スペシャル対談

2013年6月 弁護士 権藤健一さん

 
 
毎年3月に開催される『地球村』総会で、監事として監査報告をしてくださるのが弁護士の
権藤さん。毎年、含蓄あるお話をしていただくのですが、高木代表とは四半世紀にも渡る
付き合いがあり、その上、弁護士事務所の運営には、素晴らしい信念を持っておられました。
その信念とは…。
 
 
 

25年前に、目からウロコ!

 
高木 こんにちは。私たちは出会ってから長いですね。
 
権藤 僕が弁護士になって27年、独立して23年、まだイソ弁(勤務弁護士)をしていた時代ですから、25年くらい前ですね。
    家内に連れられて高木さんの話を聴きに行ったのが出会いでした。
 
高木 25年でしたか! その頃にもう環境に興味があったのですか。
 
権藤 家内に誘われたということもありますが、環境に関心はありました。
 
高木 「環境に関心がない」という人もいるけれど、環境は食や空気、健康など、すべて自分に関わる問題だし、関心がない訳はないですよね。
 
権藤 花粉症とか、中国のPM2.5とか、意識しなくても降りかかる問題もありますからね。
 
高木 25年前、話を聞いてどうでしたか。
 
権藤 初めて聴くことがたくさんありました。開発が産業と密接に結びついて動いていることも、
    高木さんから教えられました。日本で脱フロンがなかなか進まないのも、企業が代替フロンに
    巨額の資金をつぎ込んでしまい、「回収をしなければ」という企業側の論理が働いているからだ、
    ということも伺って「なるほど!」と思いました。環境を守ろうと色々なことをして、エネルギーを
    使って、また別の環境破壊を生んでしまうおかしな仕組み。高木さんのお話は、
    目からウロコという感じでした。
 
高木 一旦、このおかしな社会の仕組みに気が付くと、いろんなことが見えてくるでしょう。
 
権藤 本当にそうですね。
 

三方丸く大岡裁き!

 
高木 権藤さんには、『地球村』の監事と顧問弁護士として務めていただいておりますが、弁護士としてのお仕事には、
    『地球村』の理念はお役に立っていますか。
 
権藤 『地球村』の理念そのままというのは難しいですね。個人にしても企業にしても、まずは「利益追求」が目的なので。
 
高木 なるほど。弁護士の仕事は、依頼者の利益のために応援することですよね。
 
権藤 そこなんですが、うちでは、「取れるだけ取ってやろう」とか、「減らせるだけ減らしてやろう」とか、そういう発想はしないんです。
 
高木 ええっ、そうなんですか?
 
権藤 100%勝てる事件でも、100%取ると恨みが残ります。自分が悪くても相手を恨むでしょう? 事件全体を見れば、
    落ち着きどころがあるんですよ。100取らずに80で我慢するとか、あるいは20払えばいいんだけれど30払いましょう、とかね。
    それで、三方丸く収まる。
 
高木 なんと、大岡裁きですね。
 
権藤 話し合いで和解をして、調整して譲歩して、一部は譲って一部は取る、そうして恨みを残さないところに落ち着かせます。
    僕らは事件単位で終わりますが、当事者たちはその後も、個人間の関係が続きますからね。特に親族関係だと、
    子や孫の代まで響いてしまう。恨まずに付き合っていける方法として、お互いに譲歩して中を取る格好で、
    というパターンを中心に考えています。
 
高木 いいですね。こういう話は初耳です。こうした方針は、弁護士という仕事そのものの考え方にあるのか、権藤さんの考え方なのか、
    どちらですか。
 
権藤 弁護士の仕事は、依頼者の利益を最大限に守ることです。その依頼者の利益というのは、純粋に経済的利益だけでは
    ないと僕は思うんですよ。その人の全生活を見て、人間関係も含めて、どこで解決するかを見てあげるパターンが、
    僕にしてみたら大きいんです。勝ち切ってしまうと更なる紛争の種をまく。恨みを残し、恨みが更なる恨みを作る。
    連鎖する。僕の事務所では「お互いに納得した解決で恨みを残さない解決をする」ということを前提に動いています。非対立の解決へ…。
 
高木 それは素晴らしい! 私は、権藤さんの事務所が2、3人だった頃から知っているけれど、今は9人ですよね。
    こんな時代だから、訴訟は増えているのでしょうが、親しみをこめて言わせていただくと、権藤さんは商売上手には見えない、
    お世辞も言わない、愛想もない、見てくれも…(笑)。でも、順調に仕事が拡大しているのは何かあるんだろうと思っていましたが、
    ここだったんだね!「なるほど!」と腑に落ちました! そこに、『地球村』が関わっているならうれしいね。
 
権藤 影響はあったと思います。非対立で、みんなの幸せを考える決着を常に考えています。「これは絶対勝てる」という時は、
    ちょっと譲った格好で終わってあげればいいのですが、その逆もあるんですよ。「これはどう考えても不利で負けるだろう」
    という場合が。負ける事件は受けないという方法もありますが、被害者の関係や紹介者の関係で受けることもあります。
    依頼者に必ず聞くのは、「本当にやりますか。費用対効果じゃなく、言いたいことを言いたいんですね」ということ。
    「そうする」といえば、事務所としては、勝ち切る気持ちで、本当にその人が言いたいことを総合的に見ていきます。
 
    法の正義というのは、結局のところ証拠があれば勝つ、なければ負けるという世界なのですが、
    証拠はないけれど、この人が正義だなと思う事件もあるんです。そしたら、その人の正義を
    精一杯代弁してあげるんです。すると解決の道が見えてくるんです。不思議なもので裁判官も
    人間なんです。段々わかってくるんです。そういう事件は弁護士としてやりがいがあります。
    「勝てる事件は、勝ちきらず三方一両損の解決を。負ける事件は負けを覚悟で、死地に陥れ
    て、然る後に生く意識で解決を。そして、全ての事件が万事塞翁が馬、諦めずに精一杯頑張る」
    というところが、うちの事務所の方針として持っています。
 
高木 そうかあ! 本当に、いい仕事をされてますね! 非対立というか、相手のことを配慮して
    考えて、落ち着きどころを探しておられる。
    権藤株、急上昇ですよ。本当にありがとうございました。
 
■権藤・黒田法律事務所HP