巻頭言

【巻頭言】GNPとGNH(1)

ブータンに行った機会に、あらためてGNP(国民総生産)、GNH(国民総幸福)について。一度で書ききれないのでシリーズにします。

「GNPが上がった」と聞くと喜んだり、「GNPが下がった」と聞くとがっかりしたり、していませんか。しかし、本当は・・・

GNPは、ものが売れれば売れるほど上がるのです。

お金は一定ですから、GNPが上がれば、企業のお金が増え、市民のお金が減ります。それは決して嬉しいことではないはずです。

GNPについて、誕生、成長、晩年についてお話します。

★「GNPゼロ」の社会

原始的な社会や自然の中で暮らす人々は、お金を必要としないからGNPゼロです。

お金でものを売ったり買ったりしない社会もGNPゼロです。自分ひとりで自給自足しなくても、村中で、分け合ったり、譲り合ったりして全体として自給自足していればGNPゼロです。

村の外から、何かを手に入れても、村の外に何かを持ち出しても、お金のやり取りがなければGNPゼロです。

こういう社会は、貧富の差が生まれず、信頼と協力で成り立っているのでとても安心で安定しています。

100年ほど前の日本の田舎や、現在のブータンの田舎も、こんな感じです。

★GNPの誕生

GNPゼロの社会に、外からお金で売買される製品が持ち込まれる。

それを手に入れるためには、「お金」が必要だと教えられる。

お金の意味さえわからない人たちは、まずは、何かを売ってお金を手に入れることを教えられる。

そこで、農作物や牛や土地を売ることでお金を手に入れる。

そのお金で、外から製品を買う。

珍しいから、みんながそれを見に来る。そのうち、みんなもそれがほしくなる。

そのためには「お金」を手に入れなければならない。

農作物、家畜、土地を売り始める。売り手が多くなると、値段が下がり、お金が手に入りにくくなる。

そのために、ますますたくさんのものを売らなければならなくなる。

こうしてマネーゲームが始まります。さあ、どうなっていくでしょう。

★GNPの拡大

いろんなものが売られ、いろんなものが入ってくる。

お金が動くことでGNPが上がります。

いままでは必要なものを必要なだけ作って暮らしていたのに、お金を手に入れるために、余分に作る、たくさん作る、要らないものを作る、ということが始まります。

そのために余分に働き、余分に作るようになります。

これまでは分け合ったり、譲り合ったりしていたけれど、人より多くのお金を手に入れるためには、「協力すれば損、出し抜いた方が得」という考え方になってきます。

「お金は心を貧しくする」ということは、ここから始まります。

以前は分け合い、助け合っていたのに、お互いがライバルになり、競争したり、奪い合ったりするようになります。

GNPが増える一方で、貧富の差が開いていきます。

★マネーゲームは際限なし

マネーゲームはお金の奪い合いだから、無くなればゲームセットのはずだが、「借金」を発明することでゲームは際限なく続くようになる。

借金もGNPに加えられるから、お金は増えないのにGNPは増える。

さらに、「利子」を発明することで、お金は増えないのにGNPは増える。

お金はお金を生み、勝ち組はますます有利になる。

お金は、借金などの仕組みで、ダブって何度も貸し出されることで、お金の量よりもGNPが大きくなる。

お金のない人は、どこかからお金を借りないと生きられなくなる。

どこから借りるのか。

実は、お金はどこかで誰かが印刷しているだけなのに、その仕組みをほとんどの人は知らない。

そのことで、勝ち組に都合がいいように、お金は増えたり減ったりしている。

★こんなこと、知ってる?

現在の日本は、お金の発行総額は50兆円。

日本のGNPは500兆円だから、お金の総額よりも10倍も大きい。

これは、どういうことでしょう。

そして、日本の国民のお金(預貯金、年金、保険金も含めて)の総額は1400兆円。(総額を人口で割り算すると、1人当り約1100万円)

これは、どういうことでしょう。

おまけに、その預貯金1400兆円の大部分、1000兆円はすでに国や地方(自治体)が使い込みをして、無くなってしまっているのです。

これは、どういうことでしょう。

(つづく)