地球は今

【地球は今...】TPPは日本を破壊する!

最近、TPPをめぐって「平成の開国だ。乗り遅れるな」や「農業の構造改革をするチャンスだ」という推進論と、「TPPに参加すると日本の農業が衰退する」という反対論があります。
TPPの功罪についてまとめました。(事務局 榮藤洋)


●TPP(Trans Pacific Partnership)とは?

TPPとは環太平洋経済連携協定のことで、元々は2006年5月に発効した地域的な経済的枠組みです。
加盟国間では取引される全品目(工業製品や農作物など)の関税を撤廃し、徹底した自由化を目指す協定です。
参加国は当初、ニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイといった小国ばかりの4カ国でしたが、2010年11月にアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが参加し、現在9カ国で交渉が行われています。
日本も参加を検討中で、2011年11月に行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに結論を出す考えです。

●TPPは誰に有利なのか

TPPへの参加で関税が撤廃されると、輸出品は(輸出する企業にとって)関税分だけ安くなり有利になります。
輸入品も(輸入する企業にとって)関税分だけ安くなり有利になります。つまり、輸出も輸入も、関連する企業にとって有利になります。
それにより、業界を挙げて推進しているのです。

●TPPは誰に不利なのか

日本は農業政策の失敗によって、農作物、国内の牛肉の値段が上がり、輸入品との価格差が大きくなってしまっています。
たとえば、輸入の米は約800%(8倍)、輸入の牛肉は約40%(1.4倍)の関税がかかっていても、国産品と競合できるほど安いのです。
その関税が撤廃されたら、日本の農業はひとたまりもありません。

この根本原因は「減反」です。減反政策は「米価の下落を防ぐため」という理由で、農地を減らし、米価を高く保ったのです。
農地を減らすために税金を使い、米価を高く保つために税金を使い、私たちは高い価格で農作物や牛肉を買ってきたのです。
TPPで日本の農業が崩壊するのは避けなければなりませんが、今のままで良いというわけでもありません。
農業政策を転換して、農業を復興しないといけないのです。

●私たちの暮らしはどう変わる?

TPPは農業だけの問題ではありません。
TPPに参加することで、関税の撤廃だけでなく、医療、金融などあらゆる分野で規制緩和や民営化が進むことになります。
現在のTPPはアメリカが参加し、医療や福祉などにも外国企業が参入できるようになるなど、徹底した自由化を求めるため、私たちの生活は完全に変わってしまいます。

・食の安全

2003年12月、世界的な狂牛病の問題でアメリカ産牛肉が輸入ストップになったときにも、アメリカは輸入再開の圧力をかけてきました。
もし、日本が輸入障壁の完全撤廃を理念とするTPPに参加すると、牛肉だけでなく全品目の農薬や添加物の安全性基準を輸出国の都合に合わせなければならなくなる恐れがあります。

・漁業

TPPに参加すると、漁業補助金が禁止になります。
漁業補助金をめぐっては、乱獲を招いて漁業資源を衰退させるとして、アメリカなどが原則禁止を求めています。
原則禁止となれば、漁港や水産加工施設の整備も禁止になる恐れがあり、大震災の復興の支障になりかねません。

・医療

私たちは国民皆保険制度のおかげで完全ではありませんが、必要な医療を受けることができます。
TPPに参加すると、医療の分野の自由化で、健康保険が適用されない「自由診療」が増えていきます。
自由診療の値段は、医療提供側が決めるため、お金がないために病院で診てもらえない人が増えることになります。

・金融

TPPに参加すると、銀行や郵便局にも外国企業が入ってきます。アメリカの金融資本は、膨大な資金を持つ郵便貯金と簡易保険の運用に参入することを望んでいます。
外国企業に参入された場合、郵便貯金と簡易保険の資金は当然、海外に流出します。
つまり、私たちのためにある貯金が海外に流出してしまうことになるのです。

●TPPは百害あって一利なし

TPPはグローバリゼーションであり、強い者と弱い者がハンディなしに戦う(競争する)ということです。
関税を撤廃すると、強い者がますます強くなり、弱い者がますます弱くなります。
日本の場合、農業、医療、金融という重要な分野が、国際的に弱いので、非常に危険なのです。

日本はアメリカと不利な条件で取引をしてきましたが、TPPは、それに拍車がかかることになります。今までの不当な圧力が合法的圧力になります。

現在、TPPを推進しているのは、関税撤廃を望む輸出産業、経団連ですが、それによって、私たちの生活に最も重要な農業、医療、金融がダメージを受けます。
「脱原発」と同様、私たち市民が「脱TPP」の声を上げていかなければなりません。

●私たちにできること

・TPPの危険性について周りの人に伝えよう
・TPPに対して意志表示をしよう
⇒「TPP交渉参加反対1千万署名全国運動

*参考資料:
TPPを考える―「開国」は日本農業と地域社会を壊滅させる
TPPが暮らしを壊す 雇用、食生活、保険・医療の危機