巻頭言

【巻頭言】川崎の事件に思う

先月、大きな話題になった川崎市の中学生殺人事件。
事件の全容は報道で知っている方が多いだろう。

★上村君(13歳)
 両親の離婚をきっかけに小6で島根県から母親の実家に引っ越し。
 中1でバスケット部に入部。いつも笑顔でみんなの人気者だった。
 夏から年上の不良グループ(3人)と付き合うようになり、1月から不登校。2月20日に殺害される。
 この間、上村くんは激しい暴力を受けていて、級友や友人はその状況を知っていたが、担任も親もほとんど何も知らなかった。
 
★犯人グループ
 少年A、B、Cは共に学校に行っていなかった。
 主犯の少年Aは暴力的で、少年院送りになったこともある。
 殺害の理由は、上村くんのアザや傷を見て事態を知った友人たちが少年Aの家に行き抗議をしたこと。上村くんは「絶対に言わないで」と口止めしていたくらいなのに、少年Aは、「チクった、言いふらした」と逆恨みしたこと。上村くんを裸にして真冬の川で泳がせたり、大型カッターで切り付けたり、首の深い傷が致命傷。

★最近こうした事件が多発
 ここ数ヶ月に似た事件が2件あった。
 和歌山では、22歳の引きこもり男性が小学5年生を刺殺。
 名古屋では、名古屋大学の女子学生が、自宅を訪問した女性を斧で斬殺。
 この傾向は、テレビなどで「イスラム国」などのテロや、公開処刑などの影響が考えられる。今後も模倣犯、模倣事件が増える可能性がある。

●犯罪を防ぐには
 加害者は社会的に孤立している場合が多い。
 最近の資料(内閣府)によると、引きこもりは69.6万人、その予備軍は155万人とある。孤立と引きこもりは同じではないが、共に加害者にも被害者にもなりやすい。
 現状の格差社会では、はじき出された人間には不安と怒りがある。
 少年A、B、Cはそういうグループだった。その怒りは激しい暴力として弱者に向けられる。上村くんは、その犠牲者だった。
 格差社会を改めていくと同時に、加害者にも被害者にも手を差し伸べることが必要だ。

★最大のポイントはコミュニケーション
・夫婦の会話、親子の会話、教師との対話。
・友人をたくさん持つ。
・しかし少数の濃厚な関係は危険。
 (ネット社会、LINEつながりは危険)
・おかしいと思えば口に出す、SOSを発信する。

★本気で向き合う
 多くの場合、周りの大人(親、教師、隣人)が未熟だった。
 大人は傍観者であってはならない。
 我が家が、たとえ貧しくとも、たとえ片親であろうと、たとえ子供の学費が払えなくとも、親はわが子に向き合うこと。
 勇気を持って事実を話し、自分の本音を話すこと。
 「申し訳ないが、学費が払えない。申し訳ないが、十分な小遣いが渡せない。しかし、お父さん(お母さん)もがんばる。だから、お前もがんばってくれ。あと1年でこの状態を抜け出る。約束する。だから、我慢してくれ。一緒にがんばろう!」
 子供は、親が本音で話してくれたことは絶対に理解する!
 そのことは一生忘れない!
 いまからでも遅くはない!大人は逃げてはならない!