【地球は今...】GNH(国民総幸福量)のめざすところ
国民調査で97%が幸せであると答える国、ブータン。
ブータン国王の提唱した国民総幸福量(GNH)は、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長はじめ、世界の多くの国が注目し、ブラジルの地球サミット(RIO+20)での多くのテーマの一つになっていました。
ブータンが国策としてあげている国民総幸福量を一緒に見てみましょう。
GNH(国民総幸福量)とは何か?
・1972年にブータン王国のジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代国王が提唱
・精神面の「豊かさ」が、物質的な「豊かさ」で損なわれてはいけないという国王の信念から提唱
※経済生産・物質的豊かさだけを数値化しているGNP(GDP)とは基本が違う
※ブータンと日本を比較してみると
ブータン | 日本 | 日本はブータンの? | |
面積(平方キロ) | 38,400 | 378,000 | 10倍 |
人口(人) | 69万 | 12.8億 | 185倍 |
人口密度(人 / km2) | 18 | 339 | 19倍 |
GDP(ドル) | 13億 | 5兆4600億 | 4,200倍 |
一人当たりGDP(ドル) | 5,200 | 33,800 | 7倍 |
※ブータンの農業は大部分が自給自足のため、GDPには反映されていない
GNHの4つの柱
「公正な社会経済発展」= 格差を生まない経済政策と差別を生まない社会
「文化の保全と推進」 = 伝統技術や習慣、言葉を大切にする
「環境保全」 = 自然との共生
「良い統治」 = 住民が意思決定に関わる民主主義
・経済成長が第一ではなく、国民の幸福を最大にすることが第一
・自然環境や独自の宗教・伝統的文化を守り、のちの世代に伝えることが大前提
ブータンにとって、GNHは国づくりの羅針盤
・国民一人ひとりの「幸せ」を最大化することで、国や社会全体の「幸せ」を最大にすることを目指す。
・ブータン憲法 第9条2項
「政府の役割は、GNHを追求できるような諸条件の整備に務めること」
・9つの領域で国民の生活状況を調べている
「心の健康」、「環境(生態系)」、「健康」、「教育」、「文化の多様性」、「暮らし向き」、「時間の使い方」、「コミュニティーの活力」、「良い統治」
ブータンの国民は幸せなのか?
2005年の国勢調査では、97%が幸せであると回答
2010年の国勢調査では、40%が幸せであると回答
⇒ 国民がより幸せに生活できるように、国が調査の方法を変えた。
現状で満足せず、より改善しようという政治を行なっている。
「鶴の保護か、電気か」 ブータン人の心にGNHが根付いている一つのエピソードを紹介します。 ブータンのポブジカ村に、国の近代化政策の一環で電線を引かれる計画が持ち上がりました。しかし、この地域はオグロヅルの越冬地になっていたため、電線が鶴の飛来の妨げになるという理由で電線計画をポブジカ村は断ったのです。環境保護の視点だけでなく、「鶴の幸せは自分たちの幸せと同じ」という考え方から「電気より鶴」を選ぶのが、当たり前なのです。 |
日本の現状
日本はGNPで世界第3位の国になっていますが、その分幸せになっているでしょうか?「世界幸福地図(World map of happiness)」では、日本は178カ国中90位でした。
(ブータンは9位)
内閣府の国民生活調査(右図)でも、GDPは大きくなっていますが、生活満足度はどんどん下がっていっています。
『地球村通信』3月号で紹介したように、江戸時代の日本は世界の人たちから賞賛されるGNHの国でした。
今、私たち一人ひとりが自分の心の中にGNH(みんなにとって幸せであること)を取り戻すことが必要です。
「私たち一人ひとりの中に、人格という龍が住んでいます。 その龍は経験を食べて大きくなるんです。 いつもその龍を大事に見守ってくださいね」
(ジグミ・ワンチェク第5代ブータン国王)