巻頭言

【巻頭言】世界は変わる

いま『地球村』事務局は1,2年生のスタッフが過半数で、若さと熱意と元気にあふれています。今夜も、さっきまで事務局スタッフたちと熱く語り合っていました。「世の中を変えたい!」「みんなが幸せな社会を実現したい!」
今月号は、その熱い思い、熱い話題を書きました。

★ソ連の崩壊

1991年、ソ連は突然崩壊した。

あの大事件の陰には、名もなき英雄たちの知られざる行動があった。

当時、ソ連政権内部では、民主化を主導していたゴルバチョフ大統領派と、それに反対する保守派が激しく対立、ついに民主化を発表する日の前日、保守派がクーデターを起こし、軍部を掌握した。

ゴルバチョフ大統領を逮捕、監禁し、ゴルバチョフの参謀エリツィンらがいたホワイトハウスを戦車で包囲することを命じた。

しかし、命令を受けてモスクワに出動した戦車隊は、何万人というモスクワ市民に取り囲まれ、激しい抗議を受けて立ち往生。

戦車隊の若い隊長は戦車を降りて市民の声に耳を傾けた。

それは命令とは全く逆の話であった。

一人でホワイトハウスに向かい、エリツィンらと話し合った。

戻ってきた彼は部下たちに、「私は市民の側につく。君たちは自由だ。自分で判断しなさい」と告げた。

兵士たちは悩んだ末に彼に従い、戦車隊は方向転換して撤退した。

市民から大歓声が上がった。

※私は当時、この映像をテレビで見ており、とても感動した!

そして、世界中の人が感動したことだろう!

その時、同時進行で、クーデターを起こした保守派の臨時政権の記者会見が行われていた。

保守派による臨時政府代表の「国家に反逆する者たちを制圧した」という発表に対して、若い女性記者が「国家に反逆しているのはあなた方だ」と激しく抗議した。これは当時のソ連では、ありえない場面であった。

さらに、厳しい報道規制をかいくぐって1人のジャーナリストが命がけで、これらの一部始終を報道した。

この時、多くの名もなき英雄たちの勇気ある行動が、この歴史的な大事件に大きな役割を果たした。

今年の年末、NHKテレビ番組「英雄たちのその後〜ロシア民主化20年」で、このことを紹介していた。

彼らは当時を振り返って、「あの時は夢中だった。しかしこの20年間、一度も忘れることはなかったし一度も後悔したこともなかった」と語った。


★ベルリンの壁の崩壊

ソ連崩壊の直前、ゴルバチョフ大統領の民主化の波は東ヨーロッパにも波及、東西ドイツの国民にも大きな変化と期待を生み出していた。

その波に押されて、東ドイツ政府は1989年11月9日、「旅行許可証の規制緩和」を行ったが、これが「ベルリンの壁」の崩壊を招いたのだ。

その政令案は、なぜか、十分な審議なしに国会を通過した。

さらに、その発表では、なぜか、「ベルリンの壁を除く」という部分が「ベルリンの壁を含める」と読まれた。

そして、「いつからか」という記者の質問にも、なぜか、「いますぐだ」と答えた。これらは、すべて間違いであった。

しかしそれが、なぜか、そのままテレビニュースとして世界に流れたのだ。

歓喜する東西ドイツの市民が「ベルリンの壁」に集まって、何も指令を受けていない国境警備隊と衝突したが、何万人という市民に囲まれて国境警備隊は開門せざるを得なかった。

開門されて合流した東西の市民は歓喜し抱き合った。

ハンマー、つるはしを持った東西の市民がベルリンの壁を壊し始めた。

これは三日三晩続いた。この感動的なシーンは全世界に報道され、この年1989年のクリスマスには全世界は東西の冷戦の終結を祝った。

※私もこの感動的なシーンに涙を流した。

世界中の人々も、平和の実現に歓喜し、涙を流しただろう。

★世界を変える主役は市民

いまや革命の主役は市民だ。

昨年、エジプト、シリア、リビアなど中東の独裁政権も次々と倒されたが、この「中東の春」の主役も市民だった。その大きな原動力はfacebookだったと言われている。

20年前、30年前、勇気あるジャーナリストが命がけで流した情報が市民を動かしたが、いまでは無数の市民が携帯やスマートフォンで流す情報や画像が世界を動かすのだ。

★なぜ変わらなかったのか

情報をコントロールする者が、社会をコントロールすることができる。

国や企業、マスコミの流す情報が、「社会はこういうものなんだ」と信じさせている。

誰もが問題点や矛盾に気づいているけれど、それを口にしたり、行動した人が失敗する姿が報道されることで、「世の中は変えることはできないんだ」と信じてしまう。みんながそう信じることで、この社会が成り立っているのだ。

だったら、それを変えるには、「そうではない。それ以外の道もある」「別の考え方、別の方法がある」ということを知らせればいいのだ。

事実を知らせること、どうすればいいか知らせること、多くの人が「社会を変えよう」「社会は変えられる」と信じることで社会は変わるのだ。