巻頭言

【巻頭言】赤サンゴ密漁

ここ数ヵ月、日本の領海内で中国漁船による「赤サンゴ」の密漁の話題が続いている。
 なぜこんな事件が起こり、なぜ日本の警察や海上保安庁が動かないのか、と疑問に感じているだろうから、この問題を説明します。

 

★なぜ、こんな問題が

 中国人はもともと赤色が好きで国旗も赤、赤色の宝石も人気だったが、中国政府が赤サンゴの絶滅を防ぐために、中国の領海内でのサンゴの漁を禁止したこと。それによって価格が10倍以上になった。
 もう一つは、中国はニューリッチという呼ばれる新興の富裕層が増えた。彼らは団体で日本に来て大量の買い物をしていることでも知られている。
 現在、中国は経済成長も大きいがインフレも大きい。お金は持っているだけだと目減りするから、価値のあるものを買った方がいい。価値のあるものと言えば「金」だが、「金」は世界相場があり、それほど大きな変動はない。だから「金」は、売る方も「大儲け」はできないが、「赤サンゴ」はここ数年で「10倍以上」値上がりしているから、買う側も今後も値上がりが期待できるし、売る方は、「元値」はタダだから「大儲け」できる。

 

★赤サンゴの価格

 赤サンゴの取引価格は、以前は「キロ6万円」だったが、いまは「キロ100万円以上」。さらに加工したものは現在は「グラム20万円」にも高騰しているのだ。これは日本の価格の3倍だから、日本で買って中国で売るだけでも儲かるから、今後、日本国内の赤サンゴも大挙して買いに来ることも予想される。

 

★日本と中国の罰則の違い

 日本でも中国でも赤サンゴの漁は禁止だが、罰則は中国では懲役刑だが、日本では罰金(1000万円以下)。

 ところが現状は「1回の密漁で約1億円稼げる」らしいから、「捕まっても儲けの方が大きい」状況だから、日本の領海内で密漁を始めたのだ。

 小笠原諸島、伊豆諸島まで2000 kmの距離があるが、リスクよりメリットの方がはるかに大きいのだ。

 

★経緯と現状

 初めは中国船の密漁は小規模だったが、日本が動かない状況を見て、今では200隻以上の大船団でやってくる。普通は密漁船は国籍、船名を隠すが、いまでは船名も隠さないし、中国の国旗を掲げたまま密漁を続けている。最近はメディアの取材の飛行機が飛んでも平気で網を投げたり引き上げたりしているし、手を振っている姿まで映っている。先日、大型台風が接近した時も一時的に領海を出て退避していたが、台風が去るとまた戻ってきた。この情けない現状を生み出した日本、動かない日本にも大きな責任がある。

 

★日本政府

 日本が動かない理由の一つは、日本の警察も海上保安庁も力不足で、実際に出かけて行って追い散らすことはできても、200隻もの密漁船を捕まえるだけの力が無い。追い散らしても、すぐに戻ってくるし、罰金刑にしても先ほど説明した事情もあり、イタチごっこになる。政府としても、中国との関係修復に動いている時なので事を荒立てたくない。

 

★どうすればいいか

 小笠原諸島、伊豆諸島は、尖閣諸島のように領土問題でグレーではなく、200%日本の領海であり、そこで密漁しているのだから、海上巡視艇を出し、警告する、追い払う、従わない場合には逮捕、連行すればいい。
 罰金刑だけではなく、領海侵犯として特別に扱う。警察力で足りなければ、海上自衛隊を出動させる。違法なことに対して、断固たる態度をとるのは当然のことである。