地球は今

【地球は今...】GNHの国だった日本の江戸時代

江戸時代末期に日本を訪れた外国人の書いた報告では、私達が学校で習った内容とは全く違う江戸時代が描かれています。

今回は、書籍逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー) を元に江戸時代の生活を紹介し、これからの日本のあり方について考えます。(渡辺 裕文)

●笑顔の日本人

幕末前後に海外から日本にきた人たちは、その多くが日本人は陽気である、笑顔が絶えないと記しています。例えば、

「誰の顔にも陽気な性格の特徴である幸福感、満足感、そして機嫌の良さがありありと現れていて、その場所の雰囲気にぴったりと融け合う。
彼らは何か目新しくすてきな眺めに出会うか、森や野原で物珍しい物を見つけてじっと感心して眺めている以外は、絶えず喋り続け、笑いこけている」(1886年のタイムズ誌)
「日本人ほど愉快になりやすい人種はほとんどあるまい。
良いにせよ悪いにせよ、どんな冗談でも笑いこける。
そして子どものように、笑い始めたとなると、理由もなく笑い続けるのである」(リンダウ:スイス通商調査団)
「通りがかりに休もうとする外国人はほとんど例外なく歓待され、「おはよう」と言う気持ちの良い挨拶を受けた。
この挨拶は道で会う人、野良で働く人、あるいは村民から絶えず受けるものだった」(ブラック:イギリス人ジャーナリスト)

●質素だが貧困ではない生活

日本人の生活について、物質的には質素だが、貧困とは程遠い記述が多くかかれている。例えば、

「人々は楽しく暮らしており、食べたいだけ食べ、着物にも困ってはいない。
家屋は清潔で日当たりも良くて気持ちが良い。」(ハリス:アメリカ初代公使)
「おそらく日本は天恵を受けた国、地上のパラダイスであろう。人間が欲しいというものが何でも、この幸せな国に集まっている」(リュードルフ:プロシア商人)
「貧乏人は存在するが、貧困は存在しない。金持ちは高ぶらず、貧乏人は卑下しない。みな同じ人間だと心底から信じる心が、社会の隅々まで浸透しているのである」(チェンバレン:イギリス人の日本学者)

 

●子どものような心を持つ日本人

「日本の庶民階級の人々は、まるで子どものように物語を聞いたり、歌をうたうのを聞いたりすることが非常に好きである。」(アンベール:スイス使節団団長)
「人力車夫たちが、一人の客をめぐって争わず、くじびきで誰が客を乗せるのかを決めるのに感心した。ものを盗まれたり、暴力沙汰にあったり、侮辱を受けたことは一度もなかった、何も被害も受けずに旅が出来る国など世界のどこにあろうか」
(ディアス・コバルビアス:メキシコ観測団)

●GNHの国だった日本

昨年、『地球村』は、GNHの国であるブータンへのツアーを実施しました。犬や馬を家族同様に扱っている様子、両親や年長者を敬う様子、信仰心、文化を大切にする様子、自然を大切にする心など、この「逝きし世の面影」で紹介されている日本は、ちょうど私たちがブータンでみて、感じてきた事と同じなのです。
そして、私達が感じてきたことと全く同じ事を当時の西洋人が言っています。

「本当にお前のための文明なのか。この幸福な情景がいまや終わりを迎えようとしており、西洋の人々が彼らの重大な悪徳を持ち込もうとしているように思われてならない」(ヒュースケン:アメリカ人通訳者)

●日本は何処へ行くのか

・経済大国?
 GDPは中国に抜かれ世界第3位となり、一人あたりのGDPでは世界16位まで転落

・技術大国?
 福島第一原発の事故とそれに続く処理で最先端技術での信頼は失墜

・貿易大国?
 2011年の貿易収支は、2兆5千億円の貿易赤字に。回復の見通しもみえない。

・環境大国?
 温暖化防止会議COP17では、京都議定書からの離脱を示唆したため、日本との2国間交渉もほとんどなく、存在感がなかった。

日本は、ここ数年で急速に大国と言われてきた分野でことごとく、その座を追われ始めています。原発事故の対応などで政治力のなさも世界に露呈しています。

ブータンという国は、インドと中国に挟まれた小国でありながら、その国のアイデンティティを残すためにGNH(国民総幸福)を打ち出しました。

世界的に認知も広がり、今年6月にリオデジャネイロで開催される地球サミットの一つのテーマになっています。

ここに政治の本質があると思います。

GNHの国だった日本は、無くなっていますが、その精神は今も私達の心のなかに残っています。

どこかに何かを求めるのではなく、私達の中にあったものを思い出すことが、今を生きるカギです。
引用図書:『逝きし世の面影』(平凡社、渡辺京二著)