【地球は今...】お手本にしたい国 キューバ
昨年実施した『地球村』ツアーのキューバ報告会も各地で始まりました。
冊子『キューバの奇跡』も好評で増刷を行なっています。
今回は、人を大切にする国キューバについて、医療と教育についてまとめました。
(事務局 渡辺裕文)
キューバの医療
・予防医学が基本(病気にならないように対策をとる)⇒ 国全体の医療費が削減される
・個人が支払う医療費は無料。治療、手術も無料。
・家庭医が地域住民の健康状態を把握している
・病状に応じて、上位の医療センターに紹介
この50年で、充実した医療体制で医師の数も増加、平均余命は高く、エイズなど疾病率は低く、先進国並みになった。
下図は、各国の平均寿命(縦軸)とGDP(横軸)の関係を表している。
GDPの高い国ほど平均寿命が長く、低い国ほど平均寿命が短くなり、右上に、アメリカや日本など先進国が集まっている。
キューバ(矢印)は、GDPは1桁小さいが、先進国並みの平均寿命となっている。
キューバは、この医療技術を中南米を中心としたより貧しい国に普及させるため、
・1963~2011年に、18,410名の医師を108の国に派遣した。
2012年には15,157名の医師を66ヵ国へ派遣している。
・28ヵ国から18,364名の医療留学生の受け入れを行なっている。
キューバは、なぜこんなすごい取り組みができたのか調べてみると、
キューバの憲法50条には、次のように書かれている。
「すべての人は健康を保持し守る権利を有する。国家はその権利を保障する。」
その具体策として、「無料の医療・入院の提供」、「無料歯科治療の提供」、「病気予防手段の実施」などが書かれている。
●キューバの教育
・教育費は無料。教科書だけでなく、学用品(鉛筆やノート)も無償で支給。
・制服や教科書は、下の学年の子どもたちに引き継ぐため、大切に使われる。
・重点教科は国語と歴史。(自国の言葉、自国の歴史を知ることがもっとも大切)
・大人も無料で教育を受けることができる。
・成人の識字率は99.8%⇒日本、アメリカよりも高い。
UNESCOが実施した中南米の国々対象の算数、国語、理科のテストでは、ダントツの1位。
(下図は小学校3年生の算数の成績分布。上から6番目、丸で囲ったキューバが右側へ飛び抜けている)
憲法51条には、教育の権利として次のように書かれている。
「すべてのものは教育を受ける権利を持つ。この権利は広範で無料の学校制度により保障される。
寄宿舎制度、奨学金制度はすべての教育水準で適用され、教材費は無料で各児童と若者に配給される。
家庭の経済状況がどのようであれ、各人の能力・社会的要請に応じて勉強を履修する権利を持つ。成人男女は、同様に無料で教育を受ける権利を持つ」
医療も教育も一朝一夕に現状が作られた訳でない。
人民投票によって憲法が採択されたのが1976年。
30年以上の努力の結果、今の医療と教育の制度が実現したのだ。
●憲法とは
キューバの憲法は、キューバの歴史そのものである。
キューバ国民は、スペインとの独立戦争、アメリカとの独立戦争で自由を勝ち取った。
小国、島国ながら、「自由か死か」という覚悟で大国を相手に戦い、自由を勝ちとった革命家であり、革命家の子孫である、と書かれている。
みんなの幸せを求め、命をかけ戦った人たちの歴史があって、自分たちの今があることを示し、そのことを忘れないようにとの熱い思いが伝わってくる。
いま、日本国憲法の改正議論が交わされているが、自衛隊を軍隊にするかどうか以前に、
国としてなにをめざすのか。国民に希望と未来を示さなければならない。
キューバは、その見事なお手本ではないだろうか。
引用図書:『キューバ・メキシコ視察報告書(全日本民医連ほか)』のキューバ共和国憲法訳