巻頭言

【巻頭言】日本はどこへ行くのか

「国家安全保障会議」の法案は、衆議院を通過し参議院での審議が始まっている。
「特定秘密保護法案」も衆議院で審議が行われている。
この『地球村通信』が届くころには、両方案が成立しているかもしれない。
政府はいま、間違った方向、とても危険な方向に進もうとしている。
『地球村通信』11月号でも書いたが、改めて全体像を書きます。


★「国家安全保障会議」とは
外交問題や国防問題など、国の大きな方向性を決めるときに迅速な決定を必要とする場合がある。そのためアメリカやイギリス、ロシアなどの国では、「国家安全保障会議」という機関を設けている。
日本にも、総理大臣を議長とする「安全保障会議」があるが、形骸化している。
これを強化しようと2006年の第一次安倍内閣でも「国家安全保障会議」法案が作られたが、民主党など野党の反対により廃案となった。
これまでの「安全保障会議」は首相など9人の大臣で構成されていたが、今回の法案では、首相、官房長官、外務大臣、防衛大臣だけで常設化、中長期戦略を決定しようとしている。「安全保障会議」なるものが必要であることは理解できるが、いま、この時期に、この形で、「特定秘密保護法(案)」とセットで作ることには、大きな問題がある。

●問題点 1
防衛上の重要戦略が、4人の大臣だけで決定されるので、総理の独善的、独裁的色彩が濃くなる。総理の権限が大きくなり、アメリカの大統領のようになる。国防問題は「特定秘密」に指定され、国民には知らされないまま独善的に進められる可能性が大きい。

●問題点 2
国家安全保障局を設置し、常時各省庁から情報収集を行う。情報が集約管理されるが、政策目的に沿った情報が恣意的に集められたり、各省庁からの報告が片寄ったりすることで、政府が間違った判断をする可能性が高い。

●問題点 3
国会がチェックする機能がなく、政府の暴走を食い止めるブレーキがない。
これまで自民党が何度も企てて失敗したことを、再度企てているのだ。

★「特定秘密保護法(案)」
国家機密は、一定のルールで指定され、一定のルールで公表されるべきである。
アメリカでは機密指定の合法性、違法性を第三者機関が審査するが、日本ではチェックする仕組みがない。アメリカでは10年後に大部分が公表されるが、日本では大半が廃棄される。公表することが前提となっていない。廃棄されると検証することもできない。
法案には、チェックの仕組みと、情報公開の義務付けが不可欠だ。

★日本の向かう方向
安倍首相がいま、「積極的平和主義」を掲げてこの2つの法案を強行成立させようとしているのは、アメリカとの軍事協力が目的であり、その目標は北朝鮮や中国だ。
憲法上は「軍隊持たない国」であるはずの日本は、年間5兆円(世界第5位)の国防予算(軍事予算)をもつ軍事大国だ。さらに「集団的自衛権」なども視野に、日米軍事協定を強化すると同時に軍事予算の増強も目指している。
「積極的平和」と言いながら、日本が歩んできた平和への道とは真逆の方向へ向かおうとしている。

★だから今、コスタリカへ
世界には平和憲法を持ち、軍隊を廃止している国がある。
その1つが中米の国、コスタリカ。

・1949年に常備軍としての軍隊を憲法で廃止し、60年以上軍隊は設置されていない
・軍事予算を教育予算に回し、『兵士の数だけ教師を』と教育国家へ転換した
・「積極的平和外交」を行い、中米和平への貢献から、1987年に大統領がノーベル平和賞を受賞
・国会議員の選挙期間は3ヵ月。それだけの期間をかけて政策論争を行う。国民の7割以上が投票に行く
・小学生の子どもたちも模擬投票を行う
・最高裁判所には国籍・年齢を問わず、24時間365日、憲法違反や人権侵害に関して訴えることができる法廷があり、年間処理件数1万件!
※イラク戦争後、パチェコ前大統領のアメリカ支持に対して大学生などから訴訟が起こり、大統領と政府が敗訴したケースは有名。

日本に欠けているのは、「政治に対する意識」、「平和に対する意識・努力」。
これを実践している国コスタリカへ、来年の1月に、『地球村』の仲間(特別会員)と一緒に視察に行きます。どうやって軍隊を捨てたのか、どうやって「軍隊なき平和国家」を50年以上も保てたのか、などをいっぱい見て、いっぱい体験してきます。
2月以降、そのことをいっぱい話したい。いっぱい伝えたい。
あなたの街で講演会を主催してください。
あなたの近くで講演会があれば、ぜひ参加してください。