【地球は今…】5分でわかるリニア新幹線の問題点
2014年10月に政府は、リニア新幹線の着工計画を認可した。総事業費9兆円の史上最大のプロジェクトには、多くの問題が残されている。今回はリニア新幹線の問題点についてまとめた。
(事務局 渡辺裕文)
●夢の超特急リニア新幹線
・最高時速500キロのリニア新幹線が完成すれば、所要時間は
東京-名古屋 最速40分(現在の新幹線は 90分)
東京-大阪 67分( 〃 145分)
と半分以下に短縮が見込まれている。
●リニア新幹線は、なぜ高速で移動できるの?
・新幹線のように線路の上を走るのではない。
強力な超電導磁石の反発力を使って、列車を地上から10センチほど浮き上がらせる。さらに「ガイドウェイ」という電気が流れ磁界が発生している壁と車両の外側に取りつけた強力な「超電導磁石」とが反発したり、引き合ったりすることで、前へ進むため、摩擦がなく高速で移動できる。
●建設費はどのくらい?完成はいつ?
・品川-名古屋間:2027年開通予定 工費は5兆5235億円
・名古屋-大阪間:2045年開通予定 工費は3兆6000億円 総計9兆円
※建設予定費は、20年間で3倍に。(1980年頃には3兆円と説明)
●リニア新幹線の問題点
リニア新幹線建設には多くの問題点が指摘されている。主なポイントは6つ。
1、総額9兆円の建設費の問題
「リニアだけでは絶対にペイしない。新幹線の収入で建設費を賄って何とかやっていける」(JR東海社長 2014年9月18日の記者会見)
事故の場合など、税金が投入される可能性が高い
・国鉄がJRになる時に、国鉄の借金(24兆円)を税金で負担。 ・福島第一原発事故の処理のために、税金が3兆円以上投入され、さらに東京電力に9兆円貸し付けられるが、返済の目処はない。 ⇒ しわ寄せは、国民の税金で |
2、難工事の問題
・リニア新幹線は、土地の買収の問題をなくすため、地権者への補償が不要となる地下40メートル以下の「大深度」を利用して建設される。
このため、品川―名古屋間は全体の86%がトンネルを走行することになり、これまでにない大工事となる。(名古屋以西はルートが未確定)
・車両が通るトンネル以外に、非常口(4~8キロおき)へのトンネル、土砂を運び出すための工事用のトンネルが必要。トンネル工事で出る大量の土砂は、まだ処分先が確定していない。(5,680万㎥、東京ドーム45杯分)
・事前の活断層調査は行われておらず、掘り進めてみないとわからない。
⇒ さらに費用や工期が増える可能性も
3、地下水の問題
・トンネルにより、地下水脈が遮断されるなど、地下の水の流れが変わり、水資源への影響が出ることが予測されている。
例えば、大井川の水の量が1秒間に12トンから10トンに減る(年間で6300万トンの流量の減少)と推測されている。
⇒ 植物の生息域など、生態系への影響が心配されている。
4、消費電力の問題
・東京-大阪間が開通した場合の平均消費電力は約74万KW。これは原発およそ1基分の電力にあたり、新幹線の3倍の電力を消費する。これ以外に、駅などでの電力消費や送電ロスを考えるとさらに多くの電力が必要。
5、大事故の可能性
・時速500キロで走行している場合、大事故が想定される。
・大部分がトンネルの中を走行するため、一旦事故が起きた場合には、救助者が事故現場へつくのに時間がかかる。避難口まで何キロも離れており、暗い中を歩いて避難という可能性もある。
・リニア新幹線には、乗客が1,000名に対し、乗務員は3名(自動運転で運転士は乗車していない)と発表されている。3人で1,000名の避難誘導が行えるだろうか。
6、電磁波の問題
・電磁力で走行するリニア新幹線は、乗車している間、電磁波の中にさらされることになる。
・強い電磁波を受け続けると、行動異常や奇形などの増加が報告されている。微弱な電磁波でも、細胞に影響を与えるという論文が発表されているが、長時間の人体への影響は、まだ調べられていない。
大深度にあるリニア駅へ移動するために20分。発駅と着駅を合わせて合計40分ほど必要で、時間的なメリットはあまりないともいわれている。
多くの問題を抱えているリニア新幹線、本当に必要?