スペシャル対談

2014年3月 コスタリカ研究家 足立力也さん

 

ブータン、キューバに続く『地球村』ツアーの第3弾はコスタリカでした。戦争や内戦が続く中米において、「軍隊がないことが真の平和」だと考え1949年に軍隊を廃止。平和、人権、環境、民主主義の先進国でもあります。足立さんの的確なガイドで旅は順調に進み、最終日の夜、サン・ホセのホテルで対談を行いました。

 

 

 

「そこそこがいい」という価値観。

高木 今回のツアーは、足立さんのおかげで充実したものになりました。ありがとうございます。まずは、そもそもどういうきっかけで、あなたがコスタリカに興味を持つようになったのかを聞きたいのですが。

足立 僕がコスタリカと真剣に向き合おうと思ったのは、コスタリカに初めて訪れた1992年のことです。その時国会に入ることができて、対応してくれたのが大統領秘書官の女性だったんです。色々なお話を聞かせていただきました。中でも一番驚いたのは、自分の国の経済政策を語るのに、「何でもそこそこがいいのよ」と言ったことなんです。普通、政府の人とか政治家が経済政策を語るときには、「必ず成長しなければならない」という前提に、がんじがらめになっていると思うんです。ところが政府の高官が、「経済成長しなくてもいい。幸せの形というのは別なところにあるのよ」と言ったことに、ものすごく衝撃を受けたんです。
コスタリカには軍隊が無いとか、環境保護を頑張っているとか、いろんな面があるけれども、むしろ注目すべきなのはこの、「そこそこがいい」という考え方なんじゃないか。そこが根っこにあるから、軍隊もいらないし、医療費もタダだし、人権も環境も守るし、という結果がついてきたんじゃないかと思ったんです。それで、その価値観をもっと詳しく知るために、コスタリカに住むことにしたんです。

高木 92年当時は大学生だったんですか?

足立 カナダのバンクーバーに留学していた大学生で、冬休みを利用してコスタリカに来たんです。そこからコスタリカのことを勉強して、大学を卒業後に就職をして、2年目の夏のボーナス額が確定したところで辞表を出して、コスタリカに渡りました。

高木 すごい行動力ですね。

足立 他の国のことを知りたければ、現地に住まなければ解らないということを、カナダの留学時代に学んでいたので、コスタリカにもそうした感覚で住むことにしたんです。

 

「プラビダ」なコスタリカ人。

高木 住んでみて、どうでしたか。

足立 この国で一番多く使われる言葉は、「プラビダ」と言います。「プラ」はピュア、「ビダ」はライフで、「純粋で素朴な人生」という意味なんですが、この言葉はコスタリカの多くのシーンで使われます。例えば、出会ったときの「やあ、元気?」、さらには「元気です」という返答にも使われます。「じゃあね」という別れのあいさつやありがとうの代わりにも、サッカーの試合でゴールを決めた時にも使われる。つまりは何かしらいいことがあったときの総称が「プラビダ」で、「純粋で素朴な人生がいいことなんだ」という価値観をコスタリカ人は持っているのだということが、住んでみてだんだん解ってきました。「プラビダ」の価値観は、「そこそこがいいのよ」と言った大統領秘書官の言葉ともつながっていました。

高木 なるほど。「素朴な人生」を大切にしていれば、「モア・アンド・モア」(経済成長)は望まなくなりますね。

足立 2年後に、コスタリカに関する映画を作りました。『軍隊をすてた国』というタイトルで2002年リリース。撮影は2001年6~8月に済ませて、9月から東京のホテルにカンヅメで編集作業を行っていたのですが、ちょうどその時に起こったのが「9.11」だったんです。平和問題がクローズアップされるようになったタイミングで映画がリリースされたので、多くの方に観ていただきました。その後、スピンオフの形で『平和をつくる教育』という本を出させていただきました。これは小学校6年生の国語の教科書にも載っています。その本もすごく売れて、そういう活動が中村敦夫さん(2003年当時・参議院議員)の耳に入って、「みどりの会議から立候補しませんか」と声をかけていただきました。

 

平和産業で平和を創ろう!

高木 そこから、政治の世界にも関わるようになったんですね。

足立 それまでも、平和や環境の市民活動に関わっていく中で、政治の世界からお誘いを受けたことがありましたが、「何かがちょっと違う」と感じていました。しかし、『みどりの会議』が参院選に10人の候補者を立てることになって、話を聞いてみたら、彼らが掲げている主張の一番前面にあったことは、「脱経済成長」だったんです。経済成長のガツガツした呪縛から逃れることが、僕が政治の中でやらなくちゃいけないことだったんだ、これがコスタリカの「そこそこがいい」なんだと、それまでの気付きがピタっと一致して、「そういうことなら、喜んでやらせていただきます」と引き受けました。

高木 現在は、『緑の党』の運営委員も務めている訳ですが、これからの抱負を教えてください。

足立 「社会を変えていく」ために、僕の中には3つの分野があります。一つ目は『緑の党』を通じた政治活動、二つ目は市民活動、三つ目が経済活動です。中でも経済活動の分野が一番弱いのですが、平和産業というものを創らなければならないと考えています。なぜなら、「軍需産業があるから戦争がなくならない」という人たちがいます。軍需産業が儲かるために、戦争がどんどん行われている現実があることは間違いない。だとしたら「その逆も真なりではないですか」と問いたかったのです。平和産業があれば平和が増える。僕はコスタリカ研究家として、平和の話を皆さんに伝えることで、食い扶持を稼ぐということをします。自分自身が、「平和」というキーワードでご飯が食べられるようになる、そういう経済活動を進めていくことで、実は世界には平和産業はこれだけの市場規模があって、これだけの力があるんだってことを、目に見える形にしたいんです。平和産業で人々は生きていけるのだという証明を僕はしたい。そう強く思っています。

高木 それは面白い発想だね。それなら『地球村』も仲間に入れてもらいたいですね。平和を創るために連帯し、情報を共有していきましょう。これからもよろしく。

◆足立力也へいわ本舗
http://www.adachirikiya.com/
『丸腰国家 ~軍隊を放棄したコスタリカ・60年の平和戦略~』
『平和ってなんだろう ―「軍隊をすてた国」コスタリカから考える』
※「丸腰国家」はコスタリカの事実関係の本、「平和ってなんだろう」はコスタリカ人の内面を書いた本です。