巻頭言

【巻頭言】ブータンツアー(3)

★医療は無料

首都ティンプーの国立病院を訪問しました。

ブータンでただ一つの国立病院です。

立派な建物に、たくさんの人々が来院していました。

日本から来ている医師(小児科女医の石沢さん)にお話を伺いました。

この病院には医師は60名くらいいるそうですが、世界各国からボランティアで来ているそうで、日本からは石沢さん一人だけ。

厚生省をやめて今年からボランティアで来たそうです。医療費が無料なので、患者は多く、仕事は忙しく、大変だそうですが、とてもいきいきと活躍していました。

この国立病院でさえも、医薬品も医療設備も、医師も技術も不足しているそうです。

田舎には大きな病院はなく、小さな診療所がある程度で、ブータン全体として医師は絶対的に不足していて、国民に対する医師の比率は日本の10分の1以下だそうです。

田舎では民間療法がほとんどだそうです。

この病院でも、本人の希望で西洋医療も、伝統医療も、どちらでも受けられるそうです。

貧しい国、ブータンで医療無料はすごいと思いながら、最後に、

「外国人や観光客も無料ですか」と聞くと、なんと!

「もちろん無料です。会計窓口がありませんから」と笑顔で答えが返ってきた。

★教育も無料

首都ティンプーで小学校を訪れた。

さすが都会。親が車で送ってくる子もいたし、マイクロバスで集団登校の子もいた。

校門で先生が子どもたちを迎えているのも、日本の都会と同じ。

私たちも許可をもらって校庭へ。朝礼までの時間、校庭で子供たちと触れ合う。英語で話しかけたり、写真を撮ったり。

朝礼が始まると700人の子どもたちが「前へならへ!」・・・なつかしい!

そして、最初に全員で歌を歌う。校歌と仏教のお祈りの歌だそうです。

こうして毎日、仏教の教えを声に出して歌うのは、心にいい影響をもたらすだろうと思った。

朝礼では、校長先生の話、海外からのお客様の話があった。

朝礼のあと授業が始まるまで、ホームルームのような時間があった。

私たちは、6年生の教室の入り口で子供たちと話をした。

驚くほどしっかりしていた。

クラスのリーダーの女の子たち数名と話したが、自由に英語を話し、将来は、医者になりたい、教師になりたい、海外で学びたい、帰国すれば政治家になりたいなど、驚くほどはっきりと意見を述べた。

私たちの中に農学部の大学生がいて、「大学で農業を学んでいる」というと、ちょっと不思議そうな顔をしていた。たぶん、彼らには農業は当たり前のことで、掃除や、洗濯や、お料理や、子育てを大学で学ぶ、というのと同じような不思議な感覚なんだろう。

そういえば、私も子供の頃、大学の家政科って不思議な気がしたっけ。

この子らはきっと、大学に進み、海外に留学し、帰国すると首都や都会で社会のリーダーになっていくのだろう。

彼らを見ていて、民宿させたいただいた家での会話を思い出しました。

「5人の子どもたちは、みんな都会に出て学校に通っています」

不安になったので、聞いてみた。

「学校を卒業すると、ここに帰ってくるのですか」

「いいえ、子供たちにこんな苦労はさせたくない。だから学校に通わせている。
学校を出たら、都会でしっかりと働いてもらいたい」

「では、農業はだれが継ぐのですか」

「私たちが年を取って働けなくなったら、都会に行きたい」

驚いて、「では、農業は、どうなるのですか」と聞くと、

答えは無かった。

教育費無料の結果、多くの子どもたちが教育を受け都会で仕事を始め農業の担い手が減ると、どうなるのだろう。

「ブータンは国民の90%が農民。食糧は自給自足」

この根幹が危なくなるのではないだろうか。

ブータンの医療費、教育費が無料であることは、まだ病院が少ないこと、学校が少ないことで成り立っているのではないだろうか。

食糧の自給自足も農民が多いから成り立っていると思う。

エネルギーの自給自足も、農業が主体だから成り立っていると思う。

これから、大学進学率が上がり、都会で働く人が増え、電気製品、自動車が増え、消費が増え、開発が進むには、お金が必要になる。

そのためには、国内の開発を進めなければならないし、輸入、輸出も増やさなければならない。

日本が60年歩んできた道以外の道を、進むことができるだろうか。

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