地球は今

【地球は今...】平和のための国際条約

5月号で紹介しましたように、武器貿易条約が国連で採択されました。多くの平和のための国際条約が締結、発効しています。その平和への歴史をたどります。(事務局 渡辺、辻野)

 

●大量破壊兵器の禁止条約

【核兵器について】

「部分的核実験禁止条約」1963年に発効し、大気圏、水中、宇宙空間での核実験が禁止された。この条約では、地下核実験については禁止されなかった。
1996年の国連総会で
「包括的核実験禁止条約」が採択され、157カ国が批准しているが、米国、イスラエル、イラン、エジプト、中国、北朝鮮、インド、パキスタンが批准していないため、発効していない。

また、米国ロシア中国、イギリス、フランス以外の国が、核兵器を持つことを禁止した「核拡散防止条約(NPT)」1970年に発効し、190カ国が締約国となっている。
しかし、核を保有しているインド、パキスタンは不平等条約であると加盟せず、核兵器を持っているとされているイスラエルも加盟していない。

 

【生物・化学兵器について】

戦時における化学兵器、生物兵器の使用は、ジュネーブ議定書(1925年)で禁止されていた。
これを受け、生物兵器の開発・生産・貯蔵等を禁止、保有している生物兵器の廃棄を目的とした
「生物兵器禁止条約」1975年に発効。170カ国が締約国となっている。
未署名国・地域はイスラエルなど16カ国・地域。

また、サリンなどの化学兵器の開発、生産、保有などを禁止し、保有している化学兵器を全廃することを目的にした「化学兵器禁止条約」1997年に発効。
188カ国が締約国になっているが、北朝鮮、イラク、イスラエル、シリア、エジプト等は未締結。

 

●冷戦後の動き

東西の冷戦後、世界各地での地域紛争などが増えたため、通常兵器(地雷、小火器など)の死傷者が多数を占めるようになった(兵士ではない一般市民、特に女性や子どもの犠牲が増えた)。
それまでの核や生物・化学兵器などの大量破壊兵器規制から、事実上の大量破壊兵器である通常兵器の規制へと移っていった。

「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)」1983年に発効し、焼夷弾、レーザー兵器、地雷などが、禁止または制限された。
しかし現在も、インドネシアやタイ、シンガポール、北朝鮮、アフリカ諸国の多くなどが締約国になっていない。このCCWは、例えば地雷は、地域紛争での使用が認められるなど、抜け穴の多い条約であった。

 

このため、地雷廃絶国際キャンペーン(ICBL)などのNGOと、対人地雷全面禁止に賛同する国々がCCWの枠外で地雷禁止の条約へ向けて動きはじめた。
対人地雷の使用・製造・保有・移動などの全面禁止、地雷の廃棄、埋設された地雷の除去、被害者の支援を明確化した
「対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)」1999年に発効し、現在160カ国が参加している。
しかし、世界有数の保有国で輸出国である
米国中国ロシア、インドなど、締約国となっていない国が40カ国ある。

 

また、地雷同様に被害が多いクラスター爆弾について、使用・製造・保有および移動の禁止、爆弾の廃棄、不発弾の除去、被害者の支援のための「クラスター爆弾に関する条約(オスロ条約)」2010年発効した。
オタワ条約と同様、世界の約200NGO連合が主導し、各国に働きかけて条約制定となった。
しかし、主な生産・保有国の
米国・中国・ロシア、イスラエル、韓国、北朝鮮などは国防上の理由などのために署名していない。

 

●武器貿易条約、制定への道のり

20134月の国連総会で「武器貿易条約(Arms Trade TreatyATT)」が採択された。1993年にオックスファムなどのNGOが国際キャンペーン「コントロールアームズ」を開始し、20年かけて各国に働きかけ、やっと条約制定にこぎつけた。

※ネットワーク『地球村』も「コントロールアームズ」の日本キャンペーンに参加しています。

【条約で何が変わるのか?】

全く野放し状態であった国際的な武器取引に対し、一定の枠組みが作られた。

条約加盟国は、武器輸出の管理をし、輸出する武器が大量虐殺や戦争犯罪、テロなどに使用されることがないようにしなければならなくなった。

【武器とは?】

戦車、装甲車、大口径火砲、戦闘機、戦闘ヘリコプター、軍艦、ミサイル、ミサイル発射装置、そして銃などの小火器。国際取引額は年間800億ドル(約75000億円)と推計。

【どこが作って、どこが買うのか?】

主な輸出国:米国ロシア、ドイツ、フランス、中国など

主な輸入国:インド、中国、パキスタン、韓国、シンガポールなど

【条約が効力を持つためには?】

条約が発効するためには50カ国の批准が必要。しかし、反対票を投じた国(シリア、北朝鮮、イランの3カ国)、棄権した国(武器取引国のロシア中国、武器輸入国であるインドなど23か国)の参加は考えられず、発効するまでに12年かかり、効果も限定的となる。

【条約に足りない部分は?】

武器製造の規制ではなく、輸送用機などは規制対象外など、抜け穴も多い。

【私たちにできることは?】

日本が条約に批准するためには、国会での承認が必要。議員へ意思表示をしよう。

『地球村』事務局情報部の新人、辻野です。初仕事として、条約を調べていくと、条約が制定されても、何重ものからくりや抜け道があることがわかって、びっくりです。

でも、NGOが主体となって大国を動かせたという事実も知り、希望の光を感じています。あきらめないで、知らないふりをしないで、直視する。そして、できることからアクションを起こそう! と俄然やる気が湧いてきました。『地球村』から風を吹かせていきたいです。