巻頭言

【巻頭言】憲法改正について

憲法改正の議論が盛んになってきたので、ポイントを解説します。
 
★平和憲法
日本国憲法は、前文で「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を日本国の三大基本原理と定義し、それを受けて憲法9条で「戦争の放棄」、「戦力の不保持」、「交戦権の否認」をうたっていることから、平和憲法と呼ばれている。
 
★自衛隊
憲法で「戦力の不保持」「戦争の放棄」「交戦権の否認」をうたいながら、日本は世界有数の軍事力(自衛隊※)を保有し、その自衛隊は米軍と共同軍事演習をし、米軍の戦争に加担している。
※日本の自衛隊の軍事力は世界17位、日本の軍備費は世界6位。
憲法とは国家の最高法規であり、憲法に反する法律や国務行為は、原則として無効である。自衛隊は原則的には、存在(自衛隊法)も活動も無効となる。
 
★憲法と現状
しかしながら、これまで多くの政権が「憲法の解釈」「国際的な常識」によって「自衛隊は軍隊ではなく、自衛のための最小限の武力」として、その存在を認め、「国防と防災」に限り、自衛隊の活動を認めてきた。
(国際的にも国防と防災は当然であり、国連においても異論はない。)
日本国民の大多数も、これに理解を示している。
国民が自衛隊の米軍との共同演習などを、疑問を感じながらも黙認してきたのは、国防の面からは自衛隊と米軍の共同は必要だと解釈できるからである。しかし、自衛隊が米軍のイラク戦争などの実戦に参加協力することや、「集団的自衛権」にいたっては、どう考えても自衛の枠を超えている。
「集団的自衛権」とは、米軍が攻撃を受けた際、日本が攻撃を受けていなくても米軍と共に戦うことを意味する。これは、実質的にアメリカ軍と一体化することであり、自衛隊は軍隊になり、交戦権を持つことになるからである。
 
★憲法は変えられるか
自衛隊が国防と防災だけであれば、憲法上問題はないが、米軍との共同演習、米軍との協力については憲法違反となるから、憲法と現状のズレは是正しなければならない。その場合、現状に合わせて憲法を変えるか、憲法に合わせて現状を正すか、ということが大きな問題である。
憲法は本来、状態に合わせてころころ変えるようなものではないし、いま見直す点は、日本国憲法の根幹である「平和主義」を捨てるかどうかという大問題であるから、一総理の思想や一政権の政策などで云々するものではないことは明らかである。
これほどの大問題について憲法を変えるには、国民的議論を十分行ったうえで、未来を見据えて改正しなければならない。
 
★憲法96条
その重要、重大な「憲法改正」について決めたものが憲法96条なのだ。
憲法96条では、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で発議し、国民投票で過半数の賛成を必要とする」と規定している。この「各議院の総議員の三分の二以上」という規定は、他の先進国の憲法改正と同等である。
 
★安倍政権の狙い、議論のすり替え
安倍政権の狙いは「自衛隊⇒国防軍」「集団的自衛権を認める」だから、平和憲法を破棄することになる。いまそれを表に出すと国民の反発は明らかなので、その前段階として憲法96条のハードルを下げようとしている。
「三分の二以上」を「二分の一以上」への変更である。
現状の与党は、「三分の二以上」なら無理だが、「二分の一以上」なら可能なのだ。憲法改正の議論もせず、その前段階のハードルを下げようとする安倍政権のやり方は、大きな問題だと思う。
安倍政権は、近隣諸国との緊張を高め、国民の危機感を高め、憲法を改正し、自衛隊を国防軍にし、集団的自衛権を発動しようとしている。
平和を愛する国民は、平和憲法(憲法9条)を守るために、その前段としての憲法96条も守らなければならない。
来る7月の参議院選挙では、平和憲法を守ろうとする党を応援しよう!