【巻頭言】東京オリンピック再び
9月8日朝、私は講演のために前日から滞在していた福島県で、
「東京オリンピック招致決定!」のニュースを知った。
正直「ああ!・・・」いろんな思いがあった。
前回の東京オリンピックは49年前、私は当時高校2年生だった。
それを見るために、我が家にも初めてカラーテレビが来た。
開会日に間に合わせて、東京-大阪間に初めて新幹線が開通した。
東京は大きく変わった。景気は浮揚した。社会は大きく変わった。
今回も、「あの夢をもう一度!」と多くの人が東京招致を願い、日本の閉塞感を打開してくれるカンフル剤として、多くの人が期待していただろう。
しかし、東京招致は危険なアベノミクスを後押し、多くの人々が現実から目をそらしてしまうことを強く心配している人もまた多いことも知っていた。
オリンピックは世界の祭典。確かに、世界に希望を与えてくれる。
特に開催地は巨大な公共事業や海外からの訪問者が増えて、社会全体が活気を帯び、景気も上向くだろう。
政策も国家予算も、みんなの関心もお祭り騒ぎの方に向けられるだろう。
★IOC総会、直前のスピーチの印象
日本のプレゼンをすべて聞いたが、私は、高円宮妃殿下、佐藤真海選手、滝川クリステルさんの言葉に打たれた。自然体だったから。
日本勢は元気だった。勉強不足のIOC委員でも、これを聞いただけでも日本に投票するだろう。結果は順当だと思う。ただ一点を除けば。
★安倍総理の発言
安倍総理は終始にこやかに、なめらかに、東京の優位性と安全性をうたった。
事実を知らない人には心地よい発言だったかもしれない。
最後の最後にIOC会長が、安倍総理に質問した。
「福島原発の汚染水の問題について、その安全の根拠は何か」と。
それに対して安倍総理は重大なウソを宣言したのだ。
・福島原発は完全にコントロールされている
・港湾内0.3平方キロ以内に完全にブロックされている
・モニタリングの結果安全は保障されている
・東京は絶対に安全です。保証します
私は耳を疑った。初耳のことばかりだ。
初耳というより、明らかに事実に反している。
・汚染水は港湾を超えて広く広がっているし、
・遠方でとれた魚で高放射線量が確認されているし、
・沖合20 Km以内には40ヵ所ものホットスポットが見つかっている
一国の総理が、事実と全く違うことを世界が注目する中で宣言したのだ。
辺境の独裁国ならいざ知らず、世界の主要国の総理が。
この話題に多少でも関心がある人は全員(数千万人は)驚いただろう。
「おいおい!!気は確かか??事実でないことは明白!!IOC事務局はすでに、それが事実でないことを報告しているだろう!!」
直後のニュースは、「おめでとう!」「決定打は安倍総理の安全宣言!」ばかりだったが、その後は「あの発言はいったい何だったのか」という意見、疑問、不信の声が出始めた。この問題が発覚すると、IOCは「東京は無効、失格」という前代未聞の事態になる可能性もある。
そうならないために安倍総理は、ブエノスアイレスでの直後の記者会見で「原発比率を下げる。そのためにこの3年は再生可能エネルギーの開発に全力で取り組む」という、これまた初耳の発言をした。
こんな行き当たりばったりの発言には、電力業界も与党議員もびっくり!
しかし、一国の総理が世界に宣言したのだ。当然、国民にも約束したのだ。
さあ、「脱原発」を願う大半の国民も、大いに期待しようではないか。
このウソが「ウソから出たマコト」になるよう声を上げようではないか。
「総理、モニタリングを確認してください!」
「総理、完全にブロックしてください!」
「総理、安全を保証してください!」