巻頭言

【巻頭言】特定秘密保護法案

現在、秘密保護法案が審議されているが、この『地球村通信』が届くころには、

与党(絶対多数)の賛成で可決しているかもしれない。

 

一見、長い難しそうなタイトルですが、(自分たちに関係ない)ことではなく、

日本が今おかしな方向に進んでいることと同じ、大きな問題なのです。

まず、大筋を理解してください。

 

★大筋

国家秘密は、もちろん守らなければならないし、当然日本にも保護法があります。

だから、いまさらなぜ、新法案を作らねばならないのか、ということなのです。

 

★現状の問題点 1

尖閣諸島問題で中国漁船と海上保安庁の巡視船との衝突の動画が、内部告発のような形でYouTubeにアップされた。その他にも、自衛隊の情報などがリークした。

前者については、リークした本人(一色正春氏、その後辞職)は、「この動画は内部では自由に見られたもので秘密扱いではなかった。内部告発ではない。事実を多くの人に知らせたかった」と述べた。

 

※私が動画を見た感想

私たちが見た動画は、見たかったものであり、知りたかったことだった。

中国船が故意にぶつかってきたのか、混乱の中での衝突事故なのかは、判断は難しい。なぜなら船は、乗っている側には、自分が止まって見えるから、お互いに「相手がぶつかってきた」ように見える。おまけに船は、自動車のようにすぐに方向を変えられないし、すぐに止まれない。自動車でもカーチェイスの事故では、どちらがどちらにぶつかったのか、後からの判断は難しい。

 

★現状の問題点 2

 日本ではこの5年だけでも、5万5千件の情報が秘密指定され、3万4千件の秘密情報が廃棄されている。秘密情報が保存されず、公開もされないまま廃棄されるということは、後になって当時の政治を検証できないのだから証拠隠滅と同じで、重大問題だ。

日米間では多くの密約が結ばれ、国会で追及されても日本政府が「無い」で通してきた密約が、アメリカ側から公表されたことも少なくない。

 


なぜ、こういうことが起こるかといえば、アメリカには国家情報に公開義務があり、一定の期間後(原則10年後)には公開することになっているからだ。

 

 

日本にはそれが無い、ということが大きな問題なのだ。

日本では情報を求めても、墨塗りで真っ黒な紙が提出されるということが多々ある。

 

つまり現状では大きな問題が2つあるが、秘密情報が漏れることの解決策は、秘密の取扱い、職場モラルの改善であり、新法を作ることや罰則を厳しくすることではない。

秘密情報を廃棄している問題には、一定期間後の公開を義務付けることである。

以上の大筋を理解していただいた上で、具体的に説明します。

 

【現在の法律】

・国家公務員法

 公務員が知り得た秘密を守るよう義務付け、違反者には1年以下の懲役

・2001年 911事件後、「自衛隊法」改正で、「防衛秘密」漏洩には5年以下の懲役

・さらに「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」で米国から供与された装備等に関する事項では、10年以下の懲役等、未遂犯・過失犯も処罰

・1985年 自民党政権が国家秘密法案(最高刑は死刑)を提案

 世論の大反対で廃案になった。

 

【特定秘密保護法案】

・今回の法案は、1985年に廃案となった法案の復活と言われている

・公開に関する規定がない

 アメリカでは、非公開秘密も原則10年以内に公開とされているが、

 日本の特定秘密保護法案には公開に関する規定はなく、

 公開されないまま廃棄される可能性もある

 

★報道取材も、情報漏えい、「そそのかし」とみなされれば処罰の対象。

★いかなる漏洩も懲役最大10年と他の先進国より厳しい。

★法律の適用範囲は、公務員だけでなく一般市民にも及ぶ可能性がある。

★国民の知る権利を大きく妨げる可能性が大きい。

★この法案によって、原発に関する情報も『テロの攻撃対象だから非公開』となるなど、 国民の知る権利が大きく制限される可能性が大きい。

この法案についての「パブリックコメント」(市民が意見を述べる機会)が9月に行われたが、公開時期が15日間と短く、国民に広く周知されたとはいえない状況。

それでも約9万件の意見が寄せられ、反対意見は約8割、賛成は1割程度だった。

 

『地球村』としては、法案作成自体に反対であり、秘密の取り扱いを強化することと同時に、情報公開を決めなければならないと考えて、その意見を伝え続けます。