スペシャル対談

2013年7月 映画監督 豪田 トモさん

コンピュータ会社の営業マンから、映画監督の夢を叶えるべくカナダに留学。

4年間の勉強の後に、帰国してクリエーターとして活動開始。2010年にはドキュメンタリー映画『うまれる』を劇場公開。『うまれる』は、現在も自主上映会が全国各地で開催され、感動を巻き起こしています。

 

映画監督になりたい! 

高木 こんにちは。何年ぶりかな。結婚をして、お子さんも生まれたんだね。

豪田 はい。娘は2歳半になります。

高木 出会いのきっかけは何だったっけ。

豪田 5年前でした。当時、僕は船井幸雄さんの株式会社船井メディアさんのお仕事を2年くらいさせてもらっていて、その時にご紹介いただきました。『転生と地球』を読ませてもらって強い影響を受けました。

高木 そうかあ。ありがとう!ところで、映画監督って特別な仕事だけど、そのきっかけは?

豪田 浪人時代に『7月4日に生まれて』という映画を観て、トム・クルーズが役作りのために、車椅子で1年も生活したと聞いて、そこまでできる映画というものに、人生を賭けるロマンを感じて、映画監督になりたいと考えるようになりました。しかし、映画監督になるなんて夢物語みたいなものだと感じ、大学卒業後は、コンピュータ会社の営業マンになってしまいました。仕事が嫌で嫌で、ノルマの追求はきついし、営業成績も上がらないダメ社員で…。 ちょうどその頃、ブラッド・ピットの『ファイトクラブ』という映画を観ました。ブラピがコンビニ強盗をするシーンがあって、店員に銃をつきつけて「おまえの目指した職業は何だ?」と聞く。店員は「獣医」と答える。すると「そうか。おまえが明日から獣医になるために勉強するというのなら逃がそう。しかし、そうでないならブッ殺す」と言うんです。そのシーンで泣いている観客なんか一人もいませんでしたが、僕は涙が止まらなかった。僕も夢を叶えるために生きようと思って、映画監督を真剣に目指すことにしました。

親を選んで生まれてきた。

高木 「本当にやりたいことをして生きろ!」というメッセージが響いたんだね。その時、君はいくつ?

豪田 27歳です。2年後にカナダのバンクーバーに留学して、映像の勉強を本格的に始めました。でも、営業マン時代に学んだことも、後から思えば映画を製作・公開する上で役に立つことがたくさんありました。契約の概念や、予算に関することなど、すべてのことに意味があるといいますが、本当ですね。

高木 そうかあ!すべてに意味があることに気付いた人が成功をつかむんだよ。5年前に君に会った時、物事をポジティブに受け止め、論理的な話をする若者だと思ったけれど、今もそのままでよかった。 映画『うまれる』は、どういったきっかけで撮るようになったの?

豪田 実は、僕は両親と仲がよくなかったんです。4つ下の弟が病弱で入院と手術を繰り返していて、親の関心は弟の方に向かいますし、僕は関心を持ってもらえず、失望や怒りから、問題行動を起こすようになって。そのうち、家族とはそんな程度のものかと思うようになり、妊娠・出産・育児という家族作りに何の興味も持てませんでした。しかしカナダに行って、アイラブユーやハグが当たり前の家族の姿を見て、僕の家族観が違っていることに気がつきました。 6年前、産婦人科の池川明医師の講演の撮影を頼まれたんです。池川先生は講演の中で、「胎内記憶」という話をされていました。この話、ご存知ですか?

高木 「生まれる前に、自分で親を選んで生まれてきた」という話ですね。

豪田 そうです。僕はその話を聞いて、とっさに「僕はこんな親を選んでいない」と思いましたが、徐々に「君が選んだんじゃないの」と言われているように感じました。それまでは、何か思い通りにならないことがあると、全部を親のせいにしてきましたが、「自分が選んだのであれば自分の責任だ」と、初めて思いました。そして、「こんな映画が作りたい」と思いました。こんな映画といっても、ストーリーや構成が浮かんだわけではなく、観た人が親との関係、パートナーとの関係に気付くことができる、そんな映画にしたいと思ったんです。

「命、家族、絆」の映画を!

高木 『うまれる』はまさにそんな映画だね。親が嫌いな子どもが観たら、親を好きになるし、親にとっても救いになる、そんな映画だった。あれは4家族を中心にしたストーリーだったけれど、もっといろいろなケースがありそうなテーマだね。

豪田 そうなんです。今回の作品だけでは全然足りなくて、これからは「命、家族、絆」の三角形を、一生かかって撮っていくことになるのかと思っています。 

高木 今はどんな映画を作っているの?

豪田 人生の終末期、闘病、介護、血のつながりのない家族、乳児院や児童養護施設、愛着障がいなどをテーマに、3つくらいの作品を同時に撮っています。進行形のドキュメンタリーなので、どうなるのか結論もまだわかりません。来年あたりから、順次公開していけたらと考えています。

高木 また、感動の映画になりそうだね。その映画でどんなメッセージを伝えたいと思っていますか。

豪田 看取られた方や大病と闘う方たちが、口を揃えていうのは、「日常がいかに素晴らしいか」ということなんです。「話すこと、笑うこと、食べること、ただ普通の毎日がどんなにありがたいことだったか、こうなる前に知りたかった」というのです。僕は彼らの代わりに、その思いを伝えさせていただければと思います。

高木 なるほど。よくわかるよ。私の願いも、自然な生き方であり、自然な生き方を取り戻せば、ほとんどの問題は解決する。自然の中で生きている人々(アフリカやアマゾンの先住民たち)はエラン・ビタール(生命の躍動)を感じて生きている。生きていることがうれしくて、日常生活が愛おしい、そんな映画を作ってもらいたいな。

豪田 子どもに愛情を与えることが親の幸せ、親が幸せなら子どもも幸せ、みんな幸せ。親子関係に苦しんでいる人にとって、映画が少しでも救いになればと思います。

高木 「みんなの幸せこそ本当の幸せだと思う」それを伝える映画を楽しみにしているよ。

■映画『うまれる』公式サイト

http://www.umareru.jp/index.html