【地球は今...】共生社会をめざして② ~太平洋の小さな島の挑戦~
The Economist(英新聞)が先進国26 ヵ国を対象に行った女性が働きやすい国ランキングで、残念ながら日本はワースト2 位となった。
1 位のニュージーランドは、他の上位国が導入するクォータ制を導入せずに、1893年、世界初の女性参政権を実現させている。
さらに、世界で初めて政治のトップ3(首相・総督・最高裁判所長官)を女性が占めた歴史も持つ。
今回は、そんなニュージーランドの秘密(政策と考え方)に迫ってみたい。
★ニュージーランド(公用語:英語・マオリ語)★
マオリ語でアオテアロア(意味:白く長い雲のたなびく地)
人口410 万人:ヨーロッパ系67.6%・マオリ系14.6%・アジア系9.2%・太平洋系6.9:民族多様な社会を形成。
・国会議員の女性比 34%(日本:7.9%)
・管理職の女性比 40%(日本:9%)
・専門技術職の女性比 54%(日本:46%)
★男女平等に向けた取り組み★(多くの取り組みがあるが、主となる政策を紹介する)
1972 年 同一賃金法(同一価値労働に従事する男女に対して同一賃金支払いを義務付け)
1977 年 人権委員会法(1993 年より人権法となる。性差別を含む幅広い形態の差別を禁止)
1984 年 女性政策省設立
1987 年 産前産後休業制度導入
2002 年 有給育児休業制度導入
★女性政策省の役割
働く女性が直面する問題に積極的に取り組む(女性の地位向上に関する政策について、政
府への助言、ジェンダー分析、政府系機関の理事会に適任の女性を推薦等)。
重点項目
●低所得の女性を特別に支援
●経済的機会と選択肢の改善
●育児の役割と有給の仕事の両立
●性と生殖に関する健康の向上
●家庭内暴力および性暴力からの安全向上
*次のような教育政策および子育て支援策は女性政策省があることで実現している。
★NZの幼稚園と保育園の在り方★
◆1980年代半ばから、教育省が一括で幼稚園と保育園を管轄(日本:文科省と厚労省)
◆親の就業状況に関わらず、子育て施設を親が自由に選択できる。
例:幼稚園2日+保育園3日/週など組み合わせても使える
⇒ ライフスタイルや子どもの発達状況に合わせた保育・教育が可能
◆一定時間までの就学前教育を無償化(日本:特例を除き有償)
例:3~4歳対象・週20時間まで無料
☆就学前教育指針:テファリキ(Te Whariki:マオリ語で縦横に編むという意味)
◆教育省が定めた統一カリキュラム・テファリキに基づき4原則と5つの要素を絡み合わせ子どもを主体的に育てる教育を実践
4原則 ◎子ども自身が力を付ける (Empowerment)
◎全人的成長 (Holistic development)
◎家族と地域の中で育つ (Family & Community)
◎さまざまな関係をつなげる学習 (Relationship)
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5要素
◎子どもの健康と幸福 (Well-being)
◎子どもの学びと貢献 (Contribution)
◎体験による探求 (Exploration)
◎所属感 (Belongings)
◎対話力・発言力 (Communication)
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ニュージーランドでは、日本的な一斉教育(先生が前に立ち、子どもを並ばせて指導)ではなく、テファリキの考え方をベースに、子どもの個性を育む指導がおこなわれている。
教師も親も褒め上手で、子どものいいところを伸ばす教育を実践している。
★保育を支える出産・育児・健康サポート★
妊娠すると担当助産師が決まり、出産後数週間までの検診・サポートを受け持つ。
その後、定期検診や予防接種、24時間無料電話相談などを、子育て支援組織(プランケット:政府の交付金・民間の助成金・寄付金で運営される全国的な非営利組織)が一括して行う。
★ノルウェーに次ぎ、1989年に子どもの権利を保護する「子どもオンブズマン」を設置★
「子どもオンブズマン」は独立した人権機関で、子どもの権利が実現されているかどうか、行政を監視する。
子どもの権利条約(18歳未満のすべての人の保護と基本的人権尊重の促進するために、1989年に国連総会で一斉採択された)に基づく。
日本は、1994年に子どもの権利条約を批准したが、子どもオンブズマンは設置していない。 それどころか、国連の「子どもの権利条約委員会」から「子どもの意見に対する配慮を著しく欠いている」と改善勧告を受けている。 女性が働きにくい国・日本では、子どもの権利も尊重されていなかった。 日本の子どもの相対的貧困率は先進20カ国中上から4番目(2010年:ユニセフ)と、他国と比べ、国の貧困削減効果は極めて小さい。 さらに、子どもに対する虐待のニュースも多く報じられている。 子どもに対する給付制度を的確に充実させ、貧困の連鎖を止めるためには、国家のために子どもを増やす政策ではなく、子どもの立場・視点に立った施策の推進が求められる。 みんなが幸せだと思える社会を実現するためにも、女性政策省や子どもオンブズマンの設置は必然である。 |