2011年9月号3 協和交易㈱ 横井義一さん
名古屋市にある協和交易株式会社は、昨年創業50周年を迎えて、「美しい地球と平和な世界を求めて」を21世紀のモットーとして、中国と貿易を行っています。
社長の横井さんは、『地球村』の考え方を参考に経営をすすめ、今年3.11をきっかけに、企業として「脱原発宣言」を発信しました。
ワークショップでオーバーホール
高木 こんにちは、今日はよろしくお願いします。出会いはいつごろでしたでしょうか。
横井 97年の7月から『地球村通信』を読んでおりますので、その数カ月前に初めて講演会に行きました。
最初はワンデイセミナーで、そこから数年間は講演会の追っかけをして、2001年からは、『地球村』のテーマをお借りして「美しい地球と平和な社会を求めて」というメッセージを、年賀状に入れさせていただいております。
高木 最初の講演会はいかがでしたか。
横井 まず、ビックリしました。自分が現実をいかに知らなかったか、事実がここまでひどいことになっていることに、衝撃を受けました。
すぐに会社で、裏紙、再生紙を使うよう指示し、再生紙ボックスを設置して古紙回収に回すよう徹底しました。
高木 その時に個人会員になって、今は企業会員ですが、そのきっかけは経営塾ですか。
横井 通信や本を読んでいて、いつかはワークショップに出たいという思いを持っておりました。ようやく2年前、四条畷で行われた経営塾に参加しました。
高木 ワークショップはいかがでしたか。
横井 自分なりには、高木さんのおっしゃるポイントを押さえているつもりでいたんですけれど、会場でご挨拶をしたとき、「今日はオーバーホール(※)ですね」とズバリといわれてショックでした。
でも2日間終えてみて、「本当にオーバーホールだったな」と思いました。気付きをたくさんいただきました。
(※) 機械などを分解しての点検や掃除、修理。転じて心身のメンテナンスの意味でも使用される。
企業として脱原発宣言
高木 そこからの変化はいかがですか。
横井 それまでも、個人としては『地球村』の考え方や生き方を意識していましたが、それを会社でも浸透させなくちゃいけないと思うようになりました。社内会議でも、『地球村通信』のコピーを渡して、共通の話題にするようになりました。
高木 それはうれしいです。
横井 エアコンをあまり使わずに、扇風機を併用する事を10年以上前から取り組んできました。
この社屋は、5年前に45周年記念で建てたのですが、窓をどうするかで建築家と相当やりあいました。
普通のオフィスは腰まで壁で、その上が窓、という形が多いと思うのですが、窓を広く取り、風通しをよくした上で、断熱材を通常よりも多く入れ、外壁にはすだれを掛ける金具を取り付けておきました。
今では、電力会社の社長さんの方から「よしずやすだれを使って、節電にご協力ください」とお願いされる時代になりました。すだれに下げた風鈴の音色が、実に気持ちいいですよ。
「すだれ」や「よしず」は、我社の長年の輸入商品でもありますが、将来にわたって大切にしていかなければならない商品だと思います。
高木 今年、「脱原発宣言」をされましたね。
横井 はい。3.11の後、社内会議を重ねて決めました。
普通、社内会議といえば、「業績をどうしたら上げることができるか」が一番のテーマだと思いますが、うちは、社会問題や環境問題をテーマにすることが多いのです。
人間としてレベルアップすれば、いい仕事ができるようになるし、その結果として業績もついてくると思うのです。イタリアで国民投票が行われ、圧倒的多数で脱原発が可決されたことも話題にしました。
「みんな、どう思う?」というと、「とてもいいことだ」「原発はいらない」というので、「それじゃ、協和交易も脱原発宣言をする会社だと名乗ったらどうだろう」というと、皆が賛成してくれました。
ちょうどお中元の時期でしたので、高木さんに文案のアドバイスをいただいてご挨拶文を作成し、お中元に添えて脱原発を宣言しました。その節は、ありがとうございました。
高木 どういたしまして。よく宣言されましたね。
弊社 協和交易㈱は、「脱原発企業」を宣言します。
私たちは、今回の大震災や原発事故をきっかけに、
社内で多くの勉強を重ねてまいりました。
そして、下記のことに気付かされました。
1.原発事故は、他の事故とは比較にならない
長期に広範囲に大きな被害をもたらすこと
2.多くの国が脱原発に向かっていること、
日本もそれが可能であること
3.脱原発には、市民や企業がその決意と
意思表示をすることが必要であること
そして先日の会議で、全員一致で「脱原発企業」
宣言をすることにしました。安全で幸せな社会
創りに貢献できる企業として努力してまいります。
平成23年6月吉日
協和交易株式会社 社長 横井義一
横井 長い目で見たら、原発はやめるしかありません。今度の震災でその実態がはっきりしたので、宣言を出してよかったなと思います。
数社から「横井さん、よくここまで出したね」と電話をいただきました。
社員が幸せである会社に
高木 では最後に、これからの目標について教えてもらえますか。
横井 会社のためではなく、よい社会を作るために行動する社員を育てていきたいと思います。社員は家族ですから、幸せになってほしいんです。
高木 この会社は、世間から見たらうらやましい会社だと思いますよ。社長が社員を家族として考え、業績よりも人間として幸せになってほしいと考えています。
本当はそれが当たり前。「オーケストラ指揮法」にあるように、コンクールで勝つことが目的ではなく、団員みんなが幸せになることを目指せば、結果はついてくるもの。
そして、社員が幸せになることが社長の幸せです。そういう社長の思いを社員のみなさんが理解できれば、いつ社長が引退しても会社は大丈夫、誰が継いでも安泰です。
横井 過分なお言葉をいただき恐縮です。私もバトンタッチが必要な年代になっていますので、今すぐにはわからないかもしれないけれど、種を撒いておきたい気持ちです。これからもご指導ください。
高木 こちらこそ。また講演に呼んでください。
■協和交易株式会社
http://www.kyowatrading.jp/