【巻頭言】ウガンダ視察
『地球村』は、テラ・ルネッサンスの「元少年兵の社会復帰活動」を支援しています。
その活動の視察のために、この2月にアフリカのウガンダに行きました。
関西空港からドバイに飛び、ドバイからウガンダのエンテベ空港に飛び、行きも帰りもまる一日ずつかかりました。
ウガンダは東アフリカにあり、ビクトリア湖に面し、ナイル川上流に位置しており、農業が盛ん、食べ物も豊かです。
アミン大統領の独裁、内乱などで混乱が続き、政府軍、反政府軍の衝突で少年兵、村の襲撃、難民などの問題が起こり、現在、完全な終結はしていないものの、混乱は大分、おさまりました。
テラ・ルネッサンス
LRA(神の抵抗軍)に襲撃された村から連れ去られた少年、少女は、ゲリラ要員として苦難の道(暴力、訓練、過酷な労働、少年兵、慰安婦)が待っている・・・。
逃亡したり、生き延びた人たちが元の村に帰ると、家族が死亡していたり、受け入れてもらえず途方に暮れる・・・。
テラ・ルネッサンスは、その人たちを教育し、職業訓練し、社会復帰までをサポートする活動をしていて、この6年で約150名を受け入れ、すでに半数以上が社会復帰。
訓練生、社会復帰途中、社会復帰済みの人たちと会った。
彼らの多くは、近隣のふつうの人たち(教育や社会訓練なく大人になった人たち)と同等か、それ以上の社会復帰が成功していたのだ。
そのように「元少年兵の社会復帰プログラム」が成功していったところ、なんと「一般の少年や若者」の入学希望が増えてきたという。
テラ・ルネッサンスはそれほどの成果を上げているのだ。『地球村』は創設時から支援を続けてきたが、この成果を見て胸が熱くなった。
男子訓練生ビンセント
テラ・ルネッサンスの訓練生は全員、言葉にできないくらいひどい経験をしている。
心にも身体にも重い障害があり、過去のことは話したがらないが、「在訓練生20名中最年長のビンセントなら話ができるだろう」ということで1時間くらい話を聞いた。
19歳で連れ去られ、14年間兵士として働かされた。
少年兵としての訓練は過酷を極め・・・途中で仲間が殺されたりする中で、だんだん一人前になり、やがて兵士に。
14年に及ぶ兵士生活の後半は兵士長として100人の兵士を率いて戦闘をした。
政府軍との戦闘、食糧調達のために近隣の村の襲撃、多い時は100名を殺傷・・・戦争の終結も見えず、なんのために戦っているのか分からなくなり、ついに脱走・・・
生死をさまよいながらやっと自分の村にたどり着いたが、すでに両親は亡くなり、頼る人もなく途方に暮れていた時、保護されテラ・ルネッサンスの訓練センターで学び、将来に光が見えてきた。
現在は裁縫、木工技術を学びながら社会に出ること、自立することをめざして頑張っている。
「いまはとても幸せ」と語る彼は、右腕は銃弾で砕かれた骨が曲がり、首にも大きな傷が。全身に49か所の傷があるという。
彼らは明るい、元気、楽しい!
まず、彼らを一言で表せば、明るい、元気、楽しい!
しかし、水道も電気もお金もない。こういう生活を想像してみてほしい。
生活は、まず水汲みから。
女性が頭に乗せて運ぶ水を、私も運んでみた。
20リットルのポリタンクを頭に乗せる。
なんとか担げるけれどバランスが難しく10メートル歩くのもやっと!女性たちに笑われた!
食糧は、畑で作っているキャッサバ、豆、トウモロコシ、バナナ、麦だけ。
ハットと呼ばれる土とわらで作った丸い家を訪問した。
広さは6~8畳くらい。そこに家族全員が暮らす。
家具はナベと食器くらい。
他にはほとんどなにもない。本当にシンプル。
何といえばいいのだろう・・・私たちは「不可欠と思っている家具や道具の99%は不要」ということだった。
それだけで、みんな健康的に生きている!
心を病むこともなく、
引きこもりもなく、
犯罪もなく、
自殺もなく、
将来の不安もなく、
底抜けに明るい表情をしている!
私たちの方が病んでいる
私たちの社会は、ウガンダの田舎にはないものばかり。
教育があり、医療があり、福祉があり、社会保障があり、生活保護があり、人権があり、生存権があり、にもかかわらず、生きる意味がわからず、
自分を見失い、心を病み、引きこもり、自殺が多く、幸せだと思う人の比率が「世界で120位」・・・一体どうなっているのだろう!
紙面の関係で詳しく書けないのが残念だが、心を病んでいる人、自分を見失っている人、生きる意味がわからない人は、アフリカの田舎で数カ月暮らしてみればいい。
おそらくそれらがすべて、途方もない「ぜいたく病」「甘え」だということが分かるだろう。