スペシャル対談

2013年5月 斑鳩町長 小城利重さん

奈良県生駒郡斑鳩(いかるが)町は、飛鳥時代に創建された法輪寺、法起寺など多くの寺社、

藤ノ木古墳をはじめとする古墳群など、長い歴史と文化を刻む町。小城さんは、

その斑鳩で7期28年町長を務められ、地球環境を考える自治体サミットの共同代表としても

活躍されています。…。

 

環境自治体サミット10年目。

高木 こんにちは。お久しぶりです。前回お会いしたのは、自治体サミットでしたっけ。

小城 そうですね。自治体サミットは、鳥取県北栄町、茨城県東海村と続いてきて、今年は奈良の生駒で開かれる予定です。

高木 その前の2010年が斑鳩での開催でしたね。そもそも、私たちの出会いはいつ頃でしたっけ。

小城 奈良の国際文化会館で講演を聴かせていただいたのが最初です。10数年前になります。あの頃は、奈良県の行政の方でも活発に動かれて、有村京子議員らが講演を主催されて、そこで僕も環境問題を学ばせてもらいました。

高木 そうでしたか。『地球村』との出会いから、環境問題に対する意識は変わりましたか。

小城 かなり変わりましたね。職員たちも環境には熱心になっています。

高木 ところで、町長は何期目になるのですか。

小城 7期28年目になります。

高木 おお、かなり長いですね。四半世紀以上。斑鳩の若い人たちは、小城町長しか知らないことになりますね。

ゴミ焼却場を廃炉に!

高木 これまで、環境問題で取り組まれてきたことを教えてください。

小城 ゴミが一番の問題なので、煙突は平成24年4月に廃止しました。ゴミそのものは、生ゴミと可燃ゴミと分別するようになり、生ゴミは堆肥化を進めています。

高木 煙突を廃止したとは、どういうことですか。

小城 ゴミ焼却場そのものをなくしたんです。元々、斑鳩町には日量20トンの焼却場が2基あったのですが、ダイオキシンを出す煙突をなくすにはどうしたらいいか、職員たちとも対応を考えていたんです。国は、生駒郡のどこかの町に、100トン・24時間フル稼働の焼却場を作れという。でも、どの町も手を上げない。ゴミ焼却場やし尿処理場などの迷惑施設を新しく作るには、その周辺のみなさんに説得と補償が必要で大変なんですよ。そこで、ゴミの収集はするけれど、焼却はやめようと決めたんです。

高木 燃やさないということはどこへ持っていくのですか。

小城 白石畑というところに、ゴミを分別して一時保管した後、三重県の処理業者が取りに来て、そちらに処分をお願いしています。

高木 20トンの焼却場はどうなりますか。

小城 3年かけて解体することになっています。

高木 自前の焼却炉で処理するのと、業者に委託するのとではどちらが費用は安いですか。

小城 焼却炉建設費用として100億円、メンテナンス・維持費に年間2億円かかりますから、業者に頼んだ方が安いです。

高木 生ゴミの堆肥化はどのように?

小城 三重県の大栄工業という会社で、生ゴミを堆肥化してもらい、その堆肥はミズナの有機栽培に活用しています。

高木 生ゴミを全部?

小城 分別された生ゴミ全部です。

高木 全生ゴミの堆肥化というのは大きいですね。小さな町の大きな試み、いいですね。

歴史と文化で斑鳩の活性化を!

高木 環境問題で、他に取り組んでいることはありませんか。

小城 家庭で眠っている陶器を、必要としている人に使ってもらう「ありがとうき(陶器)市」を開催しています。

高木 ほう!それは町営で?

小城 はい、町の主催で3カ月に1回くらい。

高木 そうですか。それは現実的で、いい取り組みですね、他にはなにか、ありませんか。CO2削減につながる取り組みなど。

小城 太陽光発電に助成金を出したり、役場の照明をLEDに替えたり、などは始めていますが、斑鳩町は都市近郊の町なので、日中は大阪に務めていて、寝に帰るだけというようなライフスタイルで、あまり節電の余地がないとも言えます。高齢化も進んでいますし。

高木 斑鳩は観光の町ではないのですか。

小城 斑鳩には法隆寺をはじめ、有名な寺が5つくらいあります。奈良県は、俗に「大仏商法」と言われているのですが、国宝級の文化遺産が数多くあって、放っておいても観光客が来てくれるので、観光産業に工夫が足りない面があります。

高木 そう言われれば、今日は駅から法隆寺に寄って、町役場まで来たのですが、その途中は何というか、殺風景というか、土産店や観光案内のサービスがないというか、京都に比べて工夫がないようですね。

小城 そうなんです。東大寺や興福寺、薬師寺、法隆寺など、有名寺をつなげる観光ルートを整備したり、随所に観光ガイドを配置したり、県として観光に力を入れればいいのですが、そもそも観光客をもてなす心に欠けているところがあるのだと思います。


高木 斑鳩町だけでも「飛鳥の町」「斑鳩の里」としてがんばってみてはどうですか。馬や馬子さん、かご屋や人力車を走らせるとか。

小城 なるほど。それも面白いですね。 斑鳩は世界遺産でもありますし、建物の規制も厳しい町で、景観が残っています。建物の高さ制限があるほか、屋根の色も細かく決められています。今、若い人たちが中心になって、新しい観光の在り方を研究しています。法隆寺辺りは大きな家が多く、そういうところがほとんどお年寄りばかりなので、民宿やホームステイ、グリーンツーリズムに使えないかというアイデアも出ています。人が町に戻ってくれば、活性化につながりますから。

高木 いいですね。町屋や伝統文化を観光の売りにして成功しているところもありますから、参考にされるといいと思います。 斑鳩がよりよい町になるよう頑張ってください。

■斑鳩町HP http://www.town.ikaruga.nara.jp/