【巻頭言】原発、その後
福島事故は終わっていない
野田総理は昨年12月に「冷温停止」と発表したが、事実ではない。
冷温停止というのは、「原子炉が安定的に冷却され、コントロールできている状態」であるが、事故現場は事故直後となんら変わっていない。
原子炉(圧力容器)は破壊したまま、燃料棒はメルトダウンし圧力容器を突き破り床面を数十センチ浸食した状態で、水をぶっかけて、かろうじて熱暴走(臨界)を抑えているだけ。
その冷却水のホースは敷地を10キロにわたって這い回り、しょっちゅう水漏れが起き、時々断水もしている。断水が10時間続けば熱暴走(臨界)が始まる。大きな地震、津波が来れば、その場しのぎの冷却システムは破壊され流されるだろう。事故直後の「一触即発」となんら変わっていないのだ。
再稼働(7月1日)
関西電力は「夏は電力が不足する、再稼働が必要」を主張し、
大阪市長、京都、滋賀の知事は「再稼働絶対反対、電力は足りる、必要な節電は協力する」と主張し続けた。
関西圏の市民の多くも「節電は可能、再稼働絶対反対」の声が大きかった。
しかし政府は「安全宣言」「電力不足、経済面から再稼働が必要」と繰り返し、担当大臣の福井県詣(もうで)が行われ、総理は「国民の生活を守るため」と発言、強引に大飯原発の再稼働を行なった。
国会事故調の最終報告(7月12日)
①原子炉は地震で破壊した可能性がある
②現状の規制組織では、事故の再発は防げない
③現状の東電(経営陣)には、原子力事業たる資格がない
この結論は、「原発の再稼働は不可能」と同じではないだろうか。
原子炉は地震で壊れた
国会事故調の最終報告の重要な部分は、「原子炉は地震で破壊した可能性がある」だが、当時の「地震直後から冷却水の水位が下がった」の報道、それを裏付ける当時の水位データは、「原子炉は地震で壊れた」ことを物語っている。
東日本大地震はM9だったが、震源は福島原発から150キロ離れていた。福島原発での振動の強さ(500ガル)はM5相当だった。
これは「M5の地震が直近で起これば原発が破壊される」可能性があるということだ。つまり現状の原発は、M5以上の地震で壊れる可能性がある。
使用済燃料の処理方法なし
さらに大きな問題は、使用済燃料の処理方法がないことだ。
原発1基を動かすには核燃料が年60トン必要で、毎年10トンの使用済み核燃料が発生する。核燃料は使用前より使用後の方が放射線ははるかに(数万倍)強くなる。日本にはすでに2万トン貯まっている。その処理方法がないのに再稼働できるだろうか。処理できないものが増え続けるのだ。
さらに、処理できないということは、コストが算定できないということだ。
廃炉についても技術もコストもわからない。
そんな状態でここまできてしまったのだ。
この夏の電力需給の現状
政府と関西電力は「この夏、電力不足になる」と強く主張してきたが、
現時点まで(8月上旬)電力需給は連日「余裕あり」である。
関西では、昨年の東京のようにエスカレータを止めたり、店や公共のスペースの照明を暗くするような節電はしていない。
その関西で、「再稼働は必要なかった」ことが証明されつつあり、
関西以外の全国では、「原発ゼロで夏はしのげる」ことが証明されつつある。
結論
①安全保障ができない(地震、津波、故障、テロ)。
②費用が算定できない(使用済み燃料、廃炉、事故被害)。
③電力会社の経営体質(原子力事業者たる資格がない)。
④「原発ゼロでの電力は足りる、原発は必要がない」が証明されつつある。
パブリックコメントの愚
政府はまた、おかしなことを始めた。
「2030年の原発比率」について国民の意見を問う「パブリックコメント」をスタートさせたのだ。
これは、「0%、15%、20~25%」の3つのシナリオから一つを選ぶ形になっている。
「0%シナリオ」には「経済に大きなダメージあり、家庭の電力料金は2倍になる」とあり、「20~25%シナリオ」には「経済への負担が軽く、家庭での負担は少ない」とある。これは、とんでもない情報操作だ。
いま全国は「原発ゼロ」の状態で、社会は問題なく回っているし、節電した企業や家庭は支出が減っている。
一部には困っている企業や困っている人もいると思うが、安全な未来のために業務や生活の見直しは必至だと思う。
さらに政府の「ゼロ」以外のシナリオには、「原発コスト、事故コスト、廃炉コスト、使用済燃料処理コストが含まれていない」というインチキをやっているのだ。国民をばかにしている。国民は騙されてはいけない。
『地球村』としてパブリックコメントへの提出
パブリックコメントの締切が8月12日だったので、『地球村』として次の内容で回答するとともに、MLやサイトなどで全国の仲間に呼び掛けた。
「ゼロ」を支持する。
それは2030年ではなく、できるだけ早く再稼働をやめること。
その理由
① 福島事故は終わっていない。
② 福島事故の原因もわかっていない。
③ 福島事故の被害者の救済もできていない。
④ 全国の原発には安全保障がない(地震対策、津波対策、活断層の調査)。
⑤ この夏、原発ゼロでしのげる(関西も)。
⑥ 節電の努力をすれば、原発ゼロでしのげる。
⑦ 政府の「ゼロシナリオ」には過大なコスト負担がある。
⑧ 政府の「ゼロシナリオ以外」には原発コストが含まれていない。
⑨ 政府は本気でドイツに学ぶべき。
⑩ 原発事故国として、政府は「脱原発」を宣言すべき。
⑪ 以上、原発の継続はあり得ない。
⑫ 自然エネルギーを推進すべき(小水力、高温岩体、風力)。
ダウンアンペア
「脱原発」の強力な方法を紹介します。
知らない人が多いと思うが、各家庭は電力会社と電力契約をしている。
通常60A(アンペア)契約だが、これによって基本料金と電力単価が決まっている。
ところが一般家庭なら、「60A⇒20A」に下げても不都合はない。基本料金は60Aは1500円、20Aは500円だから(地域によって異なる)毎月1000円、年間1万2000円節約できる。さらに、電力単価も安くなるから、節電は場合によっては年間数万円の節約になる。電力会社は、契約量によって発電計画を立てているので、多くの家庭でダウンアンペアに取り組めば電力必要量が大幅ダウンし、原発は不要になる。
※『地球村』ホームページの「ダウンアンペア作戦」をごらんください。
グリーン電力
もう一つ、「脱原発」の強力な手段を紹介します。
現状の大手電力会社ではなく、中小の発電会社から自然エネルギーを利用した電力を買うことができる仕組み。
グリーン電力の会社は大手電力会社と契約を結び、現状の電線のまま電力契約ができるので、簡単に契約をすることができる。
※『地球村』事務局>グリーン電力契約をしています。