶の再利用)の導入など、さまざまな取り組みを始めています。

 

自分と世界は一蓮托生

 

高木: お久しぶりです。初めておじゃましましたが、ここはすばらしく美しい環境ですね。

高澤: ありがとうございます。おいでいただき光栄です。

高木: 出会いはいつごろになりますか。

高澤: 15年ほど前に、船井幸雄さんと先生のジョイント講演会を聴きに行ったのが出会いです。97年、新発田青年会議所の理事長をやることになったとき「ぜひ、この先生の講演会を開きたい!」と思って、大阪にある事務局まで訪ねて行きました。その時、幸運にも先生に直接お会いできて、「必ず満席にしてくださいね」と念を押されたことや、幕が上がったときの満席の会場…今でも忘れられません。

高木: そこから、何か変化はありましたか。

高澤: それまでも、世の中の役に立ちたい想いは漠然と持っていましたが、講演を伺って、自分の生き方は世界とつながっていて、何かあったときは一蓮托生、世界全体に影響が出るんだという示唆をいただきました。そこから、この地球に対して何ができるんだろうか、日本の環境に対して何ができるんだろうかということを深く考えるようになりました。

高木: それはうれしいですね。では「非対立」についてはどうですか。怒りや対立は減りましたか。

高澤: 腹が立つときは、自分に原因があることに気付きました。自分が原因なのにそれを認めようとせず、人に責任を転嫁して「おまえのせいだ」と考えることが怒りなんだと思うんです。

高木: その気付きは大きいですね。今度ぜひ経営塾にいらっしゃい。腹を立てるのも自分、腹を立てずにいられるのも自分なんだということが、はっきりつかめますよ。

高澤: それはぜひ伺いたいと思います。

捨てられる瓶をReボトルに

高木: では、菊水さんが始めた話題の「Reボトル」について教えてください。

高澤: 一升瓶はご存じのように元々リユースボトルで、回収して再利用されているのですが、小瓶はほとんどが使い捨てされています。回収して溶かして再利用するにしても、新たなエネルギーを使うわけで、これはもったいないことだと思います。97年に先生の講演を伺って以降、会社の事業活動を通じて何かできないかと考えていたときに、300mlの小瓶が使い捨てられているのを見て、もう一回使える仕組みを作ろうとして始めたのが「Reボトル」です。

さらにもっとできることはないかとデータを調べてみたら、テーブルワインがよく売れていて、推計ですが日本で年間8億本が輸入されボトルがゴミになっているというのです。だったらそのワインボトルもそのまま再利用しようじゃないかと始めたのが「KIKUSUI Style Bottle(スタイルボトル)」です。

高木: いろいろな色、いろいろな形のワインボトルに、そのまま詰めてしまうという発想はおもしろいですね。反対はありませんでしたか。

高澤: まず、社内から反対されました。瓶の形状や大きさが違うし、コルクもあればスクリューキャップもあるし、規格品ではないのですべて手作業になってしまうのです。でも、まずは手間暇かけてやってみようよということで始めました。昨年10月に発売を始めて、おかげさまで好評をいただいております。お客さまに喜んでいただけたことが励みになって、今ではみんな楽しみながら作業してくれています。実はですね、ワインボトルは容量が微妙に違っていて720mlもあれば750mlもあるんです。詰めるお酒の量は一定にしたらいいんじゃないかとか、値段を変えたらいいんじゃないかとかいろいろ提案が出ましたが、面倒なので瓶に合わせただけ詰めて同価格で売ることにしました。当然、750ml瓶から売れていきますが、「グラス一杯の幸せ」(おまけ)ということで、それはそれで楽しいかなと思っています。

高木: その方がますますおもしろいし、ヒットすると思いますよ。

 

日本酒文化の研究と継承を

高木: 菊水日本酒文化研究所という棟にお招きいただきましたが、こちらは何をするところですか。

高澤: 私どもの経営理念は「より良い酒を追求し豊かなくらしを創造する」でして、我々は酒を造ることを目的にしているわけではなく、酒を造ってお客様に楽しんでもらう、和んでもらう、喜んでもらう、幸せを感じてもらうことを目的にしようと考えています。

高木: なるほど。それはいいなあ。

高澤: それにお酒っていうのは本来、飲むと愉快になったり、楽しくなったり、ほっとしたりする飲み物で、我々はそういったものを造ることに携わっているわけですから、お酒に付随してきた文化、習慣、遊び、伝統、嗜みなども発信しながら、おいしいお酒を飲んでもらうことを提案していきたいのです。それがこの研究所を作った目的です。日本酒を切り口にして、文化的な資料を集めています。まだ一般には公開していないのですが、いずれはお客様に楽しんでいただけるご提案ができるよう、研究を深めていきます。

高木: お酒の文化は奥が深いのでしょうね。

高澤: 環境面でいえば、日本酒はとてもエコでした。一升瓶もそうですし、その前は「通い徳利」でした。個々のおうちで徳利を持っていたんです。

高木: 昔、「たぬきが徳利持って酒買いに~」っていうわらべ歌があったんですよ。

高澤: それです。マイ徳利を持って酒屋さんに行き、樽から直接、酒を分けてもらっていたんです。だから捨てるものなんか一切なかったんです。

高木: ぜひ復興させたい文化ですね。では最後に、社長として今後の夢を語っていただけますか。

高澤: 第一にはお客様に喜んでもらうこと。「お前のところの酒がないと、世の中つまらんぞ」といってもらえるようになりたいと思います。次には、卸店さん、小売店さん、飲食店さんなどのパートナーさんに必要とされ、喜んでもらえるようになること。さらに、出た利益は、自社のためだけではなく社会貢献のために使っていくこと。そして、これは先生のオーケストラ指揮法で学んだことですが、最高の演奏は演奏者の幸せの中から生まれてくると思うので、造っている我々社員も幸せになっていくこと。この4つの目標で、バランスの取れた会社にしていきたいです。

高木: なるほど。よくわかりました。この素晴らしい場所を生かした様々なイベントが可能ですね。私もアイデアがありますし、ぜひ講演したいです。

ぜひ、チャレンジしてみてくださいね。

高澤: はい、わかりました。今日はこちらにおいでいただき、本当にありがとうございました。

 

■菊水酒造株式会社

新潟県新発田市大字島潟750番地

Tel 0254‐24-5111

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