スペシャル対談

2013年12月 ハートネットふくしま理事長 吉田公男さん

1995年の阪神淡路大震災をきっかけにして、被災地へのボラ ンティア派遣事業を行うNPOとして発足したハートネットふく しま。2011年3月11日からは地元福島県で、仮設住宅での炊き出しやお茶会の開催など、被災者と共に泣き共に笑う支援を続けています。


毎日3000食を避難所へ。

高木 こんにちは。福島県における支援活動のキーマンとして吉田さんを紹介してくださる方がいて、今日はこうして会いに来ました。

吉田 わざわざありがとうございます。

高木 まずは、吉田さんの活動を教えていただけますか。

吉田 現在は、郡山を中心に県内20数カ所の仮設住宅を回って炊き出しを行っています。震災直

後の4月には、70人くらいのボランティアが集まっていて、宮城県の丸森町から福島県内一円の
避難所、100カ所以上に炊き出しを行っていました。一番多い頃で、一日3000食作っていました。

高木 それはすごいですね。

吉田 幸い、ここの事務所は水道が止まらなかったので、水をポリタンクに入れて持っていって、現
地で大鍋を使って炊き出しをして。メンバーのうち20人くらいは、ここに残って翌日分の野菜切りをして。

作っては配り、作っては配りを、毎日やっていました。

高木 ところで、資金はどうされていましたか。

吉田 災害直後は、団体、企業、個人の方からの支援がありましたので、なんとかやっていくことができました。

 
減らない仮設住宅、帰れない人々。  
 
高木 仮設住宅は、今はどうなっているのですか。
吉田 現状は、食料が足りないということはないのですが、私たちは炊き出しを続けています。
高木 それはまた、どうして?

吉田 
炊き出しはコミュニケーションツールなんです。日常的に顔を出して「炊き出しのおっちゃん、
また来た」と思ってもらえることが大事だと思うんです。田舎って、隣の家に行くのにも、
ちょっとお茶菓子持っていって話をしてくる文化があるんです。私たちが炊き出しを通じて日常的
に傍にいる、必ず顔を出す、「一人じゃないんだ」と思ってもらえればと思います。
高木 そうかあ! いいですね! そういえば、私が支援してる別の団体は「お茶会」をしています。
吉田 あ、お茶会は、うちもやっていますよ。集会所にコーヒーメーカーを持っていって、お茶菓
子を出して、私たちはあんまり話に加わらずに、被災者同士が話をできる雰囲気を作るようにしています。
高木 そうでしたか!どんなペースで?
吉田 お茶会は週に2回、その合間に炊き出し。仮設住宅は20数カ所ですから、毎日行っても、一つの仮設には月に1回しか行けないんです。
 
高木 そうなんですね! ところで、仮設住宅というのは、この2年半でかなり減ってきているのですよね。
吉田 いや、それが福島県ではそんなに減っていないんです。そもそも自宅に帰れないので。
川内村というところは帰村宣言をして、週に4日帰れば帰村という数え方をしているのですが、
やっぱりこれから何が起こるかわかりませんから、不安で仮設住宅の鍵を返す訳にいかないんです。
何かあった時には、避難所ではなく仮設住宅に入りたいですから。

高木 
なるほど、そういう事情では仮設住宅は減らないですね。仮設住宅には何人位いるのですか。
吉田 平均すると1ヵ所200人位ですかね。多いところは600人というところもあります。一番小さくても10数世帯です。
高木 それだけの数の炊き出しは、食材だけでも大変でしょう。
吉田 震災後1年半くらいは、全国の方たちが、肉と野菜を送ってきてくれていたのですが、
ここまで来るとだんだん支援も少なくなってきて、ストックしてあった支援物資のツナ缶を肉代わりにしたり、別途購入したりしています。
高木 なるほど。それでは、私たち『地球村』が協力できる部分がありそうですね。

周りで一緒におろおろ…。
 
高木 ところで、お茶会は、『傾聴』という意味も込めてなさっているんですか。
吉田 うーん、そこはですね、心のケアは、本当のプロの人がやればいいと思っているんです。
私たちが一番得意なことは、周りでおろおろすることなんです。
「困った」と言われたら「困ったねー」と言って、一緒におろおろ…それだけです。

高木 
そうかあ・・・それはすばらしい・・・。カウンセリングも本来はそうなんです。
「ああしろ、こうしろ」ではなく、話を聴いて寄り添うだけだからね・・・

吉田 
プロの人たちはそれを「心のケア」とか何とか言うんでしょうけれど、私たちは「おろおろする」って
言っています。とにかく、同じ人間が常に一緒になって周りでおろおろしていれば、たぶんプロの人たちが、
年に何回か来てカウンセリングするよりも効果があるんじゃないかって私は思っています。
ボランティアって、効率ではないんですよ。田舎の人間は、外から来た人に対して本当に心を許すには
時間がかかるんです。

高木 
そうでしょうね。「いかがですか?」って標準語で訊かれても答えられないかもしれない。

吉田 
「どうだい? 大変だばい」って、おっちゃんがいつもの地元の言葉で話すことが大事で、
カウンセリングもしない、傾聴もしない、だけど何年か経った時に、「あいつは俺たちの味方だ」と
思ってもらえる、気がつくと親戚みたいになっている、ボランティアの一番の強みは、そういうことが
できることなんだと思うんです。プロの人はそこまで時間をかけられないけれど、
そこができることが私たちの仕事だと思います。

高木 
う~ん・・・なんだか泣けてくるなあ・・・吉田さん、感動した!『地球村』として、炊き出しやお茶会の
材料費や移動の燃料費を応援すれば、この活動は楽になりますか?

吉田 
それは助かります。もっとおろおろできます。

高木 
りょうかい!では支援を検討します!今日はいい出会いをさせてもらいました。

◆NPO法人ハートネットふくしま
http://park12.wakwak.com/~heart/