スペシャル対談

2015年4月 NPO法人D×P共同代表 今井紀明さん

18歳で、イラクの過激派勢力によって人質にされた経験をもつ今井さんは、立命館アジア太平洋大学を卒業後、大阪の専門商社に入社。2012年春に退社し、NPO法人D×P(ディーピー)を設立。現在は「ひとりひとりの若者が自 分の未来に希望が持てる社会」を創るために、全国を飛び回っています。

 

戦争は絶対間違っている!

高木 こんにちは!会うのは2回目だね! 2004年、イラク人質事件の時には、「さっぽろ『地球村』(現hanna)の仲間が拘束された!」ということで、『地球村』でも「人質救出のため自衛隊のイラク派兵を中止せよ」という活動をやったよ。当時の話からしてもらえるかな。そもそも君はどんな少年だったの。
今井 『地球村』のことは、15、6歳の時に本を読んで知り、17歳の時にさっぽろ『地球村』に行きました。
高木 講演も聴いてくれた?
今井 高校生の時に1回聴きました。
高木 高校生で私の講演に関心があったのかあ。ちょっと変わった少年だったね。
今井  環境のことにも興味があって、生ごみを土に還したりしてました。2001年、高校1年の時、911があって、紛争や戦争の問題を考え始めました。ベトナムのスタディツアーにも行って、孤児院でエイズの子どもたちとも会いました。
高木 それはいくつの時?
今井 高校2年の夏休みです。
高木 やっぱり、かなり変わっているね。それから?

今井 2003年にイラク戦争があって、劣化ウラン弾が使われていることを知って、「この戦争は絶対におかしい!」と、自分でNGOを作りました。劣化ウラン弾の危険性を訴えるために、大人も巻き込んでいこうと、学校にもあまり行かずに、弁護士や議員に会いに行って、そんな中、千歳でイラクのストリートチルドレンの医療支援を行っていた高遠さんとつながりました。それで2004年に、イラクに一緒に連れていってもらうことにしたんです。
高木 すごい!高校生で、そこまでやるなんて!
 
 
 

事件後、対人恐怖症に。

高木 そこで、いよいよ拘束事件だね。当時の模様を、話せる範囲で話してくれる?
今井 高遠さんとフォトジャーナリストの郡山さんと3人でタクシーでファルージャを通りかかったとき、ロケットランチャーを担いだ人が出てきて、マシンガンを持った兵士が20人くらい出てきて捕まりました。アジトに連れていかれて、尋問を受けた。アメリカのスパイだと思われて捕まったんです。
高木 人質生活は何日間? どんな暮らし?
今井 9日間。目隠しされて、銃口を当てられて。命の危険は何回か感じました。3日目に目隠しされて移動。周囲ぐるり360度、全部砂漠の場所に連れていかれて。そこからは尋問もなく、ただ閉じ込められているだけでした。
高木 食事は?
今井 あまりよく覚えていないんだけど、3日目からは3食でしたね。最後の日に、また目隠しされて移動して、モスクで解放されました。
高木 日本に帰ってきたのは?
今井 その3日後。帰国後、東京に一泊して、実家に帰ることになって、2週間後に郡山さんと2人で記者会見をしました。
高木 当時の日本の騒ぎは理解できた?
今井 僕らが大きな話題になったのはわかりました。たくさんの報道陣やカメラに追いかけられたり、現実感は無かった。歩いているだけで殴られることもあった。応援されることもあったけれど、応援も拒絶して、家の中でカーテンを閉めて暗くして暮らしていました。対人恐怖症は、4年間くらい続きました。
 
 

未来に希望が持てる社会を。

高木 大変だったね。じゃ、話題を変えて、今の活動について。どんな内容のNPOなの?
今井 通信制高校の子に授業等で関わり、自律のためのサポートをしています。通信制高校は、昔は勤労学生だったのですが、今は高校中退者が7割、卒業するときに半分がニートになります。僕もあんな経験をして、「この社会は一度挫折してしまうとなかなか立ち直れない」ということを痛感したので、始めたのです。
高木 君の場合は、かなり違うよ。エネルギーがありすぎて、大きなチャレンジをした結果、大変な経験をしたんだから。
今井 20歳以上で働いていない子の支援は、国でもけっこうしているけれど、家から出られない20歳以上の子はすくい上げれない。でも、通信制高校に関わればその手間で高校に所属しているので、関わることができる。そういう仕組みがなかったので、それなら僕たちがやろうと。
高木 それは、前例がある方法なの。
今井 いえ、新しい取り組みです。通信制高校といっても、(学校によるが)週に1回とか、月に1回とか、登校しての授業があるので、その中の授業を我々が担当させてもらっています。
高木 授業は、どのくらいの頻度でもらっている の?
今井 年に1回だけ授業をしているNPOは他にもあります。うちは、半年とかまとめてもらっています。

高木 それはすごいね。新しい仕組みを、どうやって作っていったの。
今井 まず、ECCで授業の実績を作りました。今年で3年目、10の学校で500人くらいに教えています。
高木 それはすごい。授業の内容はどんなものなの。
今井 総合学習の時間をもらって、多くの大学生や社会人ボランティアに継続的にきてもらい、失敗体験や挫折体験を語る授業をしています。
高木 授業をしているスタッフは何人くらい?
今井 授業に出ているボランティアスタッフは100人弱ほど登録でいらっしゃいます。結果として、進路未決定の子が半減して、進学就職する子が増えてきています。
高木 それはすごいね! これからの夢は。
今井 たっくさんあるんですけど! ゴールとしては、未来に希望が持てる仕組みを作って、全国にも広げて、それから韓国や中国でも同じ問題が起きているので、そちらでもボーダーなく広げていくことになるかもしれない。いずれ、世界中に、希望が持てる社会を創っていくことが夢です。プライベートな夢は、探検家。サハラ砂漠にも行きたい、マラソンもしたい、チャレンジしていきたい。
高木 それはいいね。夢も明快。応援していくね。

 

■NPO法人D×P http://www.dreampossibility.com
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