スペシャル対談

2012年5月号 環境省環境カウンセラー 内藤正己さん

内藤さんは、松下電器産業(現パナソニック)で環境測定分析を担当し、松下グループ環境監査員として、国内外延べ約70回の環境監査・調査・支援を実施しており、現在はISOの審査員、EA21審査人、環境省環境カウンセラーとして、審査・カウンセリング・講演を行っています。

高木さんとは40年来の友人で、『地球村』理事でもあります。まるで同窓会のように、笑顔溢れる和やかな対談になりました。

 

41年、共に環境と合唱を…

 

高木 こんにちは。まず出会いについて…

内藤 1971年に松下に入って、中央研究所に配属になった時が出会いです。私も小学校から合唱をやっていたので、中央研究所のコーラス部に入り、そこで高木さんは指揮をしておられた。

1971年は、公害問題がクローズアップされた年で、中央研究所では環境部門を立ち上げ、私はそこに配属され、以来、合唱と環境に関わって、40年以上の長いおつきあいです。

高木 私の交通事故もよく知っている訳だね。その前後の変化はどうでしたか。

内藤 変化は劇的でした。オール松下の合唱団(パナソニック合唱団)を設立、合唱コンクールで上位入賞をするようになりましたが、どうしても金賞が取れなかった。

そんな時に交通事故、長期入院・・・。絶望的な状況でしたが、ベッドの上にキーボードを置いて、動かない手でキーに触って、指を動かす努力をされている姿に涙が出ました。
たいへんな努力と精神的な葛藤の末に、会社にも合唱団にも戻ってこられました。

高木さんはまるで別人のように、考え方も指揮も変わり、全国大会で初の金賞を受賞! あれは劇的でした!

 

みんなの幸せが私の幸せ

 

高木 指揮以外には、なにか覚えている?

内藤 当時、私は合唱団のマネージャーでしたが、一緒にお茶を飲んでいるときに「今まで君の考え方がわからなかったけど、最近はわかるようになったよ」と言ってもらえたことがすごく嬉しくて、覚えています。

高木 そうそう、君はよく「楽しくやりましょうよ」と言ってみんなをうまくまとめていたけど、「たとえ364日泣いても最後の1日に笑う方がいい」というのが僕の考えだったし、技術系役員(正副指揮者、正副パートリーダー)はみんな同じ考えだった。

私は技術系の役員に、「軟弱なマネージ系がいるから、コンクールで勝てないんだ!」と悪口を言っていたよ(笑)

内藤 そうでしたね。私は27年間マネージャーをしましたが、マネージ系役員(庶務、会計、渉外、正副パートマネージャー)にいつも言っていたのは「自分を犠牲にしてみんなのためにがんばろうというのなら辞めてもらって構わない。

自分が動くことでみんなが楽しんでくれたらうれしい、それで自分も楽しい、というのなら一緒にやろう」ということなんですよ。

高木 そうかあ!そうだったのかあ!私は交通事故で大きく転換して、「364日笑えるなら最後の1日に泣いてもいいじゃないか」と方針変更したけれど、マネージ系では前から、そういう考えだったのかあ!知らなかった!・・・いま知ったよ!感動した!(固い握手)

「みんなの幸せが本当の幸せ」「みんなを幸せにすることが自分の幸せ」というのが『地球村』の基本。

君は元からその思想があったんだね。そうかあ!・・いま改めてマネージ系に大きな感謝の気持ちが湧いてきたよ。

その後、私が指揮者をやめてからも、『地球村』設立や初期の活動も一緒だったね。
1991年正月、『地球村』設立の時、僕の自宅の書斎に有志20人が集まって『設立趣意書』を発表したっけ。

「上下なし、肩書きなし、会則なし、会費なし、基本理念は「非対立」でスタートしたね。
『地球村通信』は非定期のFAX通信だった。
ビルのオーナーさんが事務所を貸してくれてから、『地球村』が広がっていったよね。

内藤 懐かしいですね。高木さんの講演会もどんどん大きくなり、今も、私が仕事で環境講演をしていると、高木さんの話がよく出ますよ。

 

これから市民の波が動く

 

高木 君の環境業務についてお願いします。

内藤 その後、松下電子工業で環境測定分析の仕事をしました。
工場進出の際に環境アセスメントをして、マレーシア、シンガポール、中国など海外の工場にも関わりました。私も団塊の世代なので、2007年問題(団塊の世代の一斉退職問題)が話題になっていたこともあり、2002年に早期退職しました。

環境省の環境アドバイザーなどの資格を取り、環境に関する国際規格(ISO)の審査会社で契約審査員を始めました。

あとは、専門学校や大学で環境の講師をしています。
他には、認証を取りたい会社のコンサルタントや、環境関連の法律の説明、一般の人に向けた環境講演会も行っています。

昨年からは、原子力関係の講演もしています。
というのも、今までは、「環境基本法から原子力や放射線は除外する」とされていたのですが、今年の1月末、閣議決定で「環境基本法には原子力を含める」ことになりました。
法律の改定はこれからですが、40以上の関連する法律を一斉に変えなくちゃいけないのでなかなか大変ですね。

高木 閣議決定は国会で通過しないと、なんの意味もないし、権限もないよ。
実質何も動かない。
原子力や原発に関しても、大きな抵抗勢力があって、なかなか国会を通過しないね。
安全委員会も安全・保安院も、いまも原発推進派が多いからね。おかしなもんだ。

内藤 6月に指針が出るようですが、たぶん遅れるでしょう。

高木 ここまで「成長、成長」でやってきて、環境に関しては、もうごまかしようもないところまで深刻なのに、まだまだ政府も認識がなく動きが見えないなあ。

内藤 ここまでひどい状況になってきてしまったのですから、高木さんがずっと説いてきたことが、もっともっと広がればいいなと思います。
地域『地球村』が、今年から復活と聞きましたが、5年後、10年後のことを考えて盛り上げていってください。
そのためにお手伝いできることがあればやっていきたい、そう思っています。

高木 ありがとう。ツイッターやフェイスブックが普及してきたから、「アラブの春」のように市民運動が効果的になってきたね。これからが正念場。

41年の付き合いと、『地球村』の理事として、これからもよろしくお願いします。