地球は今

【地球は今…】動物と戦争

戦争によって犠牲になるのは人間だけではありません。
戦争は、動物にも植物にも大きな被害、悪影響を与えます。
今回は戦争による動物の被害についてまとめました。

(事務局 渡辺)

●兵器として使われた動物たち


・古くから馬、象、ラクダなどが、騎馬隊の乗り物や武器輸送に使われてきた。
 通信手段として伝書鳩も古くから使われていた。
・毒ガスの検知用として、カナリアなど多くの鳥が犠牲となった。
・第2次大戦以降、動物が兵器として使われはじめた。
 例えば、ソ連軍は犬に爆弾を付け、戦車の破壊をするよう訓練した(戦車爆破犬)。
 米軍はイルカに爆薬や核弾頭を運ばせ、敵艦や港の破壊も考えている。
 すでに、地雷探知用に犬を、海の機雷探知用にイルカを利用している。

●動物への攻撃や置き去りに

・銃撃戦の中、犬や猫、牛などの家畜が家や牧場で置き去りに。
・兵士が銃の訓練や遊びで、野生生物に発砲することも。
・空襲時に逃げ出さないように、動物園の動物たちも殺された。
・日本でも戦時中は多くの動物たちが銃殺、毒殺された。

●紛争の巻き添えで動物たちは

[ベトナム戦争]
米軍によって散布された枯れ葉剤、ナパーム弾などで南ベトナムの森林地帯は壊滅。
熱帯雨林は消滅し、スイギュウ、トラ、シカなどの野生動物が激減した。
コブウシ、ブタ、アヒルなどの家畜も枯れ葉剤の影響で病気になった。

[湾岸戦争]
米軍が原油貯蔵タンクを攻撃、16億リットルの原油が流出し、海面を覆い、数万の渡り鳥と数知れない海洋生物の命が奪われた。
その映像は世界に衝撃を与えた。
地上でもラクダ、牛、馬などが、泉や草地が油に覆われたため餓死したり、火炎により黒焦げになって打ち捨てられた。
米軍が使用した劣化ウラン弾や化学兵器で双方に多くの被害をもたらした。
その影響はいまも空気、食物や水を通して被害が広がっている。

[ネバダの核実験場]
200回以上の地上核実験、800回以上の地下核実験が行われた米国のネバダ核実験場は、190種を超える水鳥や42種のウサギを含む哺乳類などが生息する豊かな生態系があった。
放射能にさらされ続けた大地は、不毛な砂漠になった。

※戦争による死傷者数や被害額の報告はあるが、動物や自然生態系についての被害報告は、ほとんどない。

●さらに動物実験の材料として

・化学兵器、細菌兵器、爆薬兵器などの効果を調べるために、多くの動物が実験に使われている。
※軍による動物実験は、最高機密にあたるため、公表されない。
 医療など全ての動物実験に使われる動物は、年間1億匹以上。

●米軍の通常兵器でも、大規模破壊を引き起こす

・地中貫通爆弾(バンカーバスター)
 地下で爆発し、放射性物質(劣化ウラン)200Kgを撒き散らす。
・燃料気化爆弾
 数百Kgの燃料を広範囲に散布し、燃料の蒸気雲を爆破。
 衝撃波と高温の爆風で、数百m範囲を破壊する。
・MOAB(大規模爆風兵器)
 通常兵器としては最大の破壊力を持つ10トン爆弾。
 GPSで標的を捉えることができ、強烈な爆風(衝撃波)で標的の周囲数百mを破壊。
 爆薬に含まれるアルミニウムが肺疾患、神経疾患を引き起こす。
・DIME(高密度不活性金属爆薬)
 爆発して半径4mほどの範囲に無数の高熱の小さな金属片を撒き散らし、破壊し尽くす。
 金属が体内に入るとガンを引き起こす。
※世界規模の戦争が起きるとこれらの通常兵器だけでなく、核兵器、科学兵器、細菌兵器も使用され、地球上の多くの生命が奪われることになる。

●これからさらに被害が

米軍は、第2次対戦後に太平洋や大西洋の約30地点に、数十万トンの化学兵器や放射性廃棄物を海洋投棄した。
爆弾の腐食が進み、枯れ葉剤などの科学物質や放射性物質が海水に流れ出す可能性が高い。
ソ連軍も原子力潜水艦を廃棄処分のため、日本海に海洋投棄した。
このように廃棄された科学兵器や放射性廃棄物による影響は、その後全く調べられていない。

●戦争は最大の環境破壊


戦争は最大の環境破壊である。
戦争を起こし、生態系を壊してしまうと、人類が生き残ったとしても、生き続けることはできない。
戦争につながる政策を行うことは、地球を破壊する行為につながっている。
私たちが戦争に対して、「ノー」の意思表示をし続けることが大切である。

[参考図書]
「動物と戦争」(訳:井上太一、出版:新評論)