スペシャル対談

2012年12月 小高山同慶寺住職 田中徳雲さん

福島県南相馬市小高区にある小高山同慶寺(福島第一原発から17km、海岸線から4km)で住職を務めていた田中徳雲さんは、3・11で被災し、家族と共に福井県坂井市に避難。

現在は福島と福井を往復しながら被災者たちと語り合い、「福島の今」を全国に発信する活動を行っています

 

今こそ、物から心の時代

 

高木 はじめまして。どうぞよろしくお願いします。
『地球村』との出会いを教えていただけますか。

徳雲 最初は、『ありがとう』の本でした。
福井県で避難者を支援してくださっている女性から本を頂戴しました。
今、仮設住宅や避難所にいる人たちは、心のバランスを失っているものですから、「これは心の栄養になる本だ」と思って、お寺に置かせていただくことにしました。
お盆のときは、檀家さんたちがたくさんお寺に来られるだろうと、その時のお土産として、200冊注文させていただきました。

高木 それはうれしい。そのために書いたんだよ。
あの本は不思議な本で、贈り主の人柄を映す鏡なんだ。
徳雲さんが渡されると、喜ばれたでしょう。

徳雲 非常に喜ばれています。
『ありがとう』の他にも3色(3冊)ありますよね。
本堂の入口横に「私もいただいて良い本だったので、みなさんのために準備させていただきました。読んでいただける方はどれか一冊お持ちください」と書いて4色の本を並べたのですが、「一人一冊なの? 家族で一冊なの?」と訊いてこられる方もいて「一人一冊でいいですよ。四人家族なら全色お持ちください。家族みんなで読んでいただければうれしいです」と伝えました。

高木 私もうれしい。『地球村』も、被災地支援として、400俵のお米など、いろんな支援活動をしたけど、『ありがとう』プレゼントもすればよかったと今気づいたよ。

徳雲 それはいいですね。避難先では「物」は足りてきています。
今は「心」の栄養がほしい時ですから、『ありがとう』のプレゼントは喜ばれると思います。
私も今日また注文して帰ろうと思っています。

 

公憤を持って行動しよう

 

高木 南相馬市の状況を教えてください。

徳雲 私が暮らしてきた小高地区は、南相馬の一番南側に当たるのですが、地震と津波の天災による被害と、原発事故の人災による被害で、住民は100%避難を余儀なくされました。
津波で家族を失った方、家財を一切合切失った方、家はあるけれど放射能で帰れない方など、様々な状況です。
今年4月以降は、いいか悪いかは別として、大人が家に帰って片づけをすることができるようになりました。
しかし山間部では、5年以上は帰宅できないだろうと言われています。

高木 放射線の被害地域については「何年で帰れるか」は、科学的には根拠がないからなあ…。

徳雲 津波・地震・放射能の三重苦の中で、これらを一括りに考えるべきではないと思っています。
地震・津波の天災は、税金を投入してでも救済を丁寧に行っていただきたいです。
放射能は人災ですので、今まで適切な対処を行ってこなかった東電の責任ということも追及していきたいと思っています。

高木 東電も政府も「想定外」を連呼してきたけど、すべて想定内だったことが判ってきた。
国と企業の責任は重大だね。

徳雲 本当は仏教では、「怒り」という感情は煩悩の一つで、よくないこととされているのですが、やっぱり地域の子どもたちのこと、将来のこと、愛する家族のことを考えると、怒りは湧いてきてしまいます。
ですからその怒りを「慈悲の怒り」というか、社会をよりよい方向に変えて行くための原動力として、怒りを持って行動していきましょうと伝えています。

高木 そうだね。ただ、『地球村』では非対立が基本理念で、「腹は立たない」としています。
今回の原発事故に対する気持ちは、「怒り」というよりも、公憤、義憤、みんなのためを思う憤りだと思う。

徳雲 被災者のみなさんと、そういうお話をさせていただくと「気持ちを顕にしてもいいんですね」と言われます。

高木 いいんですよ。「憤り」の声をあげましょう。

徳雲 声が出せるようになって、ようやく天災と人災を分けて考えられるようになりました。人災はその責任を、さかのぼって追及されるべきだと思います。

 

福島の復興に希望の事業を

 

高木 今、徳雲さんが力を注いでいる活動はどんなことですか。

徳雲 私はとにかく人に会うということを主に活動しています。
当初は顔を見合わせて「足りないものはない?」「体は大丈夫?」って聞き歩いていました。

高木 お坊さんに話を聞いてもらえるのはうれしいでしょう。

徳雲 田舎のお年寄りは遠慮もあって、ボランティアさんに「あれがほしい、これがほしい」って言えないんですよ。
希望を聞いて、物資がたくさん集まっている場所に行って見つくろって届けたり、人に頼んだりということを最初はしていました。
そのうち仮設住宅がたくさん建って、別の問題が出てきました。
プライベートな空間ができることによって、孤立が始まったんです。
特に一人暮らしの方が心配です。

高木 それで、あちこち回って絆を作るお役目があるのですね。
他に何か活動はされていますか。

徳雲 今、進めていきたいと思っていることが2つあります。
ひとつは「いのちを守る森の防潮堤」計画です。
岩手県から福島県まで300キロに、瓦礫を有効活用して、緑の防潮堤を築こうという計画です。
産業廃棄物処理法との絡みで、瓦礫は埋設処分ができないことになっているらしいのですが、東日本大震災に限っては特例としてもらいたいです。
もうひとつは、誤解を恐れずに言えば大麻の栽培です。
麻は油が絞れ、繊維も使え、抗菌作用もあり、非常に有効な伝統作物です。
ウクライナでは除染の実証実験にも使われています。
麻のことを自分なりに調べてみたら、石油産業を拡げるために麻の産業を禁止してきた経緯があるとわかってきました。
「大麻=麻薬」という印象がありますが、日本の伝統産業として復活できればと考えています。

高木 なるほど。私も応援していきますよ。

いのちを守る森の防潮堤

大麻を正しく考える国民会議