スペシャル対談

2015年1月 デザイナー ドアーズ代表  財津 昌樹さん

デザインスタジオ「ドアーズ」代表、財津昌樹さんは、社会問題をテーマにしたデザインも数多く手がけておられます。1992年から毎年制作している環境カレンダー、2007年までの環境カレンダーをまとめた「1% あなたはその中にいますか」を出版。その活動のベースには、『地球村』の考え方が生かされていると言います。

 

環境カレンダーから環境問題へ

高木 こんにちは。初めてスタジオを訪問しました。毎年、環境カレンダーを楽しみにしています。ではまず、最初の出会いはいつ頃でしたか。
財津 出会いは91年くらいです。親しい方に誘われて、高木先生の講演を聴いたんです。ちょうどその頃、環境をテーマとしたカレンダーを12人の仲間と作ろうとしてスタートした時でした。
高木 そんな昔から環境カレンダーを?
財津 そうですね、24年になります。
高木 そうでしたか。で、講演はいかがでしたか。
財津 衝撃的でした。特に「非対立」、これは僕になかったことです。僕はむしろ、「怒り」をベースにしていました。一番、気をつけなくちゃいけない部分だということがよくわかりました。
高木 ありがとう。ところで、カレンダーを作るくらい環境に関心を持っておられたわけですが、そのきっかけは?

財津 デザイン事務所を立ちあげて、人が欲しくて、教えを受けていた先生のところに相談に行ったんです。その時、真っ白なカレンダーを作って持参したのですね。すると「君はカレンダーも作るのか。今、ちょうど12人のカレンダー展をやろうとしているところだ」ということで、メンバーに誘っていただきました。僕が参加した年から、「何かテーマを決めよう」ということになって、その年のテーマは「地球は友達」。そこから、12人の環境カレンダー展がスタートしました。他のメンバーのカレンダーは、昔懐かしい風景や生き物などが中心でしたが、僕は「環境の何が問題なのか」に着目して、メッセージをストレートに届けるカレンダーに取り組んでいきました。
 
 
 
MMの思考が凝りを取る
高木 なるほど。もともと環境に関心があったというよりも、環境カレンダーを作ることがきっかけなんですね。
財津 そうです。デザイナーというのはどんな役割ができるかというと、「メッセージを伝える、広める、叶える」だと思うんです。そんな時に、高木さんに出会って、伝えるメッセージの形も変わってきました。
高木 「非対立」を参考にしたメッセージに変わってきたということですね。
財津 そうなんですが、それはなかなか難しかったですね。「非対立」を自分の中にちゃんと取り入れるのは難しい...。
高木 財津さんは相当やんちゃな方だったのでは? 私も元は「非対立」どころか、戦いのプロでしたから(笑)。
財津 えー、そうなんですか!
高木 昔は学生運動の闘士でしたし、指揮者としても戦いでした。ですが、交通事故で「非対立」が腹に落ちたんです。そこから、「戦うのをやめて、心の中の怒りを手放しなさい。怒りを外さないと平和はありえません」と、伝道するようになったのですよ。(笑)
財津 今、友達に国粋主義者がいて、愛国心に凝り固まっているんですよ。その彼と口論するのが大好きでしてね。なかなか説き伏せることができなくて自分の未熟さを感じますが、「非対立」を頭に浮かべながら、その彼と話すのですが、これが本当に難しい...。
高木 私の小冊子「すてきな対話法MM」というのをご存知ですか。そこには誰と話しても負けない対話法が書いてあります。どんな話も受け止めながら聴く。「なるほどね。ではこれはどういうこと?」といって素朴な疑問を投げかけていく。決して相手を攻撃したり、やっつけてはダメなんです。
財津 うーん。高木さんの本は一通り読んでいるし、今の話も僕の頭に入っているつもりだったけれど入ってなかったですね。また、彼と話してみます。
高木 きっといい流れになりますよ。
財津 改めて、本も読み直します。
高木 MMは「みんなで学ぶ」「みんなと学ぶ」という意味の頭文字です。交通事故の入院生活の中で発見した方法で、自分の中で凝り固まっていた考え方がドンドン取れるんです。財津さんも、その方も、肩凝りがきっと取れますよ。
 
自分の頭で考えること
 

高木 『地球村』の考え方で、他に何か参考にしていることはありますか。
財津 カレンダーを作る時に、一番気をつけているのは、自分の考え方が独りよがりにならないように、人の意見を聞くということです。原案ができると、うちの30人のスタッフに見せます。『地球村』の事務局にも送って意見を聴かせてもらっていますが、とても参考になります。うちのスタッフには高評価だった作品が、『地球村』事務局のスタッフにはブーイングだったこともあって、その作品はすぐに捨てましたが、『地球村』スタッフの評価というのは、一つの大きなフィルターになっています。
高木 そうでしたか。『地球村』の考え方が生かされているのですね。
財津 このカレンダーも、他のデザインにも、『地球村』の影響はあります。特にカレンダーはライフワークとして取り組んでいます。
高木 それはうれしい。では最後に、これからの活動や夢について聞かせてください。
財津 環境も原発も選挙も、なかなかいい結果を出せない。日々、力の無さに苛々しています。気持ちを奮い立たせるにはどうしたらいいか、無関心な人に伝えるにはどうしたらいいかと悩んでいます。
高木 本当に伝えるには、みんなに自分の頭で考えてもらうことですよ。
財津 なるほど。現状を知って、どうすればいいか、あなたの頭で考えてみたら、というアプローチですね。やっぱりそこですね。この延長線上の未来を考えてもらうこと。その線でやってみます。
高木 これからも、すてきな発信をどうぞよろしくお願いします。

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