地球は今

【地球は今…】自然資本、里山資本主義

地球環境や社会問題の根本原因は資本主義です。今回は、それを解決しようとする世界の動きや日本のチャレンジについてまとめました。

(事務局 渡辺裕文) 

【現状の経済の問題点】

現状の経済には、資源や環境の保全と修復のコストや、自然の持つ価値が含まれていない。この結果、環境破壊や資源の枯渇が起こる。
現状の間違ったコストに、環境の保全と修復コストや、自然の価値を含めた正しいコストにするとコストがかなり高くなり、環境破壊や資源の枯渇にブレーキがかかる。

【自然資本】

森林、海、水、大気など自然が有する価値を「自然資本」と呼ぶ。
例:森林が有する価値
CO2の吸収、大気の浄化、雨水を蓄える保水力や水源としての価値、土石崩れを防ぐ、土を作ること、生態系としての価値など様々な価値がある。
私たちは、自然から大きな恩恵(金額では表せない巨額の価値)を受けて生きている。その恩恵は世界全体で年間3300兆円以上(世界のGDPの半分!)と試算。
環境省の資料などから、
・世界の農業生産 400兆円
・世界の昆虫が花粉を媒介する価値 24兆円
・世界の薬草の取引 4兆円

・日本の森林の持つ防災機能、保水機能、70兆円=日本のGDPの1割に相当
・日本の農業生産 8兆円
・日本の漁業生産 1兆円

●世界の取り組み
「自然資本」を金額で表し、むやみに自然を破壊しないようにする取り組みが2012年の国連地球サミット(リオ+20)以降、世界的に始まっている。
⇒国連UNEPや世界銀行が中心となり、自然資本を国や企業の会計に組み込んだり、投融資の基準にしようという取り組みを試みている。
・英国、オーストラリアやカナダなどで国の予算・決算に自然資本を組み込むための試算やツールの開発が始まった
・国債の格付け機関(S&P)は信用評価に自然資本を組み入れる検討を始めた

※日本のように他国の資源に大きく依存している国は、信用が低くなる
⇒ 「永続可能」であるためには、自給自足を目指すことが必要

●企業の取組の成功例:プーマ(スポーツ用品メーカー)

・企業全体で自然資本に対する負荷コストを算出
企業全体で自然破壊を減らす努力をし、企業運営を持続可能に
・(欧州では)靴やTシャツなどの商品も、タグに自然資本へのコストを表示(右写真:プーマ社プレス資料より)
 消費者に環境に配慮した商品を買うよう働きかけ

【里山資本主義】
日本は、江戸時代までは永続可能な循環型社会だった。
自然と共生する村(里山)を基本として自給自足していた。
⇒ 地域での循環型社会を再構築・・・これを「里山資本主義」という

●オーストリア(森林資源を最大限活用している:里山資本主義の手本)
・林業関係が、国の主要な外資獲得手段(年間30~40億ユーロ)
・森林の成長量だけを伐採(利子分だけ)
現在は利子分の7割を使用 ⇒ 100%まで使うことが可能
「森林マイスター(達人)」が管理、伐採し過ぎない
・エネルギー全体の32%が再生可能エネルギー(大部分が水力やバイオマス)
 「脱原発」を憲法に明記、実際に原発はない
 さらに、法律で、原発によって発電された電力も輸入しないよう規制

●岡山県真庭市(森林資源が豊富)
 捨てていた製材クズを活用し、バイオマス発電+燃料(木質ペレット)に
 ⇒ 真庭市のエネルギーの11%を自給

●自然資本の活用で経済の流れを変える! 

・地域の赤字は「エネルギー」と「モノ」
 の購入代金(右グラフ※)
 地元消費で赤字削減! 雇用増加へ
・日本が国外に支払うエネルギー代:20兆円
現状の中央集権のエネルギー政策から、地元の資源を活用するエネルギー政策を行うことで、地域が豊かになり、国の無駄も削減可能。

【未来の為に】
自然に対する価値を見直すことが、世界的にも求められるようになってきています。
「里山資本主義」は、これまでの当たり前を見直し、「永続可能な社会」をめざしています。このことで経済活動は縮小するが、地域は活性化します。「里山資本主義」と同じ視点の考え方が広まることが、これからの日本に必要です。

参考文献:「里山資本主義」(藻谷浩介著、角川書店)
     「ゼロから学ぶ自然資本」(日経エコロジー2013年9月号)