【巻頭言】今の日本が心配
	★中国、韓国との関係
	 いまの日本、どうして、こんなに中国と韓国との関係が悪化したのだろう。
	 原因は、慰安婦問題、領土問題だが、それはすべて戦争の問題。
	 戦争が終わってすでに69年。なぜ、今になって、この問題がこれほど波風を立てるのだろう。むしろ10年前、20年前の方が国家関係は良かった。
	 「中国が悪い! 韓国が悪い! 責任は相手にある!」と思っている人もいるかもしれないが、本当はどうだろう。
	 まず、どちらが加害者で、どちらが被害者だっただろう。
	 加害者が「解決済み」と言い、被害者が「解決していない」と言うなら、それは解決したのだろうか。
	 日本も周辺国を侵略、大きな犠牲を出した。迷惑をかけたのは事実。
	 ドイツ(ナチス)も周辺国を侵略、特にユダヤ人虐殺は600万人という空前の規模の大量虐殺を行なった。その犠牲と迷惑は日本とは比較にならない。
	 ドイツと日本が同じと言っているのではない。むしろ日本よりはるかにひどいことをしたドイツは、謝罪と賠償を行ない、その一貫した政治姿勢で周辺国との関係は良好であり、世界からも大きな信頼を得ている、という点を言いたいのだ。
	 ところが日本は、中国、韓国から不満が出る度に、「解決済み」として話し合おうとせず、「村山談話」「河野談話」という形で収めてきた。
	 そもそも「談話」というのは、政治的解決ではない。
	 今になって、「あの談話は不満、見直しをしよう」などの議論も起こる。
	 「談話」などでごまかすのではなく、はっきり話し合い、 「共同宣言」や「賠償条約」など正式な形で解決しなければならないのではないだろうか。
	★自虐とは
	 このような発言をすると、「自虐だ」と責められるかもしれない。
	 日本人が戦争のことで、「あれは侵略戦争だった」、「日本は中国、朝鮮に悪いことをした」などの発言をすると「自虐だ」と非難する人がいるが、反省と自虐とを混同しているのではないだろうか。
	 反省とは、自分のやったことを悪いと認め、謝罪すること、改めること。
	 自虐とは、必要以上に自分を責めることだ。相手が「もういいよ」と言っているのに自分を責め続けることだ。ところが、この問題は、相手が「解決していない」「謝罪せよ。償え」と求めているのに、「解決済み」と取り合わずに、「解決しようよ」「話しあおうよ」と言えば「自虐だ」と非難される。この国はどうなっているのだろう。 日本は、そんな国ではなかったはずだ。
	 日本は礼儀、礼節を尊び、恥を知り、責任をまっとうする国だったはずだ。
	 いま、礼儀、礼節、恥も責任も忘れ果てたのかと残念で仕方がない。
	★戦争を知らない政治家たち
	 いま平和憲法を捨て、日本を戦争の出来る国にしようとしている安倍総理は59歳、それを精一杯支えている石破幹事長は57歳、戦争を知らない世代だ。
	 彼らにこそ、戦争の生き証人の「戦争は絶対にしてはいけない」という悲痛な叫びを聞いてもらいたい。いや、聞かねばならない。
	 知らないということは恐ろしい。
	 アメリカは一度も戦争に負けたことがない。戦争に勝つことの痛みは知っているかもしれないが、戦争に負けることの痛み、苦しみ、屈辱、悲惨さを知らない。だからアメリカは傲慢だ。それはロシアにも中国にも言えるかもしれない。ロシアも中国も国を挙げて戦い、国を挙げて負けたことはなかった。
	 人は、自分が経験したことでないと理解できない。自分が苦労して苦労して、苦しんで苦しみ抜いてこそ、人の苦労が分かるものだ。苦労していない人間は、人の苦労がわからない。苦労を知らない人は、人に助けられるありがたさもわからない。わからないから感謝もない。「有難う」「有難い」という文字の意味もわからない。「ごめん」「御免」という文字の意味もわからない。だから謝罪もない。
	 それが傲慢に見えるのだ。苦労知らずの人は、人としての深みがないし、品格もない。
	 いつまでも「解決した、していない」、「領土問題はある、ない」という水掛け論をしてるわけにはいかない。
	日本が中国と韓国に向き合えないのは、戦後賠償を恐れているからだ。いくら逃げ回っていても解決しないし、より大きなマイナスになっている。
	 ドイツのようにきっちりと向き合い、正式に解決しなければならないのだ。