巻頭言

【巻頭言】シリア情勢

『地球村通信』は月1回だから時事問題は書きにくい。
「今後どうなるか」の予想を書いても、読まれる時は既成事実になっているから。しかし、シリア情勢は重要問題だからまとめておきます。
 
★これまでの経緯
国際社会は、「大量破壊兵器や化学兵器は禁止」というメッセージを発してきたが、「シリア政府は毒ガス(サリン)を使用し、自国民を1000名以上殺した」らしい。もしこれが「事実」だとすると、国際社会が何も言わず何もしなければ、大量破壊兵器や化学兵器を保有する国が増えてくるかもしれない。
これは国際的に困ったことになるので、本来は国連が、安保理の決議によって調査団を派遣、禁止された兵器の保有や使用が確認されたならば、国連安保理の決議により禁止された兵器の「廃棄」を命令し、それに従わない場合は、国連安保理の決議により経済制裁、武力制裁などを行う。
しかし、「国連安保理の決議」は進まない、時間がかかる、さらには経済制裁しても効果があるかどうか疑問。
それでも効果がない場合、国連は国連安保理の決議により、国連平和維持軍(PKO)を派遣することになるが、それでも「廃棄」の確証はない。
それでは国際的なメッセージは非常に弱いものになり、禁止された武器に対する規制も非常に弱いものになる。
また、何をするにも必要となる「国連安保理の決議」が、またアメリカとロシア・中国の利害が対立して、重要な問題では「決議」はほとんど不可能。
だから、アメリカは「単独主義」と言われる独自の行動をとる。
しかし「9.11」以来、アメリカの一連の「単独主義」はほとんど失敗。
「9.11はアルカイダ、ビンラディンが仕組んだ」「アフガニスタンがビンラディンをかくまっている」との口実でアフガニスタンを攻撃、さらには「イラクのフセインは大量破壊兵器を保持している明確な証拠がある」との口実でイラクを攻撃した。しかしいずれも証拠はなく、結果としてアフガニスタン、イラクは国家として大きな損害を受け、多くの死者を出した。その復興は現在も多難である。いま、全世界は「あれはいったい何だったのか」という強い懸念と、強い不信感を持っている。アメリカ国民すら、大きな経済的負担と米兵の犠牲について強い不満と不信感を持っている。
それが今、同じドラマが再現しようとしているのだ。
 
・国連調査団は確証を得られなかった
・シリアのアサド大統領は、明確に化学兵器の使用を否定
・同盟国イギリスは、議会が参戦を否決
・ロシア、中国は、明確に反対を表明
・アメリカ議会も可決の見通しは薄い
 
こういう情勢だが、オバマ大統領は、一旦言い出した手前、「ああ、そうですか。ではやめましょう」とは言えない。
なぜなら、もしここで方向を変えると、今まで続けてきたアメリカの「単独主義」、アメリカの「世界支配」を大きく変えることになるからだ。
本来ならば国連による世界平和の維持を期待したいが、現状では大国の利害の対立で、何もできない状態が続いている。
 
・サリンを使ったのは政府側か、反政府側か
・仮に、アメリカが攻撃に出た場合、シリア市民の犠牲は?
・仮に、攻撃で化学兵器や放射性物質が飛散すれば?
オバマ大統領は、いま正念場を迎えている。
 
「参戦」「支持」「理解」「態度保留」「理解しない」「支持しない」「反対」
国際的には様々なスタンスがあるが、多くの国が「支持しない」「反対」の中、
日本は「理解する」を選んだが、これには大きな危険がある。
 
日本はいま「憲法改正」「集団的自衛権」「日米軍事同盟の強化」などを議論している場合ではない。日本に求められるのは、それとは真逆の方向なのだ。
国民が求めているのは、
★平和憲法を守り、アメリカの戦争に巻き込まれないようにすること
★日米安保条約を段階的に破棄し、平和国家になること
なのだ。