地球は今

【地球は今...】日本もできる!自然エネルギー

原発の「安全神話」が崩れました。
先月号では、「原発がなくなっても電力不足にならない」「原発の電力価格は高い」「原発もCO2を排出する」など、これまでの「宣伝」が事実でなく、脱原発が必要だということを述べました。
今月号では、日本の自然エネルギーの可能性についてまとめました。

(事務局 榮藤洋)

●急速に伸びてきた自然エネルギー

世界では、チェルノブイリ事故以降、原子力は頭打ちになり、逆に自然エネルギーが急激に伸びています(右図)。

2010年、自然エネルギー(3億8100万kW)は原子力(3億7500万kW)を上回りました。
また、国連は、「2050年には自然エネルギーが世界のエネルギーの77%を占める」という予測を発表しています(詳しくは「環境フォーカス(p.14)」をご覧ください)。
世界は原子力から自然エネルギーに転換してきたのです。

●日本の自然エネルギーの現状

一方、日本はこの30年で、原子力は3倍になりましたが、自然エネルギーはわずか1%です。
日本は世界に逆行して、原子力を推進してきたのです。

●日本の自然エネルギーの可能性

 

環境省は、「自然エネルギーを最大限に利用すると理論上の発電能力は約21億kW(原発580基分)になる」と発表(4月21日)。
これは日本の総消費電力の4倍に当たります。
さらに「採算可能なものだけでも原発46基分が可能」とのことです。
日本にはこれだけ多くの自然エネルギーの可能性があるのです。

・風力発電

自然エネルギーの最大量21億kW のうち、19億kWが風力発電です。
陸上だけでなく、海上に風車を設置する洋上風力もあり、一番大きな可能性があります。

特に、周りを海に囲まれた日本は洋上風力に向いていると言えます。

・小水力発電(小規模水力発電)

小水力が盛んなドイツは、年間降水量は800ミリですが、1000kW未満の小水力は6000カ所以上あります。
一方、日本の年間降水量は1700ミリ以上で、河川の勾配も急で水力に最適ですが、日本の小水力は始まったばかり。
適地は2万カ所以上ありますが、今はまだ500か所。今後、大きな可能性があります。

・地熱発電

火山国の日本は、地熱発電にも大きな可能性がありますが、ほとんど国も企業も本腰を入れなかったため、現在18基です。
導入可能量は2000万kW以上で、世界第3位です。今後、大きな可能性があります。

・波力発電

周りを海に囲まれた日本は、海岸線の長さは世界第6位、広い海域は波力発電にも向いています。
日本には、海にも無尽蔵のエネルギーが眠っています。

●市民主導の自然エネルギー事業が始まっている

現在、徳島県佐那河内村や鹿児島県南大隅町など、57の市区町村では、自然エネルギーだけで電力の100%以上を自給できていて、余った電力は売電して経済的利益を生んでいます(「永続地帯2010年版報告書」)。
また、北海道浜頓別町や長野県飯田市などでは、市民主導の自然エネルギー事業が始まっています。
市民は出資という形で事業に参加することで、事業の運営と自然エネルギーの普及促進に貢献できています。
自然エネルギー事業の推進には、市民の積極的な参加が必要不可欠なのです。

●日本の自然エネルギーはこれから

日本では、3月11日に自然エネルギーの全量買い取り制度が閣議決定されました。
一方、ドイツでは、日本より早く導入した同じ制度と市民の節電によって自然エネルギーの導入が急速に進んでいます。
日本は、この法律ができて初めてスタートラインなのです。

●私たちにできること

日本には多くの自然エネルギーの可能性がありますが、これまで自然エネルギーを推進してきませんでした。
世界は原子力をやめて、自然エネルギーを推進しています。日本もこれから自然エネルギーを大きく導入することが必要です。
そのためには、私たちも関心を持って自然エネルギーの普及に取り組むことが大切です。
ぜひ、私たちもできることから始めましょう。
・節電、省エネを実行する
・日本の現状を知る、周りの人に広く知らせる
・自然エネルギー事業に出資しよう

*参考資料:「地域の力で自然エネルギー!(小林久ほか)」