【地球は今...】遺伝子組み換え作物と私たちの生活
遺伝子組み換え作物は開発が始まって以来、栽培面積は年々増加し、私たちの食生活と切り離すことができなくなっています。
なぜ遺伝子組み換え作物は作られたのでしょうか? 遺伝子組み換え作物が引き起こす問題や私たちの生活との関わりについてまとめました。
(事務局 榮藤 洋)
●遺伝子組み換え作物の影響
遺伝子組み換え作物の主な目的は「殺虫性」「農薬耐性」ですが、多くの問題点が指摘されています。
たとえば、対象の害虫以外の昆虫も殺してしまうことや、花粉が飛んで予想しない交雑が進み、除草剤をまいても枯れない雑草が増えるなどの問題が起きています。
世代を経るほど害虫や雑草は耐性を持つようになり、結局は殺虫剤や除草剤の増加を招き、かえって環境や生態系を破壊します。
アメリカ環境医学会は、「遺伝子組み換え作物はアレルギーを引き起こし、人間の免疫機能に影響を与え、健康被害をもたらす可能性がある」と警告しています。
遺伝子組み換え作物は、人間にも悪影響を与えています。
●増え続ける遺伝子組み換え作物
現在、遺伝子組み換え作物の開発が始まって約30年が経ち、1996年からは世界で商業栽培が始まりました。
世界全体の栽培面積は、2010年には1億4800万ha(日本の耕地面積の約30倍)で年々増加しています。
主な栽培国はアメリカ、ブラジル、アルゼンチンなどで、アメリカがほぼ半分を占めています。
日本では商業栽培は行われていませんが、大豆、トウモロコシ、ナタネなど7作物が海外から輸入されて、飼料用や加工用、油を絞るために使われています。
●遺伝子組み換え作物は放射性物質と同じ!?
日本は現在、遺伝子組み換え作物の世界最大の輸入国です。
輸入された作物の種子は、陸揚げされた港や輸送中にこぼれ落ちて自生します。
各地で自生した遺伝子組み換え作物は、一本一本刈り取るしか解決する方法がなく、拡大を止められないほどに広がってきています。
ところで、福島第一原発の事故により、大量の放射性物質が広範囲に渡って拡散しています。
いったん広がった放射性物質は、その土地で数十年に渡って影響を及ぼし、簡単には処理することができません。
一度拡散すると手が付けられないという意味では、遺伝子組み換え作物は放射性物質と同じ恐ろしさがあります。
●遺伝子組み換え作物が無意図に拡散
農水省は、2004年に初めて遺伝子組み換えナタネが自生していることを公表しました。
これを受けてMOP5市民ネット(現 食農市民ネット)は、2005年から遺伝子組み換えナタネの自生調査を行っており、毎年1500人ほどの市民が参加しています。
調査の結果、日本各地で自生する遺伝子組み換えナタネが見つかり、在来ナタネや近縁種と交雑したと見られるものも確認されています。
2005年、遺伝子組み換えナタネは全国で129株確認され、この数は毎年増加し、2009年には330株が見つかっています。
港の倉庫周辺では、ほとんどが遺伝子組み換えナタネで、港から製油工場などを結ぶ道路沿いだけでなく、港や幹線道路から遠く離れた住宅街でも確認され、輸送中にこぼれ落ちたという理由だけでは説明できないほど全国に広がっています。
私たちは、生産性をもっと上げることや、手間をかけずに作物を育てることなど、目先の効率だけを追求したために遺伝子組み換え作物を作り出し、それが身近なナタネにまで無意図に広がってきています。
自分たちの生活を見直し、できることから始めましょう。
●私たちにできること
- 輸入食品の利用を減らしましょう。
輸入食品を減らすことで遺伝子組み換え作物の被害を小さくすることができます。 - 遺伝子組み換え作物の調査に参加しよう。
NGOなどの調査に参加することで、遺伝子組み換え作物に関心を持つ機会になります。 - 遺伝子組み換えに対して意志表示をしよう。
⇒厚労省「国民参加の場」(http://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/sanka/)
*参考資料:
「生物多様性と遺伝子組み換え作物(MOP5市民ネット)」
「遺伝子組み換え食品の安全性について(厚労省)」