スペシャル対談

2014年4月 生駒市長 山下真さん

生駒市は奈良県の北西部に位置し、大阪市や奈良市中心部に30分圏内という交通の利便性や快適

な環境を背景に、住宅都市として発展してきました。電力の自給自足にも乗り出し、住宅都市としては、初の環境モデル都市に選定されました。山下市長のめざす市政とは・・・。

 

都市再生機構の後処理問題。

高木 お久しぶりです。2010年に対談したときは2期目でしたね。今は3期目ですか?
山下 はい、3期目です。1月26日に選挙が終わったばかりです。
高木 選挙はほぼ無風で?
山下 それに近い状態でした。3期目なので、大体の懸案事項がわかってきて、仕事の要領もわかり、よりよく動けるようになったという感じです。いまだに市議会では少数与党ですので、重要な議案を通すのは大変ですが。
高木 まあ、それも緊張感があっていいのではありませんか。
山下 そうですね。確かに緊張感はあります。
高木 前回の対談では「高山第2工区開発計画」が話題になっていましたが、その後どうなりましたか。
山下 都市再生機構(UR)が広大な面積(288 ha )の土地を買ってニュータウンを作るプランだったのですが、それが中止になり、行政としても土地の活用方法を模索してきました。奈良県から、大学と福祉施設、工場用地にという話があったのですが、途中で県が降りてしまい、現在はリニア新幹線の中間駅の候補地として名乗りを上げている状況です。
高木 えっ?リニア新幹線が奈良を通るのですか。
山下 奈良県を通ることは昭和40年代の計画から決まっていることですが、京都市などは京都駅の地下にリニア駅を、と求めています。ただ、そうなるとルートが直線でなくなり、莫大な費用もかかることから、JR東海は一蹴しています。地上駅を作るなら、未利用地が十分にあり、開発も容易なこの場所が適しているのではという誘致をしています。

 

環境モデル都市に認定。

高木 市長として力を入れている政策はどの辺りですか。特に環境や平和の分野では。

山下 まず、地球温暖化対策にはとりわけ力を入れてきたつもりです。国は温暖化対策を後退させていますが、脱原発と温暖化対策は両立させていかなければならないと思っています。そんな中で行政としては、省エネを率先してやることはもちろん、市民の省エネ努力をサポートすることや、再生可能エネルギーの普及拡大に力を入れています。例えば太陽光発電設置、LED照明や省エネタイプのエアコン・冷蔵庫への買い替え、住宅改修、燃料電池エネファーム設置などへの補助ですね。
あとは自立分散型の電力供給体制にも取り組んでいます。省エネと再生可能エネルギーの普及には、自治体レベルでも、民間や市民のサイドでもできることがありますので、自治体が率先してやっていきたいと考えています。
高木 それは頼もしい。具体的にはどのような?
山下 浄水場で小水力発電を始めました。県営水道からの送水を利用して、減圧弁の代わりに水車で減圧し、発電機を回しています。
高木 なるほど。それは収入にもなるでしょう?
山下 はい。ただし自家使用せず、全部売電しています。何しろ24時間安定して発電しているので、20年間で費用などを引いても8000万円くらい利益が出る計算です。固定価格買い取り制度(FIT)を使った浄水場発電システムは、日本でも初めての試みです。
高木 なるほど。いいですね。元々ある余剰パワーを利用するのですからね。
山下 そうなんです。実は、国の「環境モデル都市」というのがありまして、環境で先進的な取り組みをした自治体が選ばれるんですが、先日生駒市が選ばれました。
高木 そうでしたか! よかったですね! そのアピールポイントは何ですか?
山下 ここは、住宅都市としては初めて環境モデル都市に選定されたのですが、行政と民間企業と市民がタイアップして、再生可能エネルギーの普及拡大、特に電力の自給自足を行政が主体となって行っていくこと。また、電力の自由化が行われた場合には、市が電力の小売り業者になることも視野に入れて取り組んでいくことをアピールしました。

 

コミュニケーションを取り戻そう!

高木 平和への取組についてはいかがですか。

山下 「非核・平和都市宣言」は以前からしておりますし、「平和市長会議」にも加わりました。ただ、地方自治体ができる平和行政というと啓発くらいで、安全保障というレベルにはならないんですね。
高木 実は私たちは、今年1月にコスタリカに行って来ました。コスタリカは「軍隊のない国」として有名ですが、まず平和教育が素晴らしかった。「話し合うこと。相手を理解すること。歩み寄ること」だと、子どもの頃から教えるのです。問題は必ず起こる。だから、この「3つの原則」で解決しようというのです。
山下 その「3つの原則」は、日本では低下していると思います。その背景にあるのは、便利快適な世の中になって、お金さえあれば嫌な人と関わり合いにならなくても生きていけるし、煩わしいことを避けてもいけることです。メールや携帯電話で話を済ませてしまうことで、人と関わるコミュニケーションのスキルが失われていきます。このことが、いろいろな社会問題の根源ではないかと思います。
高木 その通りだと思います。この生駒市から、「face to face」の触れ合いを訴えていってはどうでしょう。「ハートフル生駒」として、人とのつながりをアピールしていってはどうですか。
山下 行政は心の内面にまで踏み込めないし、強制はできませんが、そういうメッセージを発信していくのはいいことだと思います。実は、政治と国民の関わり方にも、同じ問題があります。民主主義は議論がベースなんです。でも人間関係が希薄になっているので、話し合いの場がなく、人々がじっくり考えない。そこで民主主義が機能不全に陥っています。
高木 同感です。では生駒市が、民主主義でもモデル都市になる、というのはどうでしょう。
山下 市民が地域に関心を持ち、市にお任せするのではなくて、自分も関わって地域社会をよくする活動に参画する、そんな地域にしたいと思います。私も「話し合う、理解しあう、歩み寄る」、そんな政治を発信していきたい。今日はいいご指導をいただきました。ありがとうございました。
高木 これからも、よろしく。

■生駒市公式WEBサイト http://www.city.ikoma.lg.jp/