巻頭言

【巻頭言】コスタリカ平和WSツアー

『地球村』の仲間11名で、コスタリカ平和WSツアーに行ってきた。
ブータン、キューバに続いてだったので、目的も見るべきポイントも絞り、実に充実したWSだった。

1.エコツアー
もともと豊かな熱帯林の国だったが、植民地政策、コーヒーの栽培などで15%にまで破壊された熱帯林を25%まで修復、国立公園として保全している。
国策としてエコツアーを推進、宝石箱のような美しい生態系は大きな観光収入に。当日は雨だったので全員カッパを着て、上り下りの2時間コースを完歩した。
チョウのマニアには憧れのモルフォチョウ、誰もが感動する美しい原色のハチドリ、インコ、オオハシ、アカメアマガエル、ヤドクガエル、ナマケモノ、リス、イグアナ、カメレオン、ワニを、すぐ近くで見ることができた!
巨大な原生林のアマゾンと違い、コンパクトで明るく爽やかな、人が再生した熱帯林を楽しんだ。数十メートルの高さにかかる吊り橋の体験は凄かった!(@_@;)

2.軍隊を廃止
中米(グアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマの7ヵ国)は、キューバと同様にスペイン支配のあと独立したが、アメリカの介入や利権で長く紛争が続いた。
1948年の内戦でホセ・フィゲーレスが勝利、1949年に平和憲法制定、軍隊を廃止、 「非武装中立 平和主義」を宣言した。隣国からの侵略もあったが、武力によらない話し合いや工夫で危機を克服。
1986年にはアリアス大統領は中米和平に貢献し、
1987年 にノーベル平和賞を受賞。
現在まで65年間、戦争の無い平和を維持している。

3.積極的平和主義
いま安倍総理がにわかに「積極的平和主義」なる言葉を連呼し始めたが、「平和」とは何かをしっかり学ぶことができた。
平和には「消極的平和」と「積極的平和」があり、
「消極的平和」は、「私は紛争には干渉しないから、私にも干渉しないでね」というもので、スイスがこれに該当する。スイスは軍隊を持っている。
「積極的平和」は、「私は紛争には和平に向けて積極的に介入します」というもので、コスタリカはこれに該当する。そして、コスタリカは非武装中立。
なぜなら、紛争に介入する際、武器を持って介入するなら、それは武力鎮圧、武力介入であって、真の和平にはならない。また、レフェリーが一方と通じているなら公平な仲裁はできない。だから平和学では「積極的平和は、非武装中立が絶対条件」だと定義しているし、コスタリカはこれを遵守している。
しかし日本は、アメリカと軍事同盟を結び、かつ相当な武力を保有している訳だから、「積極的平和の絶対条件」を満たしていない。
安倍総理の「積極的平和主義」は根本的に間違っている。
このことも、今回の平和WSの大きな学びであった。

4.最高裁判所
日本では最高裁判所というのは、地方裁判所、高等裁判所で決着しない問題を裁く裁判所であり、なかなかそこまで辿りつけない。また最初の地方裁判所でも一般人が簡単に訴えられるものではない。弁護士を雇い、かなりの準備とお金を用意しないといけない。コスタリカはすべてが大きく違う。
最高裁判所は、人権や憲法問題を扱う機関であり、誰もが訴えることができる。
子供でも外国人でも、お金が無くても、弁護士を雇えなくても、人権や憲法違反と思われる問題なら直接訴えることができる。
典型的な例として、
・2003年3月コスタリカ大統領がアメリカのイラク戦争を支持したことに対して、19歳の学生が違憲訴訟し、勝訴。大統領は戦争支持を撤回。
・小学校の校庭が駐車場になったことに対して、小学生が遊ぶ権利を侵害したとして訴え、勝訴。校長は駐車場を撤去した。
・子どもたちの遊ぶサッカーボールが池に落ちることに対して、8歳の子供が危険を訴え、勝訴。国は池に安全柵を設置した。
なぜ、こういうことが可能なのか。実は小学校1年で、最初に教えることは人権、安全、平和なのだ。そして自分の考えを持ち、自分の意見を述べることを学ぶのだ。これには、11名全員がショックと感動! まさにこれこそ民主主義だ!

