【巻頭言】多くの隠蔽と情報操作
●今回の事故の事実
★「地震によって圧力容器が損傷していた」
これまで、今回の事故の主原因は「津波によって非常用電源が失われたこと」とされてきたが、大きな間違いです。
事故の原因は、「冷却水が流出⇒水位が低下⇒燃料棒が露出したこと」であり、地震によって冷却水系が損傷したことが原因なのだ。
現在、「津波対策」や「非常用電源の強化」が議論されているが、問題は、「原発が地震に耐えられない」ことです。
いまだに問題の本質を隠していることが問題なのです。
★「地震後数時間でメルトダウン(炉心溶融)した」
トライアングル(政府、東電、保安院)は、事故から2カ月も「メルトダウンに至っていない」と事実を隠蔽(ぺい)してきたが、実際には、地震から数時間で冷却水の水位が下がり、炉心が露出、燃料棒の被覆が溶け、燃料がメルトダウンした。その時点で、圧力容器は損傷していたから、放射性物質の飛散が始まった。水素爆発前に、原発敷地内でセシウムが検出されていたことが判明。これも2カ月も隠蔽されていた。
★水素爆発の前に
水素が発生したから水素爆発が起こったのだが、水素の発生は、燃料棒の被覆(ジルコニウム)の溶融、燃料のメルトダウンによって生じる。
つまり水素爆発の前に炉心溶融が起こって、大量の放射性物質が建屋の中に充満し、それが水素爆発によって大量に放出された。このことも2カ月間隠蔽されていた。
★被害は大幅に抑えられたはず
以上は、放射線測装置「SPEEDI」によって確認されていたのに、その事実を発表せず、「水素爆発で微量の放射線が確認された」という情報操作(うそ)を行なった。その時点で、事実を公表すれば、被爆被害は大幅に減っただろう。半径10キロ、20キロ、30キロという根拠のない設定ではなく、風向きから、事実実態に近い情報を流すべきだった。
★なぜ、これほどの隠蔽を続けたのか
原発を推進してきた自民党ならまだしも、自民党を批判して政権交代した民主党政権が、なぜここまで愚かな判断をしたのか。
私にも理解不能。それが国民の信頼を失う最大の原因になったのだ。
●すべてウソだった
★「原発は安全」ではなかった
「原発は何重にも安全設計、安全対策をしているから絶対安全」と宣伝してきたが、今回の震災に耐えられなかった。「想定外」の説明も、うそだった。アメリカ原子力委員会が30年前、IAEAが20年前に、この問題を指摘した時、東電はそれを無視した。
★「原発の電力価格は安い」はウソだった
原発が安いと言われるコストには多くのごまかしがあった。廃炉費(一基1兆円、54基で54兆円)も使用済燃料処理費(金額不明、処理方法も見つかっていない)も含まれていないし、原発交付金、天下り機関の予算など多くが税金で支払われ、賠償金(10兆円以上)も税金で支払われる。これらを原発の電力コストに反映させれば、最も高い価格になるだろう。
★「原発は二酸化炭素を出しません」もウソだった
原発は発電時には二酸化炭素を出さないが、建設にも、燃料の採掘にも、運搬にも、製造(濃縮や加工)にも、廃炉にも膨大な二酸化炭素を出す。総合的な評価では、火力発電に次ぐ大量の二酸化炭素を排出する。
★「原発が停止すると電力が足りない」もウソだった
『地球村通信』の6月号でも説明しましたが、「原発は全電力の30%を発電しています」というのはトリック。現状の発電は火力と水力の運転を節約しているだけ。さらに市民や企業の自然エネルギーによる発電(余剰電力)の買取をしていないだけ。それらを効率よく行えば、すべての原発を停止しても電力が足りることは政府の「エネルギー経済統計要覧」に記載されている。
以上、原発について、一般の人が「原発は危険だけど、ないと困る」と思っている「原発神話」はすべてウソだった。
すでに「脱原発」に舵を切った国は、「日本では信じられない政策が進行し、国民には事実が伝えられていない」とあきれていると思う。
●なぜ、そうなったのか
原発には、多くの利益や利権が発生します。
まず立地調査費、これは地元にはとてもありがたいお金です。
次に建設費、これは地元の業者、地元の経済を潤します。
建設できれば、交付金と運転費(税金)、これは地元にはありがたいです。
それらのお金で、地元に多くの箱物(施設)が作られたり、サービスが提供
されます。ところが、この金額はだんだん減るようになっています。
いったん始まったサービスはやめられないので、資金が不足する。
すると、2号機、3号機と建設することで、資金を得ようとします。
つまり、資金をもらい続けるために麻薬のように増設してきたのです。
さらに、その利権を求める多くの企業群、天下り機関がカビのように増殖してしまったのです。教科書にまで「原発は安全、CO2を出さない、原発の電力価格は安い」などと書かれている始末。最悪の状況なのです。
では、なぜ日本だけ、そういうことがまかり通っているのか。
それは、市民が無関心だから。
では、なぜ日本だけ、そこまで市民が無関心なのか。
それは、日本の政治、経済、教育がアメリカの方ばかりを向き、国民に事実実態を隠してきたから。さらに、意思表示させない国民教育をしてきたから。
私は、このことを知らせるために講演を続けていますが、お客さんはあまり感情表現、意志表示をしません。そして変化しません。
そのことをいつも残念に思っています。
●なにをすればいいか
「脱原発」はかんたんです。
以上の「原発の不都合な真実」を多くの人が知れば、必ず「脱原発」を求めるはずです。どうぞ、事実を多くの人に伝えてください。
必要なら、私の講演会を開催してください。
多くの人々が事実を知ることで、ドイツやデンマークやイタリアのように、社会は変えられるのです。私の役割は、事実を知らせること、ビジョンと、それを実現する方法を示すことなのです。
そのためには、次のことをおすすめします。
1.『地球村』のウェブサイトの「脱原発への道」を読んでもらうこと。
2.特に「5分間で分かる!原発がいらない理由」を伝えること。
3.私のDVD上映会をすること。
4.冊子『ありがとう』のプレゼント。
5.あなたが『地球村』のワークショップに参加すること。