スペシャル対談

2013年8月 ㈱リーブル代表取締役 新本勝庸さん

高知県で出版社を営む新本勝庸(あらもとかつのぶ)さんは1998年から『地球村』高知で

活動(2代目代表)、学校プールに紫外線よけのテントを設置する運動などで全国をけん引しました。

現在は出版によって「幸せの種をまこう」を企業理念に、人を幸せにできる本作りに取り組んでいます。

 

WSの感動とショック!

高木 こんにちは。久しぶりだね。新本さんとは長い付き合いだけれど、出会いはいつ頃でしたっけ。
新本 1997年ですから、今から16年前です。知人に誘われてオゾン層破壊の講演会に行ったのがきっかけでした。
高木 初めての講演会はいかがでしたか。
新本 環境の問題そのものよりも、基本的なものの考え方、その奥深さにびっくりしました。それですぐに2回目の講演会でスタッフをしました。スタッフをやると聴き方も変わりますね。
高木 そうでしたか。どんな変化がありましたか。
新本 はい。生活面でも大きく変化しました。でも一番大きかったのはワークショップの参加でした。大阪のWSに参加して、1日目の夜に、僕ともう1人が高木さんに呼び出されて、「私が話している時、あなたたちは考えごとをしている。それはもったいないよ」と注意を受けたんです。
高木 そうかあ。覚えていないけど、よほど目立っていたんだろうね。ショックだった?
新本 はい。自分では「得るものが大きい」と感じていたし、気分が乗っていたので、「どこが悪いんだろう。ここで帰らなければならないのだろうか」と、ショックでした。でも翌朝、屋上にあがって空を見たらきれいな青空で。「このまま続けてみよう」と思いました。
高木 そうでしたか。続けてよかったね。
新本 そうなんです。その時、高木さんが「1回でわかることじゃないよ」というお話もされたので、「そうか。わかるまで来ればいいんだ」と思ったんです。とにかく、今までに味わったことのない感動をしている訳ですから、なぜ感動しているのか、この根底的な感動が何なのか、わかるまで通おうと思ったんです。

 

みんな、幸せのために生きている。

高木 で、その問題はすっかり解消した?
新本 そうですね。WSに参加したり、WSを主催したりしているうちに、自分を度外視して、無になって動くことの清々しさが、快感になっていきました。
そうこうするうちに、社員やスタッフが考えごとをして話を聴いていない様子もわかってきたんです。ああ、指摘されたのはこのことだったんだ!と。聴くことと感じること、それは一緒に行わないといけない。考えごとをしているとストンと落ちてこないんだとわかったんです。
高木 時間がかかったけど、わかってよかったね。
新本 それが深くわかるようになったのが昨年のWSですから、すごく時間がかかったんです。昨年のWSの後、自分が変わった気がします。何でも平気になった。のめり込むけれど、客観的に見ている自分もいて、感じている自分といっしょに動いている感じなんです。会社が立派な賞をもらったのも、その影響だと思います。
高木 大きな賞をもらったんだったね。
新本 全国の印刷団体の作品展に初出品し、461点の中から、最高賞の経済産業大臣賞をいただきました。
高木 私も合唱コンクールはよく知っているけど、初出場で受賞というのは、とても難しいだろうね。
新本 優れた技術を持つ常連が受賞することが多い賞なんです。それなのに受賞できたというのは、プロが見れば、それが今までにない印刷技術だとわかるものだったからなんです。そういう技術が誕生したのも『地球村』のおかげなんです。

高木 どういうこと?
新本 WSで得た学び、それは「何のために生きるのか、それはみんなを幸せにするためだ」ということ。そして、「すべての人が、みんなを幸せにするために生きているんだ」ということがわかったんです。
「社員もそうなんだ」とわかったときに、「やりたいことを大切にしよう。お金を追うより、やりたいことの中に、お金を生み出すことがあるはずだ」と社員たちに告げました。そして社員の自主性を尊重しました。そんな中、超高精細のFMスクリーニング技術で賞をいただいたり、汚水を出さないクリオネ環境印刷というシステムを導入したりしました。

 

クオリティを上げるお手伝いを。

高木 それはすごいね。経営方針が変わったら、成果もついてきたのですね。
新本 はい。今年1月から、自費出版ネット受注部門を立ちあげましたが、まずまずの成果を上げています。それまでも、経営風土としてはいい感じであったと思いますが、会社として一つの方向性を持った感じではありませんでした。WSによって僕が変わり、ぶれずに伝え始めたことで、変わりつつあると思います。

高木 それはよかった。では、これからの夢について教えてください。

新本 1番の夢は、出版は森林破壊の最たるものですから、この世からつまらない出版物を減らしたいということです。それには原稿が来たときに、クオリティを上げられるようにお手伝いすることだと思います。私はそのクオリティの基準を、「その本がどれだけ人を幸せにできるか」に置いています。リーブルが意見を言い、アイデアを出すことでクオリティが上がり、クオリティが上がればみんなが幸せになる。元のままの原稿で出版すれば10人が幸せになる本を、リーブルが手を入れることによって、1000人が幸せになる本になることが目標です。この経営理念を継承していきたいと思っています。
どんな人間も生まれてきた時は一緒。みんな、周りを幸せにするために生きている。もしそれができない人がいるとしたら、それは自分を否定された経験の反動なのだと思います。周りを幸せにしたいという、人間本来の生きる喜びを大切にしていく会社でありたいと思っています。
高木 なるほど。それこそ私が30年前に気づいたこと、『地球村』の原点だよ。みんな、幸せを求めているのに、比較競争という不自然な社会で傷つき、「みんなの幸せ」を忘れ、目先の幸せ、自分だけの幸せを追うことで、周りが不幸になる。
私たちは、そのことを気づき、自分の実践によって、そのことを広く伝えていこうとしている。
新本さんが、出版という分野でそのことを実践してくれることは、とてもありがたい。今後とも活躍を祈ります。そして高知の『地球村』の活動の発展も願っています。

■自費出版のリーブル
http://www.livre.jp/index.htm