地球は今

【地球は今…】TPPと日本の農産物の関税

TPP(貿易の自由化のために関税を大幅に引き下げること)に関して、大きな話題となっている聖域(農産物5品目)についてまとめた。

(事務局 渡辺裕文)

【関税とは】

輸入品が国産品より極端に安い場合、その差を小さくするための課税。

●税率の種類
・従価税:輸入品の価格に応じてかかる税金。
     同じ商品でも商品の価格が安くなると税金も安くなる。
・従量税:1kgあたり何円というように輸入品の量に応じてかかる税金。
     コメや小麦などはこの税金がかけられる。
・この他、混合税(従価税と従量税の複合)や差額関税(安い商品が一定額以上になるように一定額までかけられる税金)など品目によって様々ある。

 

【輸入品に関税がかけられるようになった経緯】

初めは輸入制限(全く輸入しないか、輸入総量を制限)があった。

1955年  GATT(ガット、関税及び貿易に関する一般協定)に加盟
  輸入制限品(工業品も含めて)492種類(1962年)⇒27種類(1975年)
  例:農産物では、大豆,鶏肉,バナナ,レモン、紅茶、ハムなど関税化。
1986年~ アメリカの提訴で日本の輸入制限がGATT違反とされ、オレンジ果汁や牛肉が関税化。ウルグアイ・ラウンドで、麦、乳製品も関税化。
1995年~ GATTの後継組織WTO(世界貿易機関)が設立。
    数量制限禁止や関税撤廃を基本に貿易自由化を促進する機関。
2000年~ 日本は、輸入制限をしている「重要品目」を守るため、重要品目の取引のない東南アジアの国々を中心に2国間での貿易自由化(FTA)を積極的に推進。しかし、「重要品目」を除外できないアメリカ、オーストラリアなどとはFTAは締結してこなかった。
現在、自民党安倍政権でTPP(環太平洋連携協定)に参加。アメリカを含めた12カ国での貿易自由化が進められている。

 

【聖域(重要5品目)とは】(1)コメ(2)麦(3)牛肉・豚肉(4)乳製品(5)砂糖

●なぜ?
農業政策の失敗で価格が高くなった主要農作物を守るために、高い関税をかけなければならなくなっている。(関税率は2012年農水省資料より)
(1)コメ  :主食 778%(341円/Kg)
(2)麦   :パン、麺類など準主食。小麦 252%(65円/Kg)、大麦 256%(46円/Kg)
(3)牛肉・豚肉:牛肉 38.5%  豚肉 差額課税で482円/Kg以下の豚肉は482円まで課税
(4)乳製品  :脱脂粉乳 218%(35%+466円/Kg)、 バター 360%(35%+1159円/Kg)
(5)砂糖   :沖縄/鹿児島のサトウキビ、北海道の砂糖大根の農家保護 砂糖 328%

●諸外国の関税率との比較

・日本は諸外国に比べて、関税が極端に高いわけではない。
重要5品目など一部高関税の農産物があるため、平均値は高くなっている。
・非課税農産品の割合もアメリカやEUよりもわずかに多い程度。
 国内農業保護のため、これ以上の自由化を進める必要はない。

●食糧の大量輸入が起こる危険
・国家として危険(外国に依存、価格、食糧危機)
 ・安全面の問題(農薬、防腐剤、化学汚染、伝染病)
・輸送エネルギーの無駄
・輸入先の農業用水、土壌の養分(水資源の枯渇、土壌の疲弊)などの
面から大きな問題。
 TPPより国内農業の強化がはるかに重要。
 TPPは、全産業分野への外国企業の参入が激化、医療、金融面でも悪影響が予測されている。
(『地球村通信』2011年11月号、『地球は今』シリーズ参照)
 グリーンコンシューマとして、TPP参加の反対、国内産の保護・強化の意思表示、国内農産品を買うなどの行動が必要。