【地球は今...】老朽インフラ問題
2012年12月2日の中央自動車道「笹子トンネル」で発生した「吊り天井板落下事故」は、死者9名、負傷者2名の痛ましい結果を招いた。
この重大事故の一つの原因が、高度経済成長期に建設されたインフラの老朽化が挙げられている。
日本のインフラの現状について、改めて見なおしてみます。 (事務局 渡辺裕文)
高度経済成長期のインフラ
インフラ(トンネル、橋、道路、水道管、ダム、公共施設など)の物理的な耐用年数は50年とされている。
日本のインフラの大部分は、高度経済成長期(1960年から70年代)に建設されている
⇒すでに寿命である50年を過ぎたインフラ施設がたくさんある。
今後、更に加速度的に増えていくが、実態は把握できていない。
維持管理費の問題
加速度的に増えていく老朽インフラに対し、莫大な維持管理費が必要となると予測されている。
国土交通省は2011年の国土交通白書で維持管理が今後10年で新設を上回る可能性を指摘している。
インフラの現状を見てみましょう
●トンネルの現状
・全国の高速道路にトンネルは、1575本
うち笹子トンネルと同じ「つり天井構造トンネル」 40本
うち笹子トンネルと同じ築35年以上のトンネル 183本
・「打音検査(専用ハンマーでボルトやコンクリートを叩いて異常を調べる)」は、5年から10年に一度しかしていない。(笹子トンネルは7年間していなかった)
トンネル内の走行車両が増えると振動も増える
排ガスがトンネル内の地下水と反応すると「酸」になりコンクリートや金属を腐食
⇒5年に一度の検査でも少ないと考える専門家も。
・トンネルは100年持つと言われているが、メンテナンスが重要
高速道路(特に首都高速道路)
首都高速道路300キロのうち、
建設後
40年経過 30%(89.6キロ)
30年経過 46%(138.7キロ)
損傷がひどく補修が必要な箇所 9万6600件(2009年)
高速道路の地下化などの対策を検討しているが財源が不明なまま
橋(長さ15メートル以上) は15万5000橋
この大部分が1960年代に作られている
橋の寿命50年を経過した橋
現在8% ⇒ 10年後26% ⇒ 20年後53%
損傷などで通行止めや通行規制になっている橋
1379橋(2012年4月時点)
小規模自治体の管理の場合、補修や架け替えの費用がなく放置されているケースもある
水道管
日本の水道管は約63万キロ
このうち約8%(約5万キロ)が法定耐用年数を超過(2010年度)
⇒ 年間3万件の漏水事故、特に100世帯以上が断水するなどの事故は1073件
原発
原子力発電所の配管や機器は高温・高圧の水を使い、強い放射線の影響下にある。
2004年の美浜原発3号機の配管破断事故など、ひび割れなどの劣化により事故が起きやすくなるため、寿命は30~40年と言われている。
日本の原発50基のうち、すでに40年を超えている原発が2基、30年を超えている原発が14基。
10年後には半数を超える29基が30年を超える。
原発はいったん事故を起こした場合には、取り返しがつかない甚大な被害をもたらす。
老朽化の問題が起きる前に、廃止をすることが賢明である。
これ以外にも、
一般道路、
下水道、
巨大ダム、
港湾施設など
生活に直結する施設が、耐用年数を超えるまで刻々と迫ってきている。
自民党政権に交代して
現在の自民党政権は、景気回復を目的として、補正予算として3~4兆円公共事業費の予算を組み、道路、橋、港湾の改修工事、新規建設を始めようとしている。
しかし、この改修により延命はできるが、結局10年、20年の内に改修が必要になる。
この老朽化している施設は、日本の高度経済成長政策によって作られてきたものである。
更に、税収を上回っているこの建設費は国債として、私たちの子どもたちや孫たちが負担することになる。
つまり、子どもたちに残るのは、莫大な借金と老朽化した施設だけである。
本当にこのままでいいのだろうか。