【地球は今...】日本のこれからの再生可能エネルギー
菅前首相が退陣条件として成立させた法律「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が7月1日から始まります。
これから日本のエネルギー政策がどうなっていくのかを一緒に見てみましょう。
(事務局・渡辺裕文)
再生可能エネルギー(自然エネルギー)とは?
繰り返し利用できる自然のエネルギーのことです。
電気として利用する場合には、次のような種類があります。(○は利点、×は欠点・課題)
【小規模水力発電】
○:コストが安い、安定的な発電が可能、技術的にも成熟している
小さな水流でも発電可能。都市の浄水場でも発電可能。
×:あまりない
【風力発電】
○:比較的コストが安い
×:立地場所が限られる、発電量が天候に左右される
【地熱発電】
○:安定的な大規模発電が可能
×:火山地帯など立地場所が限られる、開発から発電開始まで時間がかかる
(「熱岩盤地熱発電」という新技術があり、3キロ以上採掘を行うとどこでも発電が可能になる。現在、実証実験が行われている)
【太陽光発電】
○:立地場所を選ばない
×:コストが高い、発電量が天候に左右される、夜間は発電できない、
寿命が短い(インバーターなどのシステムの寿命は10年と言われています)
【バイオマス発電】
○:比較的コストが安い、安定的に供給可能
×:原料の調達に環境破壊などを引き起こす場合がある(p12環境トピックス参照)
世界の再生可能エネルギーの現状は?
世界の再生可能エネルギー発電の発電容量は、風力発電などの急増により、2010年には原子力発電の設備容量に肉薄しています(右グラフ)。
規設備投資もアメリカやドイツの他に、中国、ブラジルなどで急増。
特に中国は風力で世界一、自然エネルギー全体でも世界一の発電容量を持つようになっています。
118カ国を超える国が、自然エネルギー政策を打ち出しています。
福島第一原発事故と日本のエネルギー政策
日本は、長く「原子力重視、再生可能エネルギー軽視」の政策方針でした。
しかし、昨年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故により、菅前首相が「エネルギー基本計画の白紙見直し」を表明。
退陣条件となった「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(再生可能エネルギー促進法)」を成立させました。
この法律成立以前も、自然エネルギーによって発電された電気は、東京電力など9つの電力会社が一定の割合まで買い取る義務がありました。
しかし、この割合が非常に小さく自然エネルギー利用の促進につながる制度ではなかったのです。
日本の再生可能エネルギー政策「固定価格買取制度」とは?
再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取ることを決めた制度です。
・発電設備を設置したコストの回収に見通しが立てやすくなる
⇒再生可能エネルギーの普及が進む
・風力発電、太陽光発電、地熱発電、小規模水力発電、バイオマス発電が対象
固定価格買取制度の問題点は?
・現状の「地域独占」のままでは、買取価格が上乗せになるだけ
⇒「地域独占」を解除しなければならない
地域独占…住んでいる場所にある電力会社以外と自由に契約できない
・現状の「総括原価方式」は電力企業だけに認められた不当な原価方式
⇒「総括原価方式」を解除しなければならない
総括原価方式…電力会社が発電にかかった全てのコスト+利益で電力料金を決定
・現状の「発送電独占」のままでは、電力会社の利益確保、思惑通りになる
⇒「発送電分離」が不可欠
発送電独占…電力会社が発電と送電を行なっており、自由な市場が形成できない
・経産大臣が買取価格や買取期間を決定するため政権交代などで、電力会社に有利に変更される可能性がる。
※ドイツでは「電力自由化」(発送電分離)と「自然エネルギーの優先買取」の義務付けにより自然エネルギーが爆発的に普及。
これからの自然エネルギー利用
今回の「固定価格買取制度」は自然エネルギー普及の一つのステップにすぎません。
今年の夏にエネルギー目標値の策定が行われます。脱原発、自然エネルギー優先の社会の実現に向けて、関心を持ち続け、意思表示を行なっていきましょう。
できることから始めましょう
- ・脱原発の意思表示をしよう
- ・身近なところから省エネ、節電を心がけよう
- ・グリーン電力を購入しよう