スペシャル対談

2013年4月 自給自足の陶芸家 秋山陣さん

香川県丸亀市で、廃材でセルフビルドした「廃材天国」に5人家族で暮らす秋山さん。
陶器を焼きながら、不耕起の自然農を行い、さらにはピザ窯カーを転がしてイベントにも出店。子どもたち3人は、そんな環境で自由に豊かにのびのび育っています。そんな秋山さんの原点は…。

 

有名陶芸家の夢が…。

高木 こんにちは。本当に久しぶりだね。 噂の「廃材天国」、一度来たいと思っていました。出会って何年になるかな。

秋山 94年に岡山『地球村』で講演を聴いたのが最初です。

 

ちょうど20歳で、今は39歳ですから19年前になります。

高木 講演はどうだった?

秋山 備前焼の弟子入りをして岡山に行っている時で、僕は環境にも政治にも無関心で、陶芸に打ち込み有名な陶芸家になることだけを考えていましたので、そりゃあショックでした。何も知らなかった自分が一番のショック。

高木 その後、生活は変わった?

秋山 嫁のあっこちゃんと付き合っている頃で、講演は一緒に聴いたんです。
僕は何も知らなくてショックだったんですが、彼女は、お母さんが40年も前から合成洗剤を使わない人で、環境意識が高い家庭で育ってきたので、すぐに高木さんの言う通りだってことになって、僕らは同じ価値観になっていきました。

実は、講演を聴いたのはいいタイミングだったんです。備前焼は高価で規模も大きくて、お金や権力もすごいんです。
高木さんから、お金と権力が、環境や社会をおかしくしているという話を聴いたとき、僕の疑問は合っていたんだなという確信が持てました。

その後は、郷里の丸亀に帰ってきて、親父と一緒に陶芸をやることにしました。

高木 丸亀『地球村』を作ったのはその頃かな。

秋山 そうです。98年くらいですね。
それから、高木さんの講演会を主催したり、自然農を始めたり、紫外線のことで学校を回ったりしました。
高木さんに出会ってからは、陶芸家として作品を焼いて、それを売って、売ったお金で生活するというパターンはないな…と考えるようになっていま
した。

電気もガスも水道もなしで!

高木 その後「廃材天国」生活を始めるわけだね。

秋山 はい。陶器を焼くには薪が必要で、備前焼なら1回に60万円ほどの松を燃やすんです。
松は高い、この辺りで薪屋さんはない、あっても60万円は払えない、どうしよう~って時に、建築廃材に気がつきました。
「古い家なら松の柱もある!」ってことで、タウンページで解体業者に片っぱしから電話をして、「廃材を譲ってください」と。
断られながらも、少しずつツテができて、頂けるようになりました。

高木 じゃあ、最初は陶器を焼くための廃材だったんだね。

秋山 はい。ところが廃材をもらい始めてみると、その中には、燃やしてしまうのがもったいないような立派な丸太や角材があって、いいものはストックしていったんです。
その頃はまだ実家にいて庭も納屋も広かったもので、廃材をコツコツためました。

2000年、それらの廃材を使って、セルフビルドで1軒目の家を建てました。田んぼと畑を借りて、小規模ですが自給自足も始め、2001年にはあっこちゃんと結婚、子どもも生まれました。

高木 あっこちゃんもそういう生活に賛成したの?

秋山 いや賛成どころか、とにかく嫁の方が「どうせ自分で家を作るんだったら、電気もガスも水道もなしでいこう!」というような、そういうタ
イプですから。

高木 あはは…それは気合いが入っているなあ。

秋山 電気もガスも水道もと聞いて、むしろ僕の方が躊躇しましたよ。
ただ、彼女がそういうコンセプトで、ぜひ薪で暮らしたいというので、薪で調理するわ、五右衛門風呂を焚くわで。

高木 困った嫁だね…(笑)。

秋山 1軒目は一応、プロパンガスと水道があったのですが、現在の2軒目は薪と井戸と太陽光発電でやっています。

自分で自由に人生をデザイン。

高木 セルフビルドは自己流なの?

秋山 はい、完全に自己流です。建築を勉強したこともなくて、1軒目は「筋交い」という言葉も知らず、面白がって見に来た大工さんから「こう
いうのを入れておけ」と言われて入れたのはいいけれど、アルミサッシを入れるときに、「じゃまだなあ」と1つ外し、2つ外ししていたら、ドリ
フのセットみたいにガシャンとつぶれました。
下敷きにならずによかったです。

その後、独学で勉強をして2軒目にはしっかり筋交いが入っています。
井戸は手掘りで4.5メートル。蛇口を開いたら水が出ます。
料理はかまどです。

 

高木 いいね。『地球村』と出会っていなかったら、こんなどえらい生活はしていなかったのかもね。

 

 

秋山 そうですね。陶芸で成功して有名になろうと思っていましたから、こういう生活はしていなかったと思います。

高木 子どもたちの人生も違うだろうね。

秋山 子どもはすごいですよ。10歳、8歳、4歳なんですが、1年生ではランドセル背負ってワクワクで学校へ行ったんですが、しばらくすると
「行きたくない」と。

うちは行きたくなかったら行かなくていい主義なので、家にいて、屋根に上がったり、金づちや包丁使ったり、やりたいことをして自由にしている。
3年生になったら「やっぱり行く」というので行ってみると、必死に勉強して友だちに追いつく。

4年生になったら、じんましんができて、うちではもちろん病院には行かないので、学校に行くのをやめたら治る。
それでも遠足や運動会には行く。そんな生活をしています。

高木 いいなあ。やりたいことをしながら、自分で学んでいるんだね。
最後にこれからの夢を教えて。

秋山 若い人たちが、自分で家を建てたいとか、自給自足したいとか思ったときに、「できる、できる、僕も素人でやってきたんだから」
と伝えたいです。ブログで発信していますが、いつか本も書きたいと思っています。
本気の方なら弟子入りも歓迎です。
多くの人に悠々自適、自分で好きなことができる人生を手に入れてほしいと、切に願っています。

高木 それと、丸亀『地球村』も復活させてね。

■廃材天国でエコ&ロハスな自給自足
http://kadoya.ashita-sanuki.jp/