巻頭言

【巻頭言】大阪都構想

昨年11月、大阪府知事と大阪市市長のダブル選挙がおこなわれ、
「大阪都構想」を掲げる橋下氏が圧勝した。「大阪都構想」とはなにか。

★「都構想」のねらい

橋下氏の知事時代の経験で最大の問題点は「大阪の二重行政」だった。
大阪には政令都市が二つあり(大阪市、堺市)、予算、税金、行政の権限が大阪府とは独立していること。そのため、人の無駄、お金の無駄だけでなく、政策面でも、政令都市(市長)の反対でできないことが多かった。
その結果、大阪は力が分散して政治、経済が沈下していた。
東京都のように一元化することで政治経済を効率良くする必要があった。

★ダブル選挙

先月11月、大阪市長の任期切れで市長選挙が予定されていたが、当初は、現職市長(平松氏)が「立候補しない」と宣言をしていたので、「都構想」の実現をめざす橋下知事は、「都構想」実現のための「大阪維新の会」の事務局長(松井氏)の出馬を発表した。
そこで、「都構想」に反対する平松氏が出馬宣言。
現職市長の出馬となると松井氏では勝てないと踏んだ橋下知事は、3カ月の任期を残して知事を辞任、自らが市長選に出馬。知事には松井氏が出馬。
前代未聞のことだが、橋下知事は、自分が知事を辞任してでも市長に出馬し、松井氏が知事に出馬すると両方勝てる可能性が高い」と踏み、実際に圧勝した。つまり大阪市民、大阪府民は「都構想」を支持したのだ。

★政令都市

政令都市とは、大都市(人口百万人以上)を都道府県から独立させて、都道府県と同等の権利・義務を与えるというもの。国としては、大きな税収のある大都市に自治権を与える代わりに、直接支配したいという本音があるのです。その結果、政令都市は発言力が強くなり、都道府県には厄介な存在となり、大阪などのように「二重行政」の問題が生じる。

★東京都の誕生

東京は、以前は大阪府と同じように、「東京府」の中に「東京市」があった。東京市は東京府の財政の90%以上を占めるようになり、東京府は財政面でも政策面でも不都合が生じた。その不都合を解消するために、1943年(戦時下)、東京府を東京都、東京市(現在の23区)を特別区として、知事が一括統治することにした。これによって、東京都は現在の姿になった。

★東京の区長 

政令都市をまとめるのは市町だから、政令都市の区長は市長に任命される。
東京都の特別区(23区)は市からスタートしたので、区長は区民選挙によって選ばれている。「都構想」でも、区民による選出となるだろう。

★「大阪都構想」のメリット

「都構想」は「二重行政」を解決するためのもので、現在の東京都を見る限り、強力な知事と、区民から選ばれた実力派の区長のもとで、区の特徴を生かした行政が実行されて、うまくいっている。

★今後、予想される問題

「都構想」は、国が直轄していた政令都市を手放すことになり、国の大きな抵抗が予想されるので、実現にはかなり時間がかかるだろう。
もし「大阪都」が実現し、そのメリットがはっきりすると、大都市横浜(人口370万人)を抱える神奈川県、名古屋(人口230万人)を抱える愛知県、札幌(人口190万人)を抱える北海道などの都構想が浮上する可能性がある。
だから国は、さまざまな法律論で妨害するだろう。

憲法や法律の解釈は、なんとでもできるだろうから、

  • ①国が「大阪都構想」を拒否
  • ②橋下市長が、そのことを提訴
  • ③長い裁判になり、大阪の市民も府民もうんざり
  • ④時間がかかれば、大阪の沈下が進む

などのマイナスの面も予想される。

★「都構想」は地方主権へのかけはし

「都構想は大阪の問題」だと思われているかもしれないが、日本の将来に、大きく関わっている。一番には、現状の中央集権の打破の狙いが大きい。
日本は、「首相公選ではない」「国民選挙がない」など、国民には直接の意志表示する機会がない。その結果、国民は政治に関心が薄い。
そういう意味では、日本政府は政治のレベルは低いが、国民支配については独裁国家、社会主義国家並みに強力だと言える。
橋下氏は、そういう現状に対して、すでに関西広域連合を打ち出し、さまざまなチャレンジを始めている。
道州制はまだまだ意見がまとまっていないが、中央集権は地域主権に移行すべきもので、「都構想」はそのスタートとも言える。
「都構想」の実現には、大阪市民、大阪府民、国民の大きな後押しが必要だ。
「大阪都構想」の成功⇒横浜、名古屋などの「都構想」の成功
「中央集権」から「地方主権」へ
「中央政治」から「市民政治」へ
大阪の「都構想」は、これからが大いに楽しみなスタートなのです。