5.刑務所
今回、私たちの目的を伝えてガイドを頼んだ足立力也さん(緑の党の運営委員)は、とてもコスタリカに詳しい人で、意外にも刑務所の視察を薦めてくれた。
その意味は行ってみて、よくわかった。
日本の刑務所は、受刑者は鉄格子と手錠や鎖で自由を奪われ、軍隊のような号令で、窮屈な生活と労働を強制される。「臭い飯を食わされる」とも言われる。

しかし、コスタリカの刑務所を訪問して、ショックと感動!・・・
まず、高い塀がない!鉄格子や手錠や鎖、囚人服もない!
受刑者は、まるで会社の寮生活のような感じで自由に生活している。
もちろん厳しい号令や命令もない。
なぜ?
「犯罪は、本来受けられる教育、人権、社会性を受けられずに育ったことや貧困が原因」、「罰するよりも、与えられなかったものを与えることが大切」、「自分の人権や尊厳を知ることが、他人の人権や尊厳を尊重することにつながる」という考えが基本。
教育が受けられなかった人には教育を、人権や尊厳がわからない人には癒やしを、とても手厚い教育プログラムがあった。それにあたる教師や指導員は多数のボランティア(NGO)の人たちだった。その何割かは元受刑者だという。
その間、自分たちで炊事したり、調理したり、生活は自己管理。
なんと調理場にはナイフも包丁もある。家族が差し入れた食糧を入れる冷蔵庫もある。
その次には、職業訓練というより、もっと自由なプログラムがあり、自分の希望で絵画、木工、彫刻、農作業などを学ぶというか、楽しむこともできる。
それも、外から専門家やボランティアがやってきて無料で教えてくれるのだ。
私たちは、受刑者と自由に交流、彼らの作品を見せてもらい、そのレベルの高さにビックリ! そこも、もちろんナイフや彫刻刀など、日本では考えられない工具が自由に使えるのだ! 彼らは普通の市民、穏やかな趣味の人のようだった!
あ、そうそう、刑務所というよりは、その社員寮には、畑もあり、花壇もあり、運動場もあり、なんと「愛の部屋」まであるのだ! 愛の部屋とは、配偶者や恋人が訪問した時は、一定の時間はプライベートな時間がもてる部屋なのだ!
「そんなに快適な刑務所だったらシャバよりもいいから、すぐに罪を犯して舞い戻ってくるのでは?」と思えば、再犯率はなんと日本の半分以下。
日本の再犯率は50%、コスタリカは20%。
(最も再犯率が低いのはノルウェイ16%。ノルウェイの刑務所は離島の森の中にあり、コスタリカ以上に自主管理の進んだ、快適なロッジのような施設だ)
更に驚いたのは、受刑者は10年経てば前科が消える。
コスタリカが死刑を廃止したのは1882年、世界的にも非常に早い決定だ。
刑務所は、この国の人権の考え方を象徴する施設だった。

6.まとめ
紙面の関係で、訪問先の説明はここまでとする。
単純に比較できないが、私は実際に訪れた数十ヵ国の中で、おすすめはランキングは、1位キューバ、2位コスタリカ、3位ブータンだ。
キューバは社会主義なので、国の理想が実現し、経済侵略の危険が低い。
しかし、コスタリカは資本主義でありながら、ほぼ国の理想を実現している。
なぜ、それができるかといえば、
・1948年、ホセ・フィゲーレスが平和憲法を制定し、軍隊を廃止し、それと同時に「兵士の数と同じ数の教師を!」と、教育国家にしたこと。
・国民500万人と小さな国であったこと。
・選挙制度が素晴らしいこと。
・国民の政治意識が高いこと。
・民主主義が実行されていること。

お伝えしたいことは、他にもたくさんあるが、いま、そのことを冊子として書き進めています。今年は、『平和』についてたくさん講演をしたい。
どうぞ、勇気を持って、お申し込み、ご相談ください。
            連絡は講演担当まで。(樫山 koen@chikyumura.org)
            TEL 06-6311-0309 FAX 06-6311-0321