2014年12月 NGO Asflora代表 佐藤卓司さん
ブラジル国パラ州ベレン市で2000年12月に発足したNGO Asflora(アスフローラ:アマゾン森林友の協会)の代表を務める佐藤さん。高木代表は、2011年のアマゾン視察の折りに、アスフローラの活動を知り、プロジェクト『地球村の森』をスタートさせました。久しぶりに帰国した佐藤さんに、アマゾンの状況を聞きました。
アグロフォレストリーを広めています
高木 はるばる地球の裏側からお越しいただきありがとうございます。日本は、何年ぶりですか?
佐藤 2年半ぶりです。学生時代の友人たちに会う予定です。44、45年ぶりになりますね。当時いくつかの大学の学生連盟で「日本学生海外移住連盟」を組織し、海外移住、海外研究、実習などを行っていました。当時は海外に出るのが難しかったのですが、私は学生の時に海外に行きたいと思っていて、1年大学を休学して、船でブラジルへ実習に行きました。その頃の友人に会って、あとは石巻の神社で植樹祭があるので、そちらにも参加します。
高木 それは楽しみですね。久しぶりの日本を十分楽しんでください。ところで、アスフローラの活動はいかがですか。
佐藤 この2年間は、東京農工大学のプロジェクト、JICA(ジャイカ)の草の根プロジェクトですが、零細農村にアグロフォレストリー(森林保全と農業を両立させること)を広める、その生産物を認証するプロジェクトを進めています。
高木 それはJICAメインの活動なんですか。
佐藤 いえ、東京農工大が応募してJICAに認められて、5年計画で始まりました。その最初の2年間、現場の仕事をアスフローラが請け負って、私が現地の責任者ということになり、3月までは客員教授にもなっていました。
モデル農場のプロジェクトを
高木 そうでしたか。その農工大のプロジェクトは、具体的にどのような内容ですか。
佐藤 現地に1ヘクタールくらいのモデル農場を3カ所作りました。農民と一緒に農場を作って、やり方を覚えてもらって、且つ、そこのみんなが広めていくには、苗木がいるので苗畑を作る。そういったことを農工大の方たちと一緒に行いました。あとは、アグロフォレストの普及と認証に時間をかけました。農業の仕方を学んでもらうために、最初から近隣の農民が参加して、練習を兼ねた実践的なモデル農場になっています。
高木 何人くらいの農民の方が関わっているのですか。
佐藤 サンタバルバラの農場は、20家族くらいが参加しています。ここはお金がないので、プロジェクトから日当を払っていました。イガラペアスの農場は9家族くらい、元々そこに住んでいる代々農民なので、やり方はわかっているし、みんな親戚・同族でまとまりもいいチームでしたね。農業に慣れていたので、こっちは日当を払っていません。イガラペアスは1年3カ月、サンタバルバラは2年間やりました。
高木 労働力にずっと日当を出していたら、足りなくなりますね。
佐藤 日当は最初の1年間だけ。2年目からはカカオ、トウモロコシ、マメ、短期作物が採れ始めたので、採れた作物を換金して、種を買ったり、豚の飼料になったりしました。
高木 なるほど。自立したモデル農場になっていければいいですね。
子どもたちに森の大切さを
高木 農工大との協働プロジェクト以外に、アスフローラの活動はどのようなものがありますか。
佐藤 子どもたちへの環境教育を続けています。今まで、木を植えてきましたけれど、植えるよりも、森を残すのが非常に難しいというのを痛感しているんです。
高木 それはどういうことですか。
佐藤 私は30年間、会社にいたわけです。永大ブラジル木材株式会社という子会社を作って、自然林を切って合板を作ってきたのですが、一方で土地を持って植林もしてきたわけです。しかし、会社をたたむときに、土地を取られてしまったり、不法侵入者に木を切られてしまったり。
高木 会社が撤退するときに、あなたが交渉して、とにかく所有地は管理します」と押さえられたらよかったのにね。
佐藤 最初、管財人には日本人が入ったんですよ。でもそれにはすごくお金がかかるし、裁判所がなかなか進めないわけですよ。結局、持ちきれなくなって、違う管財人になる。そのうち、裁判官が、管財人と組んでね。金にしようと売っちゃう。
高木 ひどい!海外での裁判は難しいですね。では、これからの夢を教えてもらえますか。
佐藤 森づくりは、これからも続けたいと思っています。今まで植えた森も、残らなかったものがいっぱいあります。周りの牧場の連中が火を放ってしまったり、不法侵入者が入ったり、そして植えた樹を切っちゃう…。勝手に入り込む人たちがいる国で、どうしたら森を残せるんだろうと考えたときに、ブラジルではバス代が上がればストをやるんですよ。他にもいろんなことでストが起きる。ところが、環境に関する問題で、ストが起きるとか抗議活動が起きた事例はないんです。森がなくすな、森を守ろうという動きはまったくない。
高木 つまり、人々の心や意識の問題ですね。
佐藤 そうなんです。森を守ろう、森は大切という世論が育つことが大事。子どものうちから、森に親しみ、森について考えることができていないから、そういう世論が起きないんじゃないかと思うのです。
高木 それが、アグロフォレストでもあるし、アスフローラが続けている環境問題の「森の劇団」ですね。
佐藤 そうです。子どもたちに、環境を考える気持ちを芽生えさせたいというのが、私の一番の夢です。子どもたちが大人になったときに、力を発揮すると思っています。きっといつかブラジルは、国を挙げて「この森を切らせないで」とかいうふうになってくれるんじゃないかと。それまで我々は、小さな活動を積み重ねていければと思っています。
高木 いいですね。子どもたちに伝えることは、一番効果的だと思います。だからこそ、『地球村』はアスフローラさんと共に、プロジェクト『地球村の森』を進めているのです。これからも協力してやっていきましょう。
佐藤 「地球村の森」は着々増えています。これからもどうぞよろしくお願いします。
■アスフローラのHP http://www.asflora.org/japan/