スペシャル対談

2014年8月 かものはしプロジェクト代表 村田早耶香さん

かものはしプロジェクトは、カンボジアとインドの「子どもが売られる問題」をなくすための活動を、

持続的かつ発展的に実施しているNGOです。

2002年、当時大学3年生で20歳だった村田さんが立ち上げました。

2010年から『地球村』も、人道支援パートナー団体としてサポートを続けています。

 

子どもが売られない世の中を。

高木 こんにちは。対談は2011年1月以来、2度目ですね。前回の対談から3年が経ちますが、活動状況はいかがですか。

村田 訪問ありがとうございます。私たちは、売られる子どもをなくすための活動を続けています。売られる子どもというのはご存知のように、貧しい家庭の子どもが、家族を助けるために働きに出て、だまされて売春宿に入れられるのです。被害者は小さい子で5歳。幼児を性的に虐待したいと思っている人が、子どもを買って性的に虐待する例も多くあります。

高木 そんな信じられない話、最初に知った時はショック! しかし今も許せない!

村田 私たちはこの問題の状況を調べて、どうしたら問題が早くなくなるのかを考え、カンボジアの農村の女性や子どものために、い草製品の工房を作って、そこから出稼ぎが出ないようサポートをしてきました。

高木 その工房には何人くらいいるの。

村田 15歳から40代の方まで、120人くらいが工房で働いて、コースターとかポーチなどの雑貨を作っています。

高木 そこは、どんな運営をしているの。

村田 カンボジア事務所には日本人の駐在スタッフがいて、他に35人ほどカンボジア人のスタッフもいて、直営店が4店舗、そこで雑貨を販売しています。

高木 じゃあ、運営としては、150人以上を養っていることになるね。

村田 いえ、まだ養っているというほどではありませんが、私たちの目的は、働いている女性たちが現金収入を得て、子どもを働きに出さないで済むようにすることですから、そこは実践できていると思います。

高木 そうか、そうか。それは素晴らしい。

 

買う人を捕まえて抑止力に。

高木 その他にはどんなことを?

村田 子どもを買う人を減らすために、警察のサポートもしています。子どもを買う人を手っ取り早く減らすには、買えば捕まる仕組みを作ることです。
カンボジアの警察の状況を調べてみると、警官が新しい法律を知らないし、こういった犯罪があるという認識がないので、それらしきものを見つけても取り締まりに行かないんです。例えば12歳くらいの子が外国人に無理やり連れていかれても、子どもが売春宿で殴られながら働かされても、警察の認識としては、その女の子も管理売春という違法なビジネスに加担している売春婦であると言う認識で、被害者の女の子を捕まえて牢屋に入れている状態でした。警察官が加害者を捕まえに行っても逃げられたり、裁判でも証拠品などを集めることができず有罪にできなかったり…。そこで、警察官の研修に予算をつけてサポートしました。

高木 警官の認識が変わって、子どもを買う人が罰せられれば、需要が減って供給も減らせるというわけだね。

村田 はい。それが抑止力になると考えています。

 

子どもを売ったら罰せられる成功例を。

高木 現在は、活動拠点をインドにも増やしたそうだけど?

村田 カンボジアでは、児童買春の需要と供給、両方が少なくなって、被害者の数が減ってきたと言われています。どの売春宿も子どもを雇っていると警察に摘発されるので、子どもを雇わなくなりました。海外から買いに来る人もかなりの確率で捕まるようになりました。カンボジアでの活動はカンボジア人主体でやっていける見通しが立てられるようになったので、私たちの活動は、問題が残るインドへ活動の拠点を広げています。

高木 インドではどういう活動を?

村田 抑止力を上げるには、加害者が処罰される仕組みが必要です。そこで、被害者を騙して売春宿に売った人を処罰するためのサポートを中心にやっています。というのも、裁判で有罪になる率が非常に低いのです。西ベンガル州の南24区で活動しているNGOによると、350件くらいの被害があった場合で有罪はたったの5件(1.3%)でした。

高木 どうして?

村田 いくつか理由がありますが、被害者の証言以外に証拠がない点が大きいです。女の子が裁判で証言するには、心の回復をして、自分が被害に遭ったことを話せないと始まらない。裁判で証言すると、被害に遭ったことが周りの村人にばれてしまい、差別にも遭います。それでもきちんと戦えるようにするには、その女の子が、村人との関係性を構築できるようなサポートも必要です。

高木 なるほど。支援の方法もケースバイケースになってくるね。工房とは違って一段と難しい活動になるね…。

村田 はい。インドで一番被害者が売られているのがムンバイで、被害者が多く出ているのが西ベンガル州です。出身地と売られている場所が離れているのですが、出身地である西ベンガル州で、抑止力を高めていくのが一番効果的だと考えています。まずは有罪判決を出すモデルケースを作って、その事例を横に広げていき、世の中を変えていく仕組みにしたいと思います。

高木 具体的にどのような活動ですか。

村田 被害に遭った人は、「同じ村に自分を売った人が住んでいる」「自分は白い目で見られているのに、加害者は平気で暮らしている」という状況に直面します。「加害者を罰したい」と思ってもやり方がわからない、書類を作れない、裁判所にも行けない。そこで裁判の仕組みを説明して、カウンセリングをして、一緒に闘ってくれる現地のNGOをサポートしています。

高木 なるほど。今いちばん足りないものは?

村田 それは資金です。資金がなくては、現地での活動が広がっていかないので、かものはしプロジェクトのWEBサイトを見てご支援ください。

高木 りょうかい!『地球村』も支援を続けるよ。


「緊急人道支援募金」に募金をいただければ、かものはしさんの支援にも使われます。これからもがんばりましょう。

■かものはしプロジェクト
http://www.kamonohashi-project.net